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自社サイトのAI学習拒否――クロール制御と法的対応の限界
自社サイトの記事や画像をAIの学習に使わせたくない場合、まず、情報の取得、学習への利用、検索結果やAIの回答での表示のうち、何を制限したいのかを分けて考えます。robots.txt等による指定は、サービスごとに対象や効果が異なり、通常検索の掲載・表示に影響するものもあります。
本稿では、サイトを運営する企業に向けて、取得・用途の制御、アクセス制限、利用規約・契約に基づく対応を整理します。拒否の指定と著作権法上の評価を区別し、情報が取得・表示された場合の記録の残し方や、停止・削除を求める際の確認事項を解説します。
なお本稿は、主として公開しているコンテンツの取得・利用・表示を扱います。認証の突破や非公開情報の流出が疑われる場合は、「サイバー攻撃・情報漏えい対応」も並行してご覧ください。
AIによる取得・学習・表示を制限する前に確認すること
- 対象となるページ・画像・データと、自社が保有する権利・第三者から受けている許諾の範囲
- 制限したい利用が、取得、学習、検索での表示、生成AIの回答での表示のどれか
- 対象とする事業者・サービス・クローラと、維持したい通常検索への掲載
- 現在の公開範囲、robots.txt、メタタグ、認証・アクセス制限の設定
- 利用規約への同意の取り方、個別契約の有無と、データの提供・販売の実態
- 取得・表示の具体例、アクセスログと、当時の設定・規約の記録
外部のライターや制作会社の成果物を掲載している場合は、自社がどの範囲の権利を持っているかを先に確認してください。掲載の許諾を受けているだけでは、自社が著作権に基づく差止請求をできるとは限りません。権利の帰属を確認し、必要に応じて権利者と連携することになります。
ご相談いただけること制限したい取得・利用・表示の整理/制御手段の法的位置づけの検討/著作権に基づく請求の検討/利用規約・個別契約の作成・見直し/取得・表示の記録と申入先の整理/停止・削除等の申入れと交渉
お問い合わせフォームへ目次
1 止めたい利用を、取得・学習・検索表示に分ける
三つの行為は別のものです
自社サイトの情報をめぐっては、次の三つが問題になります。
第一に、取得と保存です。クローラがページを読み込み、複製する場面です。
第二に、学習と解析です。取得した情報を解析し、モデルの学習に用いる場面です。
第三に、生成と表示です。検索結果や、AIによる回答・要約に、自社の情報が現れる場面です。
この三つは、根拠となる規定も、とり得る手段も異なります。「クロールは複製だから差し止められる」「学習は非享受目的だから何もできない」といった形で、あらかじめ結論を決めることはできません。各行為の実態と目的を確認したうえで判断することになります。
何のために制限したいのかを決めます
学習への利用だけを止めたいのか、検索結果への掲載も止めたいのかによって、選ぶ手段は変わります。学習を拒否する指定を強めた結果、通常の検索からの流入まで失うことは避けたいという場合も多く、その点は事業上の判断として先に整理しておく必要があります。
取得を制限する指定と、検索結果の掲載・表示を制限する指定とでは、作用する段階が異なります。表示に関する指定は、再びクロールされる等の過程を経て、既に検索の対象となっているページにも反映される場合があります。他方、取得済みのデータや学習済みのモデルからの削除までが、設定の変更によって実現するとは限りません。既に取得された情報をどうするかと、今後の取得をどう防ぐかは、分けて考える必要があります。
2 robots.txt・メタタグ・アクセス制御の対象と限界を確認する
技術的な制御と契約上の制限を、次の表に併記しています。各指定の作用は、対象となる事業者の仕様と設定によって異なります。
| 手段 | 対象・成立条件 | 制御・合意できること | 残る限界・法的留保 | 通常検索の掲載・表示との関係 |
|---|---|---|---|---|
| AI向けの取得・用途制御(robots.txtの指定等) | 対応する事業者・クローラ・利用目的を特定 | 仕様に応じ、取得や学習等への利用を制御 | 他の事業者や既に取得されたデータに同じ効果が及ぶとは限らない | 指定ごとに異なる。Google-ExtendedはGoogle検索の登録・順位シグナルには影響しない |
| 検索クローラ向けrobotsルール | 対象クローラが指定に対応していること | 指定した範囲へのクロールを制御 | アクセス自体を遮断するものではない。一定の拒否措置の法的な意味は第3章を参照 | クロールを止めても、URLが検索結果に残る場合がある |
| noindex | 対応する検索エンジンが設定を読み取れること | 対象ページのインデックス登録・掲載を制御 | 取得やAI学習を一律に禁止する指定ではない。指示を取得できることが前提 | 対応する検索では、対象ページを掲載対象から除外する |
| nosnippet等 | 対応する事業者が指定を読み取れること | 検索結果の抜粋等を指定に応じて制御 | すべてのAIサービスの学習・出力を止めるものではない | 通常検索の説明文等にも影響する |
| 認証・アクセス制限 | サーバ側で許可する利用者等を制限 | 無権限のアクセス・取得を技術的に制限 | 許可を受けた利用者からの再提供や、既に取得された分は別。回避行為の法的評価も個別に判断 | 認証の内側の本文は、通常クロールされない |
| 利用規約 | 合意の成立と契約への組入れ、条項の有効性 | 利用目的、再提供等の条件を定める | 掲示しただけで全ての取得者を拘束するわけではない。契約違反と著作権侵害は別 | 掲示のみでは掲載・表示は変わらない |
| 個別契約 | 当事者と対象データ・利用範囲を特定 | 用途、再提供、記録、削除への対応等を合意 | 契約外の第三者を当然には拘束しない。履行の確保も別問題 | 掲載の扱いも必要に応じて合意する。自動では変わらない |
※Googleに関する記載は同社の仕様に基づく例であり、各社に共通する仕様として扱うことはできません。仕様は変更され得ますので、実際に設定する際には最新の公式情報を確認してください。
対象を取り違えないための三点
Googleは、Google-Extendedについて、ウェブサイトの運営者がGeminiアプリやGemini向けVertex AI APIのモデルのトレーニングおよびグラウンディングに自社のコンテンツを役立たせるかどうかを管理できるトークンであると説明したうえで、「Google-Extended が Google 検索でのサイトの登録に影響したり、Google 検索でのランキング シグナルとして使用されたりすることはありません。」としています。AI向けの指定と、検索の掲載・表示の制御とは別のものです。
もっとも、このことから「検索からの流入に一切影響しない」と広げることはできません。noindexや検索クローラへの制限には、通常の検索に作用するものがあります。また、Google検索の結果ページに表示されるAIの機能は、Google-Extendedの拒否指定によって止まるものではありません。検索側の取得・表示に関する指定を別に確認する必要があります。
robots.txtの指定に従ってクローラが取得を控えると、ページに置いたnoindex等の指示を読み取ってもらえない場合があります。robots.txtはアクセスを技術的に遮断するものではなく、指定に対応する事業者がこれを尊重することを前提とする仕組みですので、認証やアクセス制限とは作用が異なります。手段を重ねる際には、その組合せが意図したとおりに働くかを確認してください。
なお、これらの指定は名称だけで法的な意味が決まるものではありません。後述する法令上の基準に該当するかどうかは、指定の対象と実際の処理・表示に即して判断されます。
制限したい範囲と法的対応の根拠を整理したうえで、具体的な設定と反映の状況は、サイトの管理担当者や制作会社と確認してください。
3 著作権と利用規約・契約に基づく対応を検討する
学習のための利用――著作権法30条の4
著作権法30条の4は、著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、著作物を利用することができると定めています。情報解析の用に供する場合は、その一つとして挙げられています。
ただし、同条ただし書は、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでないとしています。
まず確認するのは、その利用が「享受」を目的としないものといえるかです。文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」は、情報解析の目的と享受の目的とが併存する場合には、同条の適用がないとしています。特定の著作物の創作的表現の全部又は一部を出力させることを目的とした追加的な学習や、回答の生成に際して自社の記事の表現を再現させることを目的とするデータベースの作成などは、この観点から検討されることになります。「学習」「解析」と呼ばれているという理由だけで、同条の本文の要件を満たすわけではありません。
同資料は、ただし書に該当し得る例として、大量の情報を容易に情報解析に活用できる形で整理したデータベースの著作物が販売されている場合に、当該データベースを情報解析目的で複製等する行為を挙げています。さらに、AI学習のための複製等を防止する技術的な措置が講じられており、かつ、このような措置が講じられていることや過去の実績といった事実から、当該ウェブサイト内のデータを含む情報解析用のデータベースの著作物が将来販売される予定であることが推認される場合には、この措置を回避してクローラにより多数のデータを収集する行為が、当該データベースの著作物の将来における潜在的販路を阻害するものとして、ただし書に該当し得るとしています。この技術的な措置の例として、robots.txtへの記述と、ID・パスワード等を用いた認証が挙げられています。
ここで重要なのは、この整理が、当該データベースの著作物を複製し、その潜在的な販路を阻害することを問題にしている点です。学習を拒否する意思表示を掲げるだけで権利制限の対象から外れる、という整理ではありません。他方、技術的な措置の存在それ自体が、将来の販売が推認されるかどうかの判断材料の一つとされている点にも注意が必要です。拒否の指定に法的な意味が全くない、ということでもありません。
なお、同資料が挙げているのは例であり、ただし書に該当し得る場合を尽くしたものではありません。データベースの著作物の販売の予定がなければただし書は問題にならない、という逆方向の読み方もできません。また、これは文化審議会の小委員会による解釈の整理であって、個別の事件における結論を保証するものではなく、データベースの著作物についての整理を、そこに収録された個々の記事のすべてにそのまま広げることもできません。
検索・AI回答への利用――著作権法47条の5
検索結果やAIの回答に自社の記事が使われた場合には、学習のための利用とは別に、検索・情報解析に付随する軽微な利用を認める規定の適用を確認します。
著作権法47条の5は、検索の結果や情報解析の結果の提供に付随する軽微な利用等について、一定の条件のもとで許諾を不要としています。確認するのは、検索・解析の結果の提供が主で、記事等の提供が従となっているか、元の著作物に占める割合・利用される量・表示の精度等に照らして軽微といえるか、権利者の利益を不当に害することとなっていないか、そして事業者が法令上の基準を満たしているかです。短い要約が付いていることや、出典のリンクがあることだけで、適法になるわけではありません。
URLの検索とその結果の提供を行う場合には、検索目的の収集を拒否するrobots.txt等の指定も確認の対象になります。一般の慣行に従った拒否の指定に関する基準は、対象となる情報を提供しないことを求めるものであり、AIの学習全般を禁止する制度ではありません。学習だけを拒否する指定とは区別して考える必要があります。また、認証等による受信の制限がある場合には、その制限を設けた者の承諾の有無も問題になります。
検索した資料をもとに回答を作るサービスについても、同条が適用される余地はありますが、「AIの回答」という名称だけで決まるものではありません。回答等を準備するために行われる複製と、利用者に示される内容とを分けて検討することになります。同条の条件を満たさない場合にも、他に適法な利用の根拠があるかどうかを確認する必要があります。
(根拠:著作権法47条の5第1項・第2項、著作権法施行令7条の4、著作権法施行規則4条の4・4条の5)
利用規約・個別契約
利用規約に「AI学習を禁止する」と記載することは可能ですが、掲示しただけで全ての訪問者との間に契約が成立するわけではありません。確認すべきは、相手方との間に契約が成立しているといえるか、その禁止条項が契約の内容となっているかです。同意の取り方と、条項の内容の双方を確認する必要があります。
相手方が特定できる場合には、個別の契約によって、用途、再提供、記録、削除への対応、違反があった場合の取扱いを定めることが考えられます。契約外の第三者を当然には拘束しない点と、履行を確保する手段は別に用意する必要がある点は、あらかじめ理解しておく必要があります。
また、契約違反と著作権侵害は別の問題です。規約違反があるからといって、直ちに著作権侵害が成立するわけではありません。
4 取得・表示の記録を残し、停止・削除等を申し入れる
記録として残すもの
設定を行った日、そのときの設定内容、適用されていた規約の版を記録します。あわせて、アクセスログから、どのクローラが、いつ、どの範囲を取得したかを確認します。
検索結果やAIの回答に自社の情報が表示された場合は、質問文、回答の全文、出典として示されたリンク、サービス名、日時を保存します。そのうえで、自社の原文・画像の当時の版と、利用されたと考える具体的な表現とを対照できるようにしておきます。
ここで注意が必要なのは、AIの回答に自社の情報が現れたという事実と、自社のサイトから取得されたという事実とは別だという点です。回答に出たことだけで、自社サイトからの取得やモデルの学習への利用まで示せるわけではありません。検索の際の取得、転載先からの取得、第三者からの提供も、調査の対象になります。アクセスの記録と表示の記録は、それぞれ別の証拠として評価します。
事業者への照会と申入れ
事業者に対しては、どのクローラが取得したのか、取得した情報がどの用途に用いられているのか、拒否の指定にどう対応しているのか、取得済みの情報と学習済みのモデルについてどのような対応が可能かを照会します。そのうえで、対象を特定して、取得の停止、表示の停止、削除を申し入れます。
もっとも、照会に回答が得られるとは限らず、自社のログだけで取得した主体や学習への利用を特定できるとも限りません。
申入れに当たっては、事業者が公表している仕様に沿った対応の依頼と、契約や著作権に基づく請求とを区別します。公表された仕様があることから、自社に法的な請求権が当然に生じるわけではありません。義務の有無にかかわらず対応を求める任意の要請も、選択肢の一つです。
削除を求める対象を分けます
削除を求める対象は、既に取得されたデータ、将来の学習用のデータセット、検索結果等での表示、学習済みのモデルに分かれます。仮に著作権侵害が成立する場合でも、データセットからの除去と、モデル自体の廃棄とでは、認められる措置の範囲が異なります。技術的に消去が難しいという説明だけで終わらせず、どの対象について、何を求めるのかを特定したうえで申し入れることになります。
後から拒否の指定を行っても、既に取得された情報や、学習に用いられた結果までが当然に解消されるわけではありません。取得の時期、他の入手経路の有無、請求の根拠を確認したうえで、現実にどこまで求められるのかを検討します。
なお、本稿は日本法を前提とした説明です。国外での取得・利用については、利用が行われた場所や請求の内容に応じて、適用される法と裁判管轄を別に検討する必要があります。
仕様の変更に備える
クローラの名称、指定の書き方、対象となる用途は変更されることがあります。設定は一度行えば足りるものではなく、公式の仕様が変更されていないかを定期的に確認し、変更があった場合に設定を見直す運用が必要です。
当事務所のサポート内容
- 制限したい利用を、取得・学習・検索表示に分けて整理し、自社が保有する権利の範囲を確認します
- 各手段が法的にどのような位置づけにあるかを整理し、制限の方針を検討します(設定の実装や、取得を確実に遮断することをお約束するものではありません)
- 著作権法30条の4および47条の5の適用について、対象となる行為に即して検討します
- 利用規約・個別契約の作成と見直しを行い、同意の取り方を含めて検討します
- 取得・表示の記録の整理と、事業者への照会・申入れの文案の作成を支援します
- 停止・削除等の申入れと、その後の交渉・請求の検討を支援します
よくあるご質問
robots.txtで拒否したクローラに取得されたら、直ちに著作権侵害になりますか。
そうとは限りません。著作権法30条の4は、思想又は感情を享受させることを目的としない利用を一定の限度で認めており、情報解析の用に供する場合はその一つです。同条ただし書に該当するかどうかは、文化庁の整理では、情報解析に活用できる形で整理したデータベースの著作物の潜在的な販路を阻害するかという観点から検討されています。拒否の指定があることは考慮される要素の一つですが、それだけで直ちに侵害になるという整理ではありません。他方、検索結果の提供に関する47条の5については、robots.txt等による収集拒否の記載が権利制限の適用条件に関係しますので、どの行為が問題になっているのかを分けて確認する必要があります。
Google-Extendedを拒否すると、通常のGoogle検索への掲載やAIによる概要の表示も止まりますか。
止まりません。Googleは、Google-ExtendedがGoogle検索でのサイトの登録に影響したり、ランキング シグナルとして使用されたりすることはないと説明しています。この指定によって通常検索の掲載が止まらないのと同様に、検索の結果ページに表示されるAIの機能も、この指定だけでは止まりません。検索側の取得・表示に関する指定を別に確認する必要があります。仕様は変更され得ますので、設定の際には最新の公式情報をご確認ください。
robots.txtで取得を拒否したのに、検索結果にURLが残ることはありますか。
あります。クロールを制限することと、検索結果から除外することは別の指定です。また、robots.txtで取得を止めると、ページに置いたnoindexの指示自体を読み取ってもらえない場合があります。掲載そのものを止めたい場合には、指示が読み取られる状態を保ったうえで、掲載を除外する指定を用いるか、認証等によってアクセスを制限することを検討します。
利用規約に「AI学習禁止」と書けば、すべてのAI事業者を拘束できますか。
できません。規約は、契約が成立した相手方との関係で効力を持つものであり、掲示しただけで全ての訪問者との間に契約が成立するわけではありません。同意の取り方、条項の内容、相手方がその条項に拘束されるといえるかを個別に確認することになります。また、規約違反があることと、著作権侵害が成立することも別の問題です。相手方が特定できる場合には、個別の契約で用途と対応を定めるほうが実効的なことがあります。
後から学習拒否を設定すれば、すでに取得・学習されたデータも削除させられますか。
当然に削除させられるわけではありません。まず、削除を求める対象を、既に取得されたデータ、将来の学習用のデータセット、検索結果等での表示、学習済みのモデルに分けて考える必要があります。仮に著作権侵害が成立する場合でも、データセットからの除去と、モデル自体の廃棄とでは、認められる措置の範囲が異なります。取得の時期、他の入手経路の有無、取得の態様を確認したうえで、事業者への照会と申入れから始めることになります。削除の完了を確認できる範囲と、確認できない範囲を分けて把握しておくことも必要です。
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ご相談にあたって
現在の状況、受領している通知があればその内容と日付、把握している期限を、分かる範囲でお知らせください。
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