Intellectual Property / International Practice

海外メーカーのブランドを日本の代理店が商標登録していたら――取消し・移転と販売の継続

代理店名義の登録を争えることと、自社や新しい代理店がそのブランドを日本で使い続けられることは、別に確認する必要があります。取消しの条件と期限を確認し、登録をなくす方法と移転を受ける方法を検討するとともに、その間の輸入・販売を誰がどの根拠で行うかを決めます。

監修:吉川 景司(弁護士・弁理士/第一東京弁護士会)

最終更新日:
目次
  1. 1 日本の登録と、出願当時の関係の確認
  2. 2 代理店による登録を争えるか
  3. 3 現在と代理店変更後の販売・輸入の確認
  4. 4 移転・利用合意と代理店の移行の連動

1 日本の登録と、出願当時の関係の確認

まず、日本の登録情報と、相手が出願した当時の取引関係を確認します。

特定するのは、外国で商標に関する権利を持つ会社、日本で出願した会社と現在の権利者、そして販売契約の当事者です。この三つが同じとは限りません。海外の親会社が権利を持ち、契約の当事者は別の販売子会社ということもあります。

次に、出願日、設定登録の日、取引関係が始まった日と終わった日を、一つの時系列に並べます。相手との関係は、出願時だけでなく、その前一年以内についても確認します。

対象も確かめます。相手の登録は、どの商品・役務を指定しているか。外国の権利は、どの商標について、どの商品・役務に及ぶか。取引していた商品と、登録の範囲がずれていることがあります。

そのうえで、不足している資料を洗い出します。外国の権利の登録証、当時の取引資料、登録について指示や承諾をしたことをうかがわせるやり取りです。

契約の当事者や適用される法の確認については、国際法務もご参照ください。

2 代理店による登録を争えるか

取消審決が確定すると、取り消された範囲で相手の商標権が消滅し、その権利に基づく今後の差止めの根拠がなくなります。ただし、日本の商標権が自社に移るわけではなく、他の登録や契約上の制限は別に確認します。自社名義で日本の商標権を確保する方法は、別途検討します。

外国で商標に関する権利を持つ者は、その代理人や代表者が正当な理由なく無断で登録した場合に、登録の取消しを求められます。使える条件は次のとおりです。

この取消しを使える条件

確認する事項満たす必要があること
外国の権利条約の関係国で、商標権に相当する権利を持っていること。外国で使っていたという事実だけでは足りない
相手との関係と時期出願の時点で代理人・代表者であった者、または出願の日前一年以内にその関係にあった者による出願であること
商標と対象外国の権利に係る商標と同一または類似の商標であり、対象の商品・役務も同一または類似であること
承諾と正当な理由権利者の承諾がなく、出願について正当な理由もないこと
請求できる期間日本の商標権の設定登録の日から五年を経過した後は、請求できない

資料を、この条件に当てはめます。契約書の名称や、代理店契約があるかどうかだけでは決まりません。相手が実際にどのような販売関係に組み込まれていたか、取引上どの程度の信頼関係があったかも見ます。承諾についても、登録を認めたと読めるやり取りがあるか、それは誰の名義で権利を取得することを認めたものかを区別します。メーカー名義での出願を依頼したのか、代理店自身の名義で取得することまで認めたのかは、別の話です。

この取消しの期限を過ぎていても、別の理由で登録を争える場合があります。例えば、当時外国で広く知られていた同一または類似の商標を、不正な目的で使うために登録した場合です。ここでは、相手の出願の当時に外国でどう認知されていたかを示す販売・広告の資料と、登録をめぐる交渉の経緯を照らし合わせます。

不使用を理由とする取消しでは、対象の商品・役務について、権利者や許諾を受けた者による登録商標の国内使用が継続して三年以上ないか、旧代理店の使用時期・内容・証拠も含めて確認します。

登録を争う検討と並行し、移転を受けることや、使用条件の合意も検討します。

3 現在と代理店変更後の販売・輸入の確認

販売を続けられるかは、現在と代理店変更後の販売経路ごとに、商標を使う根拠を確かめて判断します。誰が輸入し、誰が販売するのか。どの商品に、どの表示を付けるのか。予定している行為を、経路ごとに特定します。

先使用を根拠にする場合は、不正競争の目的なく相手の出願前から日本で使用し、その出願時に自社の業務に係る商品を示すものとして広く知られていたかを確認します。代理店を通じた販売については、商品や広告の表示、取引の仕組みから、メーカーの使用と評価できるか、誰の商品として認識されていたかを検討します。国内での販売実績だけで、メーカーの先使用権が認められるとは限りません。メーカーに先使用権が認められる場合、新しい代理店によるメーカー商品の輸入・販売が、その権利の範囲に含まれることがあります。切替えの前後で、商品、表示、販売方法を比較して確認します。代理店の変更を、そのまま業務の承継として扱うことはできません。

既存の許諾も確かめます。誰が、誰の、どの行為を許しているのかを見ます。メーカーから旧代理店への使用許諾があるだけでは、旧代理店名義の日本の商標権について、メーカーや新しい代理店の使用まで許されているとはいえません。契約が終了した後や、代理店を変更した後にも及ぶのかも、条項に即して確認します。

税関から輸入貨物に関する通知が届いたら、通知の種類と期限を確認します。争う場合は、各期限に応じて申出や意見・証拠の提出を行います。取消審判を請求したというだけで、その貨物の輸入が認められるわけではありません。

確認できた根拠で支えられる取引と、追加の合意などが必要な取引を分けます。後者については、当面の出荷と、代理店の切替えの時期を併せて検討します。

4 移転・利用合意と代理店の移行の連動

商標権の移転を目指す場合は、契約上請求できる内容と、新たな合意が必要な内容を整理します。販売契約に、契約終了時の商標の取扱いや、メーカーへの移転を定めた条項があるかを確認します。条項の効力に争いがある場合は、移転を求める根拠と相手の反論を検討します。契約に基づく請求が難しい場合には、新たな移転合意を交渉します。

商標権の移転は、登録によって効力が生じます。譲渡の契約を結んでから移転の登録が終わるまでの間、誰がどの根拠で商標を使うのかを決めておきます。現在の権利者から使用の許諾を受ける方法があります。譲渡の契約の中に、締結の時から効力を生じる許諾を併せて定めることも考えられます。

その許諾では、誰の行為を認めるかを特定します。メーカー、日本法人、新しい代理店のうち、実際に輸入や販売を行う者です。何を認めるかも定めます。対象の商標と商品、輸入、販売、広告といった行為です。期間は、契約の締結から移転の登録までを含めます。登録が遅れた場合に利用を続けられる条件と、譲渡が実行されない場合の扱いも決めます。新しい代理店に直接許諾する方法と、メーカーに認める範囲に新しい代理店の行為を含める方法があります。再許諾による場合は、その権限があるかも確認します。移転登録後も新しい代理店が輸入・販売を続けられるよう、権利を取得する会社との利用条件も整えておきます。

移転で解決する場合は、取消しの手続をどうするかを、移転の実行と連動させます。あわせて、在庫の販売、表示の切替え、販売経路の移行の時期を決めます。

登録を争うことと販売を続けることは、それぞれ根拠を確かめたうえで、移転や使用条件の合意と日程をそろえる必要があります。当事務所では、登録の取消しを求める手続の検討と遂行、代理店との移転・使用条件の交渉、輸入・販売の継続に関する許諾や税関手続への対応について、個別のご相談をお受けしています。

許諾の範囲や契約終了後の利用については、知財・ライセンス紛争で説明しています。

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