Intellectual Property

商標権侵害の警告への対応

商品名やサービス名、店名、ロゴ等について、商標権者やその代理人から使用中止や金銭の支払を求める警告書が届くことがあります。本稿は、こうした通知を受けた企業の法務・経営担当者を対象としています。

検討の中心は、どの表示を、どの商品・サービスについて、どの範囲で続ける・変える・止めるかと、過去分の金銭請求への対応です。当事務所は、登録された権利と実際の使用を照合し、対応の選択肢を検討します。

会社が使用状況や取引資料を整理し、当事務所が法的な評価と対応方針の検討を支援します。本稿では、在庫・ウェブ・取引先への影響も扱います。回答書のひな形や商標出願の手順は扱いません。

監修:吉川 景司(弁護士・弁理士/第一東京弁護士会)

最終更新日:
目次
  1. 商標権侵害の警告書を受け取った会社がまず確認すること
  2. 1 商標権侵害の判断に必要な登録と使用状況の確認
  3. 2 先使用・不使用取消し・登録の無効の検討
  4. 3 使用継続・変更・停止の範囲の決定
  5. 4 金銭請求と取引先・ECモールへの対応の整理
  6. よくある質問
  7. 商標権侵害の警告への対応について当事務所が支援すること

商標権侵害の警告書を受け取った会社がまず確認すること

  • 警告書と期限:会社は、警告書・添付資料、受領日、相手が求める対応と回答期限を確認し、原本とともに整理します。
  • 登録情報:会社は、警告書に記載された登録番号・権利者・対象表示を整理し、添付された登録資料を保管します。
  • 表示の所在:会社は、対象表示が使われている商品・サービス、包装、ウェブ、店舗、取引先の掲載物を整理します。
  • 変更前の資料:会社は、表示の位置・大きさや周囲の文章が分かるよう、変更前の写真や画面を日付とともに保存します。
  • 使用の経緯:会社は、使用開始日とその後の経緯を整理し、当時の販売地域、広告、取引を示す資料を集めます。
  • 契約と仕入れ:会社は、仕入先と商品の流通経路を整理し、販売・ライセンス等の契約や許諾を示す資料を確認します。
  • 在庫と販売実績:会社は、対象商品の在庫・受注・出荷と、期間ごとの販売数量・売上・費用を示す資料を整理します。
  • 別の通知:会社は、取引先・ECモール・税関等から届いた通知の対象、手続、期限を、警告書とは別に確認します。

当事務所は、会社から提供された資料と権利情報を照合し、侵害の成否と対応方針の検討を支援します。

警告書への回答期限の考え方や、回答書の一般的な検討事項は、知的財産権の侵害警告書を受領した企業の対応で説明しています。

1 商標権侵害の判断に必要な登録と使用状況の確認

登録商標・権利者と警告の根拠

会社は、警告書と添付資料から、対象表示、商品やサービス、請求内容を整理します。

当事務所は、登録の有無、権利者、登録商標、指定商品・サービス、出願日、使用時点と現在の権利の状態を確認します。

警告書には、広く知られた商品名や店名等について、不正競争防止法に基づく請求が併記されることもあります。商標登録がなくても請求が成立する場合があるため、当事務所は、表示の認知度や、請求の根拠に応じて混同の有無などを別に検討します。

商標と商品・サービスの類似性

会社は、使用する表示と、商品・サービスの内容、用途、販売先・提供先を整理します。

当事務所は、商標の見た目・呼び方・意味から受ける印象を総合し、取引の実情も踏まえて類否を検討します。商品・サービスについては、用途、製造・提供主体、販売・提供経路、需要者等を確認し、同一・類似の商標を使うと同じ事業者のものと受け取られるおそれがあるかを検討します。区分番号が同じか違うかだけでは、類似するかは決まりません。

表示の使い方と商品の流通経路

会社は、表示の位置・大きさ・周囲の文章や画像が分かる資料と、仕入れ・流通経路の資料を用意します。

当事務所は、需要者から見て商品・サービスの提供元を示す使い方かを検討します。そのような使い方でなければ、商標権の効力が及ばない場合があります。説明文中で使っている場合は、その文脈と実際の表示方法を確認します。自社ブランドを併記していても、問題となった表示が別の出所表示として機能する場合があります。

当事務所は、提供元を示す使い方であっても、名称・品質等の表示に関する効力の制限を別に検討します。自己の名称や著名な略称を普通に用いられる方法で表示する場合には、商標権の効力が及ばないことがあります。会社名から「株式会社」等を省いた表示は、略称として著名性が問題になる場合があります。店名についても、その事業との関係や表示方法を確認し、自己の名称として扱われるかなどを個別に検討します。ただし、相手の商標権の設定登録後に不正競争の目的で自己の名称等を用いる場合、この名称等についての効力の制限は受けられません。

商品・サービスの普通名称・品質・原材料・用途等を普通に用いられる方法で表示する場合にも、商標権の効力が及ばないことがあります。当事務所は、辞書への掲載だけでなく、その商品・サービスの一般的な名称や性質を表す言葉かと、実際の表示方法を確認します。

真正品の再販売や並行輸入が商標権侵害に当たらない場合もあります。ただし、中身が真正品でも、正当な権限なく登録商標を付した包装の商品を販売のために所持する行為は、商標権侵害とみなされる場合があります。当事務所は、加工・詰替えの内容と、商品・包装・広告それぞれの表示を確認します。

当事務所は、並行輸入について、外国の商標権者やその許諾を受けた者が商標を適法に付したか、国内外の権利者が同一または法的・経済的に同一とみられる関係にあるかを確認します。また、国内の商標権者が直接または間接に品質を管理できる立場にあることなどから、国内の正規品と、商標が保証する品質に実質的な差がないといえるかを検討します。

2 先使用・不使用取消し・登録の無効の検討

先使用、不使用取消し、登録の無効では、判断する時点と効果が異なります。当事務所は、今後の使用と過去分の金銭請求を分けて検討します。

先に使っていた表示を続けられる条件

会社は、使用開始日、当時の販売・広告、その後の使用を示す資料を整理します。

当事務所は、会社が相手の出願前から日本国内で不正競争の目的なくその表示を使い、その結果、出願時に自社の商品・サービスを示すものとして需要者の間に広く知られていたか、その商品・サービスについて表示の使用を続けているかを検討します。条件を満たせば先使用により使用を続けられる場合がありますが、使用の開始が早いだけでは足りません。知られていた地域・需要者層や程度は、当時の取引の実情に即して当事務所が確認します。先使用が認められても、商標権者等から、混同を防ぐのに適当な表示を付けるよう求められることがあります。

使われていない登録商標の取消しの検討

会社は、相手の販売・広告の状況を、確認した日とともに記録します。

当事務所は、権利者や使用の許諾を受けた者が、日本国内で対象の指定商品・サービスについて継続して3年以上登録商標(社会通念上同一と認められる商標を含みます)を使っていないかを調べ、不使用取消しを検討します。使用の証明は相手側が行いますが、不使用に正当な理由がある場合などは取り消されません。審判を請求しただけで、使用を続けられるわけではありません。

取消しの審決が確定すると、対象の権利は審判請求の登録日に消滅したものとみなされますが、それより前の使用に対する金銭請求まで当然に解消するものではありません。

登録の無効を主張する理由と期間制限

会社は、出願・登録に関係する手持ちの資料を整理します。

当事務所は、無効理由とその判断時点、設定登録から5年の期間制限の有無と例外を確認します。無効の審決が確定すると、原則として権利は初めから存在しなかったものとみなされますが、登録後に生じた理由による無効では扱いが異なります。

侵害訴訟で、登録が無効にされるべきことを理由に権利行使を争う方法もあります。ただし、無効理由、期間の経過、期間内の審判請求の有無によっては、この主張が制限されます。当事務所は、無効を理由とする主張が制限される場合も、他の反論の可否を個別に検討します。訴訟で権利行使が制限されても、登録自体が消えるわけではありません。

3 使用継続・変更・停止の範囲の決定

検討中の販売・広告の扱い

当事務所は、侵害の成否と使用を続けられる法的根拠を確認し、変更・停止の必要性を検討します。侵害に当たる販売を続けた場合、その間の販売も損害賠償の対象となり得ます。また、故意による商標権侵害には刑事罰も定められています。警告を受け取っただけで侵害が決まるわけではありません。当事務所は、警告の内容、会社が把握していた事実、その後の対応を確認し、故意の有無も個別に検討します。

会社は、対象商品の在庫・受注と広告の状況、変更に必要な期間を整理します。会社は当事務所の検討結果を踏まえ、販売・広告を続ける・変える・止める範囲と、どのような事実が分かれば方針を見直すかを定めます。

名称・表示の変更案の評価

会社は、変更後の名称・ロゴと、包装やウェブ画面での表示案を用意します。

当事務所は、呼び方・意味・見た目や使い方を踏まえ、相手の権利との関係を検討します。文字の一部や書体を変えるだけで、侵害を避けられるとは限りません。当事務所は、変更案をどの商品・サービスで、どの位置・大きさで使うかも確認します。

会社は、切替えに必要な期間と取引への影響を整理し、採用する案を定めます。新旧の表示が併存する期間や対象商品も会社が整理し、当事務所は、その間の使用について交渉が必要かを検討します。名称を変更しても過去分の請求まで解消するわけではないため、当事務所は、今後の使用と過去の清算を分けて検討します。

在庫・ウェブ・取引先の表示の扱い

会社は、変更前の表示を写真や画面の保存等で記録し、販売資料とともに保管します。表示の所在も整理します。販売を止めても、登録商標等を付した商品を販売のために所持することが、侵害とみなされる場合があります。

侵害が認められる場合には、差止めとともに、対象商品の廃棄など侵害の予防に必要な措置を求められることがあります。当事務所は、表示の除去・貼替えで足りるかを含め、措置の必要性と範囲を検討します。

変更・停止を検討するときの確認表

対象確認する表示会社が確認する資料当事務所が検討する点
商品本体・包装本体の刻印、タグ、包装、同梱物現物・写真、在庫表、出荷記録貼替え等で対応できるか、在庫の扱いと合意の範囲
自社サイト・EC商品名、画像、広告、URLURLの一覧、画面の保存、更新の権限変更の対象と、モール等への申請の要否
店舗・取引先看板、メニュー、取引先の掲載物写真、配布先の一覧、契約・納入の記録変更を依頼する範囲と、取引先への説明の内容

変更する場合、会社は当事務所の検討を踏まえて作業を進め、第三者が管理する表示は、変更の依頼の結果も確認します。

4 金銭請求と取引先・ECモールへの対応の整理

損害賠償請求の対象期間と算定の根拠

会社は、請求の対象となる期間・商品やサービスごとに、販売数量、売上、費用の資料を整理します。

当事務所は、権利の存続期間や使用の経過と照合し、責任の有無と算定の根拠を検討します。警告を受ける前の販売も、賠償の対象となり得ます。商標権侵害の損害賠償では過失が推定されるため、登録を知らなかったというだけで責任を免れるとは限りません。

算定方法の代表例には、侵害によって得た利益を損害額と推定する方法や、使用料相当額による請求があります。売上と利益は区別し、当事務所は、推定を覆す事情や使用料の根拠も検討します。裁判所は、侵害があったことを前提に当事者が合意するとした場合の対価も、使用料相当額の認定で考慮できます。通常の契約での料率が、そのまま当てはまるとは限りません。

過去の清算と今後の使用条件

会社は、表示の変更・使用の終了や、許諾を受けた使用の継続など、希望する解決の条件を整理します。

当事務所は、清算する期間・請求の範囲と、今後使える表示・商品・販路・期間を区別して交渉します。当事務所は、支払の対象と、今後の使用について合意する条件を分けて確認します。

すでにある使用許諾契約の違反・解除・終了が問題になっている場合は、知財ライセンス契約の紛争で扱っています。

取引先・ECモール等への説明と手続

会社は、取引先への通知やECモールからの削除通知、規約、回答期限を確認します。当事務所は、説明の内容と提出する資料を検討します。当事務所は、権利者との合意内容に加え、掲載の回復に必要なモール側の手続・判断を確認します。

税関から認定手続の通知を受けた場合、会社は通知の種類と期限を確認し、当事務所は、争う旨の申出や、証拠・意見の提出を検討します。

よくある質問

警告書が届いたら、販売や広告を止める必要がありますか。

受領しただけで侵害が決まるわけではありません。当事務所は、侵害の成否と、使用を続けられる根拠を検討します。会社は在庫・受注や広告の状況を整理し、検討結果を踏まえて、対応の範囲と見直しの条件を定めます。

会社名として登記していれば、使い続けられますか。

登記していることだけで、商標権との関係は判断できません。当事務所は、実際の表示が自己の名称に当たるか、略称であれば著名か、普通に用いられる表示方法かを確認します。店名についても、その事業との関係や実際の表示方法を踏まえて個別に検討します。相手の商標権の設定登録後に不正競争の目的で名称等を用いる場合、この名称等についての効力の制限は受けられません。

相手の出願より前から使っていれば、使い続けられますか。

当事務所は、会社が相手の出願前から国内で不正競争の目的なく使い、出願時に自社の商品・サービスを示すものとして需要者の間に広く知られ、使用を続けているかを確認します。先に使っていただけでは足りず、先使用が認められても、混同を防ぐ表示を求められることがあります。

相手が登録商標を使っていなければ、警告に従う必要はありませんか。

見かけ上使われていないというだけでは判断できません。当事務所は、権利者や許諾を受けた者が、国内の対象商品・サービスについて継続して3年以上、登録商標(社会通念上同一と認められる商標を含みます)を使っていないか、正当な理由があるかを確認します。取消しが確定しても、審判請求の登録日より前の使用に対する金銭請求は、別に検討します。

名称を変更すれば、過去分の金銭請求もなくなりますか。

名称の変更だけで、過去分の請求は解消しません。会社は変更の前後の使用状況と販売資料を整理し、当事務所は過去の侵害の成否、対象期間、算定の根拠を検討します。交渉する場合も、過去の清算と今後の使用条件を分けて確認します。

ECモールの商品ページが削除された場合は、どう対応しますか。

会社は、削除通知、対象ページ、規約、回答期限を確認します。当事務所は、権利者の主張とモールの手続を区別し、提出する資料を検討します。権利者との合意内容に加え、掲載の回復に必要なモール側の手続・判断も確認します。

商標権侵害の警告への対応について当事務所が支援すること

商標権侵害の警告への対応は、表示と商品・サービスごとに法的な根拠を確かめたうえで、今後の使用と過去分の請求を分けて決める必要があります。当事務所では、侵害の成否と権利の有効性の検討、使用継続・変更・停止の範囲の整理、権利者への回答・交渉と合意条件の確認、取引先・ECモール・税関の手続への対応について、個別のご相談をお受けしています。

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現在の状況、受領している通知があればその内容と日付、把握している期限を、分かる範囲でお知らせください。

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本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に関する法的助言ではありません。具体的な対応については、当事務所までご相談ください。記事の内容は、最終更新日の時点で施行されている法令等に基づいています。施行前の改正法を取り上げる場合は、本文にその旨を示しています。