Litigation & Dispute Resolution
建築・建設紛争への対応
当事務所は、工事を発注する企業・法人等と、元請・下請の建設会社からのご相談を中心に、建築・建設紛争に対応します。現場確認と記録の保全を踏まえ、施工不良、追加・変更工事、出来高、工期遅延、請負代金の不払い等の問題の解決に向けて、依頼者の立場から、交渉、あっせん・調停・仲裁、訴訟への対応を支援します。
当事務所には、企業・組織の危機管理・初動対応と企業間取引に関する紛争に精通した弁護士のほか、裁判所の建築集中部(建築紛争を集中的に扱う部)で建築紛争の審理を担当した経験を有する、元裁判官の弁護士が在籍しています。
監修:吉川 景司(弁護士・弁理士/第一東京弁護士会)
まず確認すること
- 施工不良の状態確認と記録の保全――施工不良の位置・範囲・程度、発生時期や変化の経過を確認できるか。写真・動画や測定結果を、図面上の位置と対応させて記録できているか。
- 工事中断・引継ぎ前の施工状況と出来高――施工済み部分と未施工部分を区別できるか。工種・場所・数量や、後続工事により施工される部分の状態を確認できるか。
- 専門家による現況確認や証拠保全の必要性――外部の建築士等による現況調査が必要か。調査者の専門分野や当該工事への関与・利害関係を確認しているか。裁判所の証拠保全を検討すべき状況か。
- 施工・検査記録と写真等の保存状況――工事日報、検査記録、工事写真、補修履歴等は、誰がどこで保管しているか。原本・元データや、撮影日時・場所を確認できる情報が残っているか。
- 契約図面と追加・変更の経緯――契約書・約款、図面、仕様書、見積書、工程表を確認できるか。追加・変更工事の指示、承認、代金・工期の合意が記録されているか。
- 関係当事者の役割と権限――発注者、元請、下請、設計者、工事監理者の契約関係と担当範囲はどうなっているか。現場への立入り、調査、工事の変更等について、誰と調整する必要があるか。
- 工期・支払状況・通知等の期限――完成・引渡し、代金の支払、回答等について、迫っている期限はないか。契約代金、追加・変更の額、既払額・未払額を区別できるか。
安全確保や被害拡大の防止に必要な措置を優先し、可能な範囲で施工状況等を記録してください。専門家の調査や資料収集が完了していない段階でも、ご相談いただけます。既に補修・撤去が行われている場合は、残された記録等から確認できる事項を整理します。
ご相談いただけること現場確認/施工不良、追加・変更工事、出来高、請負代金の請求・反論/あっせん・調停・仲裁、訴訟
お問い合わせフォームへ目次
1 建築・建設をめぐる主な紛争
当事務所にご相談いただく建築・建設紛争には、次のようなものがあります。
- 施工不良(契約不適合)――完成した建物や設備に不具合があり、補修や代金の減額、損害賠償、契約解除が問題となる。
- 追加・変更工事――当初の契約範囲を超える作業について、追加・変更の代金や工期の変更が合意されているかが争われる。
- 工期遅延――完成・引渡しが遅れ、遅延の原因や損害の負担が問題となる。
- 請負代金・設計監理報酬の不払い――工事や設計・監理業務の対価が支払われず、支払留保の根拠が争われる。
- 契約解除・出来高精算――工事の中止や契約の解除に伴い、契約上の責任の有無や施工済み部分の精算、残工事の引継ぎが問題となる。
- 設計・監理責任――設計者や工事監理者の業務と、施工業者との責任分担が問題となる。
- 工事に伴う近隣対応――騒音・振動や隣地への影響をめぐり、近隣への対応が必要となる。
これらは単独で生じるとは限らず、たとえば不具合をめぐる争いが、請負代金の不払いや契約解除、出来高精算の問題に発展することがあります。各紛争の判断ポイントは第3章で整理します。
2 補修・撤去前の現場確認と初動対応
2-1.現場が変わる前後の状態を記録する
補修・撤去や後続工事によって現場の状態が変わる前に、不具合の位置・範囲・程度を記録します。写真・動画は、図面上の位置、撮影日時、寸法・測定結果と対応付けて残し、必要に応じて撤去した部材や試料の保存も検討します。補修前後の状態を、可能な範囲で記録してください。
2-2.施工済み部分・未施工部分と出来高を確認する
工事の中断や引継ぎが予定されている場合は、その時点での施工状況を、工種・場所・数量ごとに確認します。当初の契約範囲の工事と、追加・変更部分とを区別しておくことが、後の精算や請求の整理に役立ちます。現況の記録と、金額としての出来高評価は別の作業であり、まず現況を確認できる形で残すことが基本です。
2-3.専門家による現況調査・意見書と、裁判所の証拠保全を検討する
不具合の原因や程度について専門的な判断が必要な場合は、外部の建築士等による現況調査や意見書を検討します。
証拠保全は、あらかじめ証拠調べを行うための裁判所の手続であり、現況が変わる前に証拠保全を通じて状態を記録する必要があるかは、工事の予定や当事者間の調整状況を踏まえて検討します。
2-4.立会い・調査の機会と、工事を進める条件を調整する
相手方にも現況を確認する機会を設けるかは、緊急性、現場への立入権限、工程との関係を踏まえて検討します。補修や継続工事を進める場合には、その範囲、記録の方法、費用の負担についてあらかじめ整理しておくと、後に紛争化することを防止できます。調査と並行して、契約上の通知や回答の期限を確認します。
3 契約・責任・請求の判断ポイント
3-1.施工不良(契約不適合)と補修・代金の減額・損害賠償・契約解除等
完成した建物や設備が契約の内容に適合しない場合、発注者は、補修などの追完の請求、代金の減額、損害賠償の請求、契約の解除を検討することになりますが、それぞれ法律上の要件が異なり、契約書中に施工不良が生じた場合の取扱いが決められていることも多いです。何が「契約の内容」であったかは、契約書だけでなく、図面・仕様書や協議の経緯から確認します。不具合を知ってからの通知の期間、消滅時効、契約書に定められた責任期間は、それぞれ区別して確認する必要があります。
本ページは、主として2020年4月1日施行の改正後の民法を前提としています。契約の締結時期等によっては、改正前の民法に基づく瑕疵担保責任が問題となる場合もあります。
住宅新築工事に関する特則
住宅を新築する工事では、法人が発注者である場合にも、住宅の品質確保の促進等に関する法律(住宅品確法)の特則が適用されることがあります。構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分の一定の瑕疵について、引渡しから10年間の瑕疵担保責任が定められています。すべての不具合や改修工事が対象となるわけではなく、通知期間等も別途確認します。
3-2.追加・変更工事と工事費の変動
追加・変更工事の代金が請求できるかは、当初の契約範囲、追加・変更の指示や承認をした担当者の権限、金額・工期についての合意の有無から検討します。変更契約書がない場合でも、見積書、メール、打合せ記録、工事記録などから合意の成立が認められることがあります。追加・変更工事の問題と、資材価格や労務費の変動による工事費の増加(スライド条項・ハードシップ条項)とは、根拠が異なるため分けて検討します。
3-3.工期遅延・工期延長と損害
工期の遅れについては、契約上の工程と実際の進捗を対比し、遅延の原因が発注者・請負者のいずれの側にあるか、複数の原因が重なっていないかを確認します。工期延長の合意や通知の有無、完成日への影響、遅延によって生じた損害、違約金条項の有無などを整理します。
3-4.請負代金・報酬の未払いと支払留保
請負代金や設計・監理報酬の支払をめぐる紛争では、工事や業務の履行状況、完成・引渡し・検査と支払条件の関係、既払金の額を確認します。不具合があることだけで残代金全額の支払を留保できるとは限らず、支払留保や相殺の根拠と対象額を検討する必要があります。
3-5.契約解除・工事中止と出来高精算
工事の途中で契約を解除し、または工事を中止する場合は、解除の法的根拠と手続を確認します。契約上の責任の有無、施工済み部分(出来高)の評価、既払金との精算等を整理します。別業者へ引き継ぐ場合には、引継ぎ前の現況記録(第2章)が、精算の基礎資料として重要になります。
3-6.設計・工事監理等の責任分担と近隣対応
不具合の原因が設計・施工・工事監理のいずれにあるか、元請・下請の間でどのように担当が分かれていたかによって、責任を負う当事者と範囲が変わります。工事に伴う近隣への影響については、契約当事者間の責任と、近隣という第三者に対する責任とを区別して検討します。
4 解決手続の選択――交渉、あっせん・調停・仲裁、訴訟
4-1.交渉による解決
補修の方法、工事の継続、代金や工期、精算について、当事者間で協議して解決する方法です。最終的な解決と、工事を進めるための当面の調整とを分け、合意できた事項と争いが残る事項を記録しておくことが重要です。
4-2.建設工事紛争審査会(あっせん・調停・仲裁)
建設工事紛争審査会は、工事請負契約の直接の当事者間の紛争について、あっせん・調停・仲裁を行う公的な裁判外紛争解決機関です。訴訟を起こす前に、必ず利用しなければならない制度ではありません。
あっせん・調停は当事者の合意による解決を目指す手続であり、仲裁は仲裁合意に基づいて審査会の判断に委ねる手続です。あっせん・調停が不成立となっても、仲裁合意がなければ仲裁に移行するものではありません。専ら設計・監理契約に関する紛争や、近隣住民との紛争は、審査会の対象とは異なります。
4-3.裁判所の訴訟
裁判所の訴訟では、主張と証拠(設計図面・施工記録・専門家の意見等)との対応関係を整理し、主張・立証していくことになります。裁判所の建築集中部(建築紛争を集中的に扱う部)では、契約不適合一覧表を用いた争点整理や、一級建築士等の資格を有する専門家が専門委員や調停委員として手続に関与し、現地進行協議期日などで施工状況等を実際に確認するなど、専門的知見を活用した紛争の解決が行われます。当事務所は、建築集中部で建築紛争の審理を担当した経験を有する弁護士のもと、専門性の高い建築訴訟に対応します。
4-4.仲裁合意がある場合
契約書に仲裁条項がある場合は、合意の有効性、対象となる紛争の範囲、指定された仲裁機関を確認します。有効な仲裁合意の対象となる紛争について訴訟を起こすと、相手方の申立てにより訴えが却下されることがあります。仲裁判断の効力、執行決定の手続、仮差押え等の保全処分との関係についても、あらかじめ整理しておく必要があります。
5 紛争を予防する契約と工事管理
建築・建設紛争の多くは、工事範囲、契約図面相互の関係、追加・変更の手続と承認権限、代金・工期の調整方法、検査・引渡し・支払の条件が曖昧なまま工事が進むことから生じます。これらの事項について契約時に明確に定めておくことが望まれます。あわせて、現場記録の担当者と保存先を決めておくことで、紛争が生じた際の初動が安定します。
6 当事務所の支援内容
建築紛争の審理経験を踏まえた争点・証拠の検討
建築紛争では、技術的な問題と契約上・法律上の争点を結び付けて整理することが重要です。当事務所は、建築集中部での審理経験も踏まえ、現況調査で確認すべき事項や、契約図面・工事記録・専門家の意見と主張との対応関係を検討します。
初動から解決手続、契約・運用の見直しまで
補修・撤去前に確認すべき事項の整理、専門家に求める調査事項の検討、契約・証拠の確認、請求・反論や通知の作成を支援します。工事の継続・中止や事業への影響も踏まえ、依頼者の立場から対応方針を検討します。
相手方との交渉、建設工事紛争審査会での手続、裁判所の訴訟、仲裁に対応するとともに、紛争で明らかになった課題を踏まえた契約書や工事管理上の運用の見直しも支援します。
担当弁護士や関与の範囲は、案件の内容等を踏まえて個別に決定します。
よくあるご質問
Q1 不具合の原因が分かっていない段階でも相談できますか。
原因調査が完了していなくても、ご相談いただけます。不具合の状況、これまでの経緯、補修・撤去等の予定を伺い、現場が変わる前に確認すべき事項を整理します。専門家による調査や意見書が必要かも、その目的と状況を踏まえて検討します。
Q2 変更契約書がなくても、追加工事代金を請求できますか。
変更契約書がないことだけで、請求の可否が決まるわけではありません。当初の契約範囲、追加工事の指示・承認、担当者の権限、代金に関する合意等を、見積書、メール、議事録、工事記録等から確認します。
Q3 不具合がある場合、残代金の支払いを止められますか。
不具合があることだけで、残代金全額の支払いを留保できるとは限りません。契約上の支払条件、工事の履行状況、不具合の内容、補修や損害賠償等の請求との関係を確認します。支払を止めることによる債務不履行のリスクも踏まえ、支払留保や相殺の根拠と対象額を検討します。
Q4 工事を継続しながら、費用や責任について交渉できますか。
継続する範囲や条件を整理したうえで、費用や責任に関する協議を並行して進める方法があります。安全性、工程、代金・支払条件、追加工事の承認方法を確認し、合意できた事項と争いが残る事項を分けて記録します。工事を続けることの意味が当事者間で食い違わないよう、暫定的な合意内容を明確にすることが重要です。
Q5 補修や別業者への引継ぎの前に、何を確認すべきですか。
安全確保を優先しながら、補修前の不具合、施工済み部分と未施工部分、出来高を確認し、写真・動画、図面、数量資料等で記録します。相手方による現況確認の機会や、外部の専門家による調査の必要性も検討します。
別業者へ引き継ぐ場合は、既存契約の扱い、引継ぎ時点の状態、残工事の範囲と費用を整理します。緊急の補修が必要な場合は、可能な範囲で補修前後の記録を残してください。
Q6 建設工事紛争審査会を利用しなければ、訴訟を起こせませんか。
審査会を必ず経る必要はありません。争点や当事者の意向等を踏まえ、交渉、審査会、裁判所の手続を検討します。
ただし、有効な仲裁合意の対象となる紛争について訴訟を起こした場合、被告が所定の時期に申立てをすれば、原則として訴えが却下されます。訴訟を選ぶ前に、契約書の仲裁条項等を確認する必要があります。
Contact
建築・建設紛争に関するご相談
ご相談の際には、ご相談者の立場、関係当事者、工事の状況、直近の期限を、分かる範囲でお知らせください。
資料がすべてそろっていない段階でも、ご相談いただけます。利益相反等の事情により、ご相談・ご依頼をお受けできない場合があります。
建築・建設紛争について相談する本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に関する法的助言ではありません。具体的な対応については、当事務所までご相談ください。記事の内容は、最終更新日の時点で施行されている法令等に基づいています。施行前の改正法を取り上げる場合は、本文にその旨を示しています。
