Crisis Management
社内不正・不祥事対応
役員・従業員による横領、キックバック、経費の不正請求、情報の持ち出しその他の背信行為・違法行為は、どれほど内部統制を整えた企業でも起こり得ます。重要なのは、発覚した後の対応です。対応の遅れや誤りにより、証拠散逸、被害拡大、労働紛争等の二次的な問題が生じることがあります。当事務所は、不正の兆候の段階から、調査、処分、被害回復、公表、再発防止に関する法的対応を支援します。デジタル・フォレンジック等の技術調査は外部専門事業者と連携し、独立した第三者委員会が必要となる場合には、利益相反と役割分担を確認した上で体制を設計します。
調査開始前に確認すること
- 通報・発覚時刻と確認済みの事実を記録し、情報共有先を限定する
- 調査対象者へ接触する前に、適法な範囲で客観証拠を保全する
- 通報者・被害申告者の秘密保持と不利益取扱い防止を徹底する
- 経営陣の関与・利益相反を確認し、適切な調査指揮者と報告先を決める
- 不正継続防止の暫定措置と、当局報告・適時開示等の期限を確認する
ご相談いただけること証拠保全と調査設計/処分・責任追及/公表・再発防止
お問い合わせフォームへ目次
1 想定される事案の類型
- 経理担当者・役員による横領、架空発注・水増し発注によるキックバックの受領
- 経費・出張費の不正請求、会社資産の私的流用
- 会計不正(売上の架空計上・原価付替え等の粉飾)
- 顧客情報・技術情報の持ち出し、競業行為、利益相反取引
- ハラスメント、データ改ざん・検査不正、法令違反行為の隠蔽
2 発覚の端緒と最初の判断
社内不正は、内部通報、内部監査、税務調査での指摘、取引先からの情報提供など、様々な経路で発覚します。この段階で最も重要なのは、①事案の重大性の仮評価(金額・期間・関与者の範囲・法令違反の有無)、②調査情報の機密性と共有範囲の管理、③証拠保全の3点です。
内部通報のすべてが公益通報者保護法上の「公益通報」に該当するわけではありませんが、法定の要件を満たす通報については、通報を理由とする解雇その他の不利益な取扱いが禁止されます。2026年12月1日施行の改正法(令和7年法律第62号)では、正当な理由のない通報者の探索や通報妨害が禁止され、公益通報を理由として労働者に対して行う解雇・懲戒に刑事罰が導入されるなど、保護が強化されます。法の保護要件に該当するかを問わず、通報者の秘密保持、不利益取扱いの防止、利益相反の排除に配慮して調査を進める必要があります。
3 初動対応――証拠保全と対象者への対応
(1)証拠の保全
対象者に調査の動きを察知されると、メールの削除、帳票の廃棄、口裏合わせなどにより立証が困難になります。ヒアリングに先立ち、メールサーバ・会計データ・入退室記録・貸与PCなどの客観証拠を適法な範囲で保全することが重要です。デジタル・フォレンジックにより、事案やデータの状態によっては、削除データの復元や改ざんの痕跡を確認できる場合があります。
もっとも、貸与PCや業務用メールの調査であっても、会社の調査権限が無限定に認められるわけではありません。就業規則・情報セキュリティ規程・モニタリング方針の内容と周知状況、調査目的との関連性、対象・期間・検索語の相当性、従業員のプライバシーや個人情報への配慮を確認します。私物端末や個人アカウントについては、アクセス権限や本人同意の要否を含め、特に慎重な対応が必要です。
(2)対象者の処遇
不正の継続・証拠隠滅を防ぐため、システムへのアクセス制限、担当業務の変更、自宅待機等を検討します。実施に当たっては、就業規則・雇用契約上の根拠、証拠隠滅や不正継続のおそれ、措置の範囲・期間、賃金の取扱いを確認し、必要性・相当性を定期的に見直します。調査中の自宅待機を当然に無給とすることはできません。
ハラスメント等の申告では、事実関係を迅速かつ正確に確認するとともに、申告者・被害者の安全確保、対象者との分離、相談者・行為者・調査協力者のプライバシー保護、相談・調査協力を理由とする不利益取扱いや二次被害の防止を検討します。
4 社内調査の設計と実施
(1)調査体制の選択
経営陣の関与、内部統制の有効性への疑義、社会的影響、会計・技術面の専門性等を踏まえ、社内調査、外部弁護士を含む調査委員会、独立した第三者委員会等から適切な体制を選択します。第三者委員会を設置する場合には、日本弁護士連合会「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」や日本取引所グループの「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」等を踏まえ、委員の選定過程を含めた独立性・中立性・専門性を確保することが重要です。経営陣が調査対象となる場合には、当該経営陣を調査体制・調査範囲・委員選任等の決定に、調査の独立性を損なう形で関与させないことが重要です。会社の機関設計に応じて、監査役、監査等委員、監査委員または独立社外取締役を中心に調査体制と一次的な報告先を設計します。
(2)ヒアリングの留意点
一般には、可能な範囲で客観証拠を保全・分析した上でヒアリングを行いますが、被害拡大防止や関係者保護のため早期聴取が必要となる場合もあります。聴取の順序・時期は、証拠隠滅の危険、関係者の安全、調査対象者への情報伝達の影響等を踏まえて設計します。対象者のヒアリングでは、対象者にも事実を説明し、弁明する機会を設けつつ、供述の変遷を記録化し、本人の自由な意思を確保した上で、供述内容を確認する書面を作成する場合があります。強圧的な取調べは、供述の証拠価値を損ない、別途の法的責任を生じさせるおそれがあるため、事案に応じて弁護士の関与を検討します。
5 懲戒処分・役員の責任追及
(1)従業員に対する懲戒処分
懲戒処分には、周知された就業規則上の根拠が必要であり、処分事由への該当性に加え、行為の性質・態様、被害、職責、過去の処分例、反省・弁償等の事情を踏まえた客観的合理性と社会通念上の相当性が求められます(労働契約法15条)。就業規則所定の手続や弁明の機会を適切に確保することも重要です。特に懲戒解雇は紛争化しやすく、退職金の取扱いも含め、裁判例を踏まえた慎重な検討が必要です。
(2)役員に対する対応
役員による不正では、役員の地位と会社の機関設計に応じて、代表取締役からの解職、取締役等の解任、辞任勧告等を検討します。取締役等の解任については、正当な理由がない場合の損害賠償リスク(会社法339条)にも注意が必要です。報酬の返還・減額、会社法423条に基づく損害賠償請求(任務懈怠責任)等については、それぞれの法的根拠と必要な機関決定を確認します。対応を怠った事情によっては、他の取締役についても監視・監督義務や内部統制体制に関する責任が問題となる場合があります。
6 刑事対応と損害の回収
(1)刑事対応
横領、キックバック、不正請求等については、財産の占有関係、担当者の権限、欺罔行為、図利加害目的、会社に生じた財産上の損害等を確認し、業務上横領、詐欺、背任、会社法上の特別背任等の成立可能性を検討します。情報の持ち出しについても、対象情報が不正競争防止法上の営業秘密に該当し、法定の侵害行為の要件を満たすかを確認します。刑事告訴・被害届については、犯罪成立の見通し、証拠の状況、被害の重大性、再発・被害拡大のおそれ、捜査への協力負担、公表への影響等を踏まえて判断します。刑事手続と民事上の損害の回収は目的・手続が異なるため、両者を区別しながら全体方針を検討します。
(2)損害の回収
不法行為、不当利得、契約責任等に基づく損害賠償・返還請求を検討し、必要性と疎明資料がある場合には仮差押え等の保全手続も検討します。資産散逸のおそれがある場合には、早期に保全手続の要件を検討することが重要です。身元保証人への請求については、2020年4月1日以後に締結された個人を保証人とする身元保証契約が、将来発生する不特定の債務を保証する個人根保証契約に当たる場合には、極度額の定めがなければ契約は効力を生じないため、契約の締結・更新時期、極度額、保証期間、身元保証法上の通知義務・責任制限等を確認する必要があります。退職金の不支給・減額や損害賠償債権との相殺も当然に認められるものではなく、退職金規程、退職金が労働基準法上の賃金に当たる場合の全額払い原則、本人の自由意思等を踏まえて判断します。
7 公表・当局対応と再発防止
上場会社では適時開示の要否、業規制のある会社では監督官庁への報告の要否を速やかに判断する必要があります。また、会計不正が過年度の決算に影響する場合には、訂正報告や監査人対応も必要となります。公表する場合の公表文・想定問答は、事実認定に裏付けられた正確なものとし、調査結果と整合させることが不可欠です。収束後は、原因分析に基づく内部統制・規程・通報窓口の見直し(改正公益通報者保護法への対応を含む)までを行います。
8 当事務所のサポート内容
- 不正の兆候・通報受領段階での初動助言、調査計画の策定、証拠保全に関する法的助言(デジタル・フォレンジック事業者との連携を含む)
- 社内調査・企業側調査委員会の支援、ヒアリングの実施、調査報告書の作成
- 独立性・利益相反を確認した上での第三者委員会の組成支援または委員就任
- 懲戒処分・役員責任追及の適法性検討と手続実施、労働紛争への対応
- 刑事告訴・被害申告の支援、保全手続・損害賠償請求による損害の回収
- 適時開示・当局報告・公表対応、メディア対応の支援
- 再発防止策の策定、内部通報体制(改正公益通報者保護法対応を含む)の整備
よくあるご質問
Q1 まず本人に事情を聞いてもよいでしょうか。
客観証拠の保全前に本人に接触すると、証拠隠滅や口裏合わせを招くおそれがあります。一般には、メール・会計データ等の保全と外形的な事実の整理を先行させ、ヒアリングは準備を整えてから行うことをお勧めします。ただし、被害の継続や関係者の安全に関わる場合には、証拠分析の完了を待たず、保護措置や早期聴取を行う必要があります。
Q2 警察に届け出る義務はありますか。
社内不正一般について、民間企業に警察への刑事告訴・被害届を一律に義務付ける法令があるわけではなく、警察へ申告するかは会社が判断します。ただし、事案や業種によっては、所管官庁への報告、適時開示、疑わしい取引の届出その他の法令上の義務が生じる場合があります。警察へ申告しない場合も、その判断過程を後から説明できるよう記録することが重要です。
Q3 不正をした従業員を直ちに懲戒解雇できますか。
不正の事実が認められるだけで、直ちに懲戒解雇できるとは限りません。周知された就業規則上の根拠、客観的に合理的な理由、社会通念上の相当性、所定の手続等を確認する必要があります。また、懲戒解雇であっても、予告・予告手当なしに即時解雇するには、原則として労働基準監督署長の解雇予告除外認定が必要です。なお、認定を受けても、解雇自体の有効性が保証されるわけではありません。事実認定と弁明の機会を確保し、事案に見合った処分を検討します。
Q4 不正をした従業員が退職してしまいました。もう責任追及はできませんか。
退職したことだけで、損害賠償・不当利得返還等の民事責任や刑事責任がなくなるわけではありません。証拠と犯罪成立の見通しに応じて、退職後も民事上の請求や刑事告訴・被害届を検討できます。一方、雇用関係の終了後に新たな懲戒処分を行うことは原則としてできません。未支給の退職金の不支給・減額や、支給済み退職金の返還請求も当然に認められるものではなく、退職金規程の定め、不正行為の重大性、法的根拠等を個別に確認する必要があります。消滅時効・公訴時効や証拠・資産の散逸にも注意し、早期に対応を検討することが重要です。
社内不正への対応は、労働法、会社法、刑事法、情報管理、開示規制等が交錯する対応です。早期のご相談が、証拠と対応の選択肢を確保するために重要です。まずは当事務所までご相談ください。
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まずはご相談ください
早期のご相談が、対応の選択肢を確保するために重要です。
お問い合わせフォームへ本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に関する法的助言ではありません。具体的な対応については、当事務所までご相談ください。記事の内容は最終更新日時点の法令等に基づいています。
