Intellectual Property
模倣品・商品形態の模倣への対応
自社製品によく似た商品が、通販サイトで販売されている。製造元も所在も分からず、出品者に問い合わせても返答がない。このような場面では、相手方への請求、プラットフォームへの申告、税関での輸入差止めという複数の手段があり、どれを、どの順序で、誰に対して用いるかが問題になります。手段ごとに根拠となる法律も、必要な資料も異なります。まず確認すべきは、自社の商品がどの法律によって守られているかです。
模倣品を発見したときの確認事項
- 商品画像だけでなく、掲載URL、掲載日時、出品者の表示、価格、販売条件
- 現物を購入できる場合は、商品、包装、ラベル、注文記録、決済記録、発送元
- 自社が保有する権利(商標権、意匠権、著作権、特許権等)の帰属・存続・許諾の状況
- 自社商品の開発経緯と、日本国内における販売開始の時期
- 相手方の商品が正規の流通品である可能性
ご相談いただけること証拠の確保と権利の確認/保護の根拠となる法律の整理/製造者・販売者・輸入者の特定/EC・SNSへの申告/税関の輸入差止申立て/差止仮処分・訴訟と損害賠償
お問い合わせフォームへ目次
1 発見時の確認と証拠の確保
掲載されている情報は、いつ削除されるか分かりません。商品画像に加えて、掲載URL、掲載日時、出品者の表示、価格、販売条件、掲載内容の変更履歴を保全しておくことが考えられます。あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があるときは、証拠保全の手続も選択肢となります。
現物を購入できる場合には、商品、包装、ラベル、注文記録、決済記録、発送元の情報を対応づけ、入手の経路を説明できる状態で保管することが考えられます。後の手続では、この商品がその出品から購入されたものであることを示す必要が生じます。
自社側の資料としては、商品の開発経緯、形態の変遷、日本国内での販売開始の時期、販売実績を、対象となる商品・型番ごとに整理しておくことが考えられます。後述する期間の制限を検討する際に必要となります。
あわせて確認したいのが、その商品が模倣品なのか、正規の流通品なのかという点です。正規の販売網を経由していないというだけで、模倣品や商標権侵害と判断することはできません。他方、真正な商品であれば必ず侵害にならない、というものでもありません。並行輸入品については、商標を付す権限、国内外の権利者の関係、品質管理の状況等を確認することになります。契約上の販売制限が問題となる場合は、別稿「知財ライセンス契約の紛争」で扱っています。
なお、取引先への告知や対外的な公表を行う場合には注意が必要です。競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為は、不正競争とされています。確認できた事実と法的な評価を分け、告知の相手方と内容を慎重に決めることになります。この点は、既存の「知的財産権の侵害警告への対応」でも扱っています。
何を、どの順序で行うか
掲載されているページへの対応、今後の輸入の阻止、相手方による侵害行為の停止は、それぞれ別の目標です。証拠を確保したうえで、掲載ページについてはEC・SNSへの申告を、輸入の阻止については税関への申立てを、事業者への請求については交渉や仮処分等を検討することになります。これらは順番に進めなければならないものではなく、並行して進める場合があります。なお、税関での輸入差止めは、既に国内に流通した商品の回収を直接実現する手続ではありません。
2 どの法律によって保護されるか
模倣品への対応では、複数の法律が同時に問題となります。
商標権 商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有します。これに加えて、指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用、又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用も、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなされます。他方で、商標権の効力が及ばない範囲が定められており、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標には効力が及びません。
意匠権 意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有します。登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとされています。
著作権 商品のデザインについて著作物性が認められるかは、意匠登録の有無とは別に、保護を求める表現の内容に即して検討することになります。
特許権 外観が異なる場合でも、相手方の製品の構成や製造方法が自社の特許発明の技術的範囲に属することがあります。外形の模倣がないことは、特許侵害がないことを意味しません。相手方が独自に開発したと述べていても、それだけで特許侵害が否定されるわけではなく、先使用権その他の実施権の有無は別に確認することになります。
不正競争防止法 他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用するなどして、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為、自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用する行為が、それぞれ不正競争とされています。前者は混同を要件としますが、後者は混同を要件としていません。
そして、登録された権利がない場合に実務上重要となるのが、次の商品形態模倣の規定です。
3 商品形態模倣の要件と期間の制限
他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除きます)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為は、不正競争とされています。登録を要しない点に、この規定の実務上の価値があります。
「商品の形態」とは、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感をいいます。「模倣する」とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいいます。依拠と実質的同一性の二つが要件とされています。
もっとも、この規定には期間の制限があります。日本国内において最初に販売された日から起算して3年を経過した商品について、その商品の形態を模倣した商品を譲渡等する行為には、同法の差止請求・損害賠償請求に関する規定も、罰則の規定も適用されません。また、他人の商品の形態を模倣した商品を譲り受けた者で、その譲り受けた時にその商品が模倣品であることを知らず、かつ、知らないことにつき重大な過失がない者がその商品を譲渡等する行為も、適用除外の対象とされています。この適用除外では、模倣品であることを知っていたかどうか等を、その商品を譲り受けた時点で判断します。その後に警告を受けたことだけで、既に譲り受けていた商品の販売が直ちに適用除外から外れるわけではありません。他方、警告を受けた後に新たに仕入れた商品については、その仕入れの時点の認識等を別に確認することになります。
ここで注意が必要なのは、この3年が意味する範囲です。これは商品形態模倣についての適用除外であり、模倣品に関わるすべての権利の保護期限ではありません。3年を経過していても、商標権、意匠権、著作権や、不正競争防止法の周知表示混同惹起・著名表示冒用による保護を別に検討する余地があります。
もっとも、3年の経過によって自動的に別の類型に移れるわけではありません。商品の形態そのものを商品等表示として保護する場合には、その形態の特徴に加えて、特定の事業者の商品であることを示す表示として需要者に認識されているかを、形態上の特徴、販売の状況、宣伝の状況等から検討することになります。商品名やブランド名が知られていることだけで、形態そのものが保護されるわけではありません。
なお、細部に変更がある商品について実質的同一性が認められるかは、変更の内容・程度と商品全体への影響を踏まえて判断されます。細部の変更にとどまるから当然に模倣に当たる、という形で結論が出るものではありません。
4 製造者・販売者・輸入者の特定と請求
請求の相手方を決めるにあたっては、出品の名義、契約上の販売主体、発送元、輸入者、製造者を区別し、取引資料や後述する認定手続を通じて得られる情報と照合することが考えられます。
不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その侵害の停止又は予防を請求することができます。故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責めに任じます。
形態模倣を理由として製造者に請求する場合には、製造の事実に加えて、商品形態模倣として列挙されている譲渡等の行為への関与や、そのおそれを確認して請求を構成することが考えられます。
あわせて確認したいのが、自社がその請求をすることができる立場にあるかという点です。商品を販売しているというだけで、当然に商品形態模倣を理由とする請求ができるわけではありません。裁判例では、その商品を自ら開発・商品化した者、又はこれと同様の固有かつ正当な利益を有する者という観点から、請求できる主体が判断されています。他方で、開発者本人以外はおよそ請求できない、というものでもありません。輸入・販売の関与の態様、開発費用の負担、契約上の位置づけを整理しておくことになります。
5 EC・SNSへの削除・出品停止の申告
ECモールに申告すれば、情報流通プラットフォーム対処法により7日以内に回答を受けられる、という制度ではありません。総務省のガイドラインは、ECサイト等を大規模事業者の指定対象外となる役務の例に挙げています。まず各サービスの知的財産権侵害の申告手続を確認します。他方、指定の対象となったSNS等の役務では、法定の申出に対し、申出を受けた日から原則7日以内に措置を講じたか否か等の通知が求められますが、これは削除期限ではありません。同法が定める損害賠償責任の制限と、発信者情報の開示は別の規律であり、ECサイト等についても、それぞれの要件に即して検討します。
(1)申告先と申告理由の確認
各EC・SNSの知的財産権侵害の申告窓口、受け付けている権利の種類、申告できる者の資格を確認します。権利の種類によって窓口や必要書類が異なることがあります。
(2)資料と求める措置の具体化
権利の帰属を示す資料、対象となるURLと商品、自社商品と対比した比較資料を用意し、掲載の削除、出品の停止、アカウントへの措置など、求める措置を特定します。
(3)申告後の対応
不足資料の補充を求められることがあります。削除された後の再出品の有無も確認します。販売者に対する直接の請求や仮処分の申立てと並行して進めるかどうかも、この段階で判断します。
(4)指定を受けた役務における法定の通知制度
総務大臣の指定を受け、法定の届出をした大規模特定電気通信役務提供者は、被侵害者が侵害情報等を示して侵害情報送信防止措置を講ずるよう申出を行うための方法を定め、公表しなければなりません。申出があったときは、権利が不当に侵害されているかどうかについて、遅滞なく必要な調査を行わなければならないとされています。
そのうえで、同法は、措置を講ずるかどうかを判断し、申出を受けた日から14日以内の総務省令で定める期間内に、措置を講じたときはその旨を、講じなかったときはその旨及びその理由を申出者に通知しなければならないと定めています。この期間は、同法の施行規則により7日とされています。法律上の「14日以内」は総務省令に許された上限です。
ただし、申出者から過去に同一の内容の申出が行われていたときなど、通知をしないことについて正当な理由がある場合には、通知の義務の例外が定められています。また、調査のため発信者の意見を聴くこととしたとき、調査を侵害情報調査専門員に行わせることとしたとき、その他やむを得ない理由があるときは、当該期間内にその該当する事由を通知し、判断をした後に遅滞なく結果を通知すれば足りるとされています。やむを得ない理由による場合には、その理由の内容も期間内に通知することが求められます。
これは削除をする期限ではなく、措置を講じたか否かを通知する期限です。措置を講じない場合にも、その旨と理由を通知することが求められます。逆に、通知がされたことによって、削除しないという判断の当否まで確定するわけではありません。また、指定は役務ごとに行われますので、同じ会社が提供するサービスであっても、対象となるものとならないものがあります。
6 税関における輸入差止めの手続
海外から流入する模倣品については、税関での対応が有効な場合があります。
特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権又は育成者権を侵害する物品は、輸入してはならない貨物とされています。また、不正競争防止法が定める周知表示混同惹起、著名表示冒用、商品形態模倣等に掲げる行為(それぞれに対応する適用除外に該当する行為を除きます)を組成する物品も、輸入してはならない貨物とされています。商品形態模倣も、この類型に位置づけられます。
ただし、輸入が禁止される物品の範囲と、権利者等が輸入差止申立てをすることができる範囲は、完全には一致しません。回路配置利用権については、輸入差止申立てではなく、輸入差止情報提供の制度を利用することになります。
輸入差止申立ての対象となる権利の権利者等は、自己の権利又は営業上の利益を侵害すると認める貨物に関し、侵害の事実を疎明するために必要な証拠を提出して、認定手続を執るべきことを税関長に申し立てることができます。不正競争防止法に基づいて申し立てる場合には、経済産業大臣に対して所定の事項についての意見又は認定を求め、その内容を記載した書面を申立先の税関長に提出しなければならないとされています。商品形態模倣を理由とする場合に必要となるのは、経済産業大臣の意見書です(営業秘密侵害品については認定書とされており、申立人が任意に選ぶものではありません)。意見書の申請に用いた書類一式や、真正商品と侵害の疑いがある商品を見分けるための資料の提出も求められます。この手続に時間を要しますので、事業計画との関係で早めに着手することが考えられます。
税関長が対象貨物について認定手続を執る場合には、権利者等及び当該貨物を輸入しようとする者に対し、認定手続を執る旨のほか、これらの者が証拠を提出し、意見を述べることができる旨等を通知しなければならないとされています。輸入者に関する情報は、輸入差止申立てをしただけで直ちに得られるものではありません。具体的な貨物について認定手続が開始されると、権利者等には、輸入者及び仕出人の氏名又は名称と住所が通知されます。税関への提出書類や貨物の表示から生産者が明らかな場合には、その情報も通知されます。他方、輸入しようとする者にも権利者等の情報が通知されますので、相手方への直接の請求との関係も踏まえて対応を検討することになります。なお、通知された輸入者が、出品者や製造者と同一であるとは限りません。
7 差止仮処分・訴訟と損害賠償
差止めや廃棄等を求める場合には、根拠とする権利ごとに請求することができる主体と措置の範囲を確認し、対象となる商品、行為、在庫を特定することになります。
保全命令の申立てでは、保全すべき権利又は権利関係と、保全の必要性を明らかにし、それぞれを疎明しなければなりません。販売等の停止を求める仮の地位を定める仮処分では、争いがある権利関係について著しい損害又は急迫の危険を避けるために必要であることが求められます。また、原則として相手方が立ち会うことのできる審理の期日を経る必要があり、担保を求められることもあります。
不正競争防止法に基づく損害賠償については、侵害者が侵害の行為により利益を受けているときに、その利益の額を損害の額と推定する規定が置かれています(商標法、意匠法にも対応する規定があります)。これは損害額についての推定であり、不正競争の成立や故意・過失を当然に推定するものではありません。侵害者の売上高をそのまま請求できるものでもなく、利益の額の算定と、推定を覆す事情の有無を検討することになります。
さらに、商品の形態の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額を、損害の額として請求することもできます。このほか、譲渡等の数量に応じた算定方法も定められています。
8 当事務所のサポート内容
- 権利資料と商品の開発・販売記録を確認し、保護の根拠となる法律と請求の構成を整理します
- 現物、掲載情報、取引資料の比較検討を行い、証拠保全の方針を立案します
- 相手方への通知と交渉、EC・SNSに対する権利侵害の申告を準備し、対応します
- 税関への輸入差止申立てと、認定手続における資料・意見の提出を行います
- 差止仮処分、訴訟への対応と、販売停止、在庫処理、損害賠償に関する合意内容を整理します
よくあるご質問
販売開始から3年が過ぎています。もう何もできないのでしょうか。
商品形態模倣については、日本国内において最初に販売された日から起算して3年を経過した商品に関する適用除外が定められています。もっとも、これはこの規定に関する制限です。商標権、意匠権、著作権による保護や、不正競争防止法の周知表示混同惹起・著名表示冒用による保護は、それぞれの要件と権利の存続状況に即して別に検討することになります。
当社商品の形状は機能に由来する部分が多いのですが、保護されないのでしょうか。
不正競争防止法は、商品形態模倣について、「当該商品の機能を確保するために不可欠な形態」を除くと定めています。機能に関係する形状がすべて除かれるわけではありません。同じ機能を他の形態によって実現できるかといった観点から、「不可欠」といえるかを検討することになります。
個人が海外から取り寄せているだけだという説明を受けました。
商標法は、輸入する行為には、外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為が含まれると定めています。意匠法にも、実施の定義の中に同旨の定めがあります。国内の受取人が個人で使用する目的であっても、海外の事業者が日本国内に持ち込ませる行為が商標権又は意匠権の侵害に当たる場合には、税関での取締りの対象となります。個人使用目的であることだけを理由に、当然に対象から外れるわけではありません。
出品者の情報を開示させることはできますか。
発信者情報の開示については、情報流通プラットフォーム対処法が要件を定めています。商品の販売が違法であるという主張だけでなく、掲載された情報の流通によって権利が侵害されたことが明らかといえるか、発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるかを検討することになります。あわせて、税関の認定手続を通じて輸入者に関する情報を得られる場合があります。
3年を過ぎると、それ以前の行為についての損害賠償も請求できなくなりますか。
不正競争防止法の適用除外は、3年を経過した商品の形態を模倣した商品の譲渡等について定められたものです。3年の経過前に行われた行為に関する損害賠償請求権が、それによって当然に消滅するわけではありません。対象となる行為の時期と、損害賠償請求権の消滅時効は、分けて確認することになります。
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