M&A & Business Succession

M&A仲介・FAの手数料・契約を巡る紛争

M&A仲介・FAとの契約では、成功報酬の発生条件・算定方法、契約終了後の報酬請求、説明内容や業務の範囲を巡って認識の相違が生じることがあります。

契約書と業務経過を確認し、報酬請求の根拠と、説明義務違反等による責任の有無を分けて検討する必要があります。

当事務所は、ご依頼者の立場に応じた契約確認、交渉・紛争対応を支援します(個別の事案では、いずれか一方の立場でお受けします)。

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まず確認すること

以下は、ご相談の際に分かる範囲で共有いただきたい事項です。未定の事項がある段階や、資料がそろっていない段階でもご相談いただけます。

  1. 契約書と付属書面――契約の名称と実質、契約の当事者、報酬の定め、専任やテールに関する条項を確認します。
  2. 請求の内容――請求書に記載された算定の基礎と計算過程、請求の時期を確認します。
  3. 業務の経過――紹介を受けた相手方、面談や資料提供の記録、交渉の経過が分かる資料を整理します。
  4. 終了の経緯――契約を終了させた、または終了させたい場合は、その理由と時期、相手方への連絡の内容を確認します。

報酬請求の根拠と、説明や業務の内容を巡る責任は、分けて整理したうえで検討します。

ご相談いただけること契約条項の確認/報酬の算定根拠の検証/専任・テール条項の検討/契約終了と中途終了時の報酬/説明・情報提供を巡る責任/交渉・訴訟への対応

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目次
  1. 1 契約・請求・業務経過の確認
  2. 2 成功報酬の発生条件と算定方法
  3. 3 契約の終了とテール条項
  4. 4 説明義務・利益相反・責任制限
  5. 5 報酬請求・返還請求・損害賠償への対応
  6. よくあるご質問

1 契約・請求・業務経過の確認

支援機関との間で報酬を巡る対立が生じたとき、最初に確認するのは、締結された契約が何を定めているかです。「仲介契約」「アドバイザリー契約」「フィナンシャル・アドバイザリー契約」など名称はさまざまですが、名称よりも、当事者の双方を支援する形になっているのか、一方の当事者のためにのみ助言を行う形になっているのかという実質が重要です。双方を支援する形態では、利益が相反する場面がどのように処理されているかを併せて確認します。

契約の当事者が誰かという点も、しばしば見落とされます。株式を譲渡するのは株主個人であるのに、契約は会社との間で締結されている、あるいはその逆、という例があります。報酬を誰に請求できるのか、誰が支払義務を負うのかは、この点から検討することになります。

契約の内容としては、業務の範囲、専任とする定めの有無、契約の期間、中途で終了させる場合の手続、報告に関する定めを確認します。報酬については、着手金、一定期間ごとに支払う報酬、基本合意の時点で支払う報酬、成約時の報酬といった区分がそれぞれ定められていることが多く、どの報酬について争いがあるのかを特定します。

併せて、業務の経過を時系列で整理します。提示された候補先の一覧、個別の候補先を紹介した時期とその方法、面談や資料提供の記録、意向表明書や基本合意書の授受、依頼企業自身が持っていた情報との関係です。とくに、後に述べる契約終了後の報酬が問題となる場面では、どの候補先を、いつ、誰が紹介したのかが決定的な意味を持ちます。

なお、中小企業のM&Aを支援する事業者については、国の補助事業と関連して登録の制度が設けられています。相手方が登録を受けているかどうかは確認する価値がありますが、登録の有無だけで契約の効力や報酬請求の可否が決まるわけではありません。もっとも、登録を受けていることが契約上の条件とされている場合や、登録の状況について事実と異なる説明がされていた場合には、別に検討する必要があります。

2 成功報酬の発生条件と算定方法

成功報酬については、まず、何をもって「成約」とするのかを確認します。基本合意の締結を基準とする定め、最終契約の締結を基準とする定め、クロージングの完了を基準とする定めがあり、どれを採用しているかによって、取引が途中で頓挫した場合の結論が変わります。最終契約を締結したもののクロージングに至らなかった場合の扱いが、契約に書かれていないこともあります。

次に、算定の基礎です。譲渡された株式の対価を基礎とする定めもあれば、対象会社の負債や役員借入を含めた金額を基礎とする定めもあります。段階的に料率を下げていく方式が用いられることが多く、どの金額にどの料率を適用するのかによって、結果に大きな差が生じます。最低報酬額が定められている場合には、料率による計算額がその金額を下回るときに、下限として最低報酬額が適用されるのが通常です。報酬が発生する条件を満たしているかという問題と、最低報酬額の定めが適用される場面かという問題は、分けて確認します。

取引の方法が当初の想定から変わった場合の扱いも問題になります。株式譲渡を前提としていたところ、事業譲渡や会社分割の方法が採られた場合、株式の一部のみが譲渡された場合、段階的に譲渡が行われた場合に、契約の定めがそのまま当てはまるかを確認します。

報酬の負担者についても確認が必要です。双方を支援する形態では、譲り渡す側と譲り受ける側の双方から報酬を受けることが定められていることがあります。この場合、それぞれの契約がどのような内容になっているか、自社が負担すべき範囲がどこまでかを確認します。

なお、当事務所は、企業価値・事業価値・株式価値の算定自体を行うものではありません。報酬の算定基礎に関する争いにおいて評価が必要になる場合には、会計・評価の専門家と連携して対応します。報酬額が契約の定めに照らして過大ではないか、説明された内容と整合しているかといった法的な検討は、当事務所が担当します。

3 契約の終了とテール条項

報酬を巡る対立は、契約を途中で終了させたい、あるいは終了させた後に起こることが少なくありません。まず確認するのは、契約をどのような場合に終了させることができるかです。期間満了のほか、一定の予告期間を置いた解約、相手方の債務不履行を理由とする解除の定めが置かれていることがあります。専任とする定めがある場合には、期間中に他の支援機関に依頼したり、自ら相手方と交渉したりすることが制限されていないかも確認します。

契約が委任または準委任に当たると評価される場合には、法律上、各当事者がいつでも解除できるとされている規律との関係も検討することになります。契約でこれを制限する特約が置かれている場合に、その特約がどこまで効力を持つかは、契約の内容と解除の事情によります。また、中途で終了した場合に、それまでの業務について報酬や実費を請求できるかどうかも問題になります。成功報酬を中心とする契約では、費やした作業量に比例して報酬が当然に発生するという関係にはなく、契約の定めに沿って検討することになります。もっとも、報酬の対象となる成果の可分な部分が既に提供され、依頼企業がその部分から利益を受けている場合には、契約内容を踏まえ、利益の割合に応じた報酬を請求できるかを別に検討します。損害賠償にも注意が必要です。法律上いつでも解除できるとされている場合であっても、相手方に不利な時期に解除したときは、やむを得ない事由があった場合を除き、解除した側が相手方に生じた損害を賠償しなければならないとされています。解除ができることと、解除しても負担が生じないこととは、別の事柄です。

もう一つ、契約終了後に問題となるのが、いわゆるテール条項です。支援機関との契約が終了した後に、依頼企業が別の経路で相手方を見つけて取引を成立させた場合に、終了した契約に基づいて報酬を請求されることがあります。契約終了後の一定期間内に成約した場合に報酬が発生するという定めによるものです。

この場面での争点は、おおむね次の点に整理できます。第一に、対象となる相手方が特定されているかです。支援機関が関与し、実際に紹介した候補先に限られるのか、契約期間中に何らかの形で接触があった相手方すべてに及ぶのかによって、結論が変わります。候補先の一覧が書面で交付され、依頼企業がそれを確認していたかどうかも意味を持ちます。

第二に、期間です。契約終了からどれだけの期間が対象とされているか、その起算点が終了の時点なのか通知の時点なのかを確認します。

第三に、対象となる取引の範囲です。株式の譲渡に限られるのか、資本提携や業務提携、資産の譲渡まで含むのかは、条項の書き方によります。

第四に、支援機関が当該取引にどの程度関与したかです。ここは注意を要します。契約終了後の報酬を定める条項は、終了後に支援機関が関与しなくても報酬を発生させる趣旨で設けられていることがあります。したがって、終了後の交渉に関与していないというだけで、報酬が発生しない、あるいは減額されるとは限りません。他方で、その条項が、紹介と成約との結び付きや、終了後の関与について何らかの要件を定めている場合には、関与の程度が争点になります。条項が何を要件としているかを確認することが出発点になります。

対象となる相手方についても、候補先として紹介された会社と、実際に買収の主体となった会社とが異なる場合があります。紹介先の子会社や、買収のために設立された会社が取得者となった場合に、条項の対象に含まれるかは、書き方によって結論が分かれます。

中小企業のM&Aについては、中小企業庁が「中小M&Aガイドライン」を公表しており、契約終了後の報酬に関する定めについても、対象や期間を適切に設定すべきことが示されています。もっとも、これは法令ではなく、ガイドラインの内容に沿っていないことが直ちに報酬請求を否定する結論に結び付くわけではありません。他方で、契約の中でガイドラインの遵守が義務として取り込まれている場合には、契約上の義務の問題として別に検討することになります。反対に、契約に定めがあるからといって、期間内の成約であれば常に報酬が発生すると当然に言えるわけでもありません。条項の解釈として、対象となる相手方と取引の範囲をどのように読むかが問題になります。

4 説明義務・利益相反・責任制限

支援機関が負う義務の内容は、契約の性質によって異なります。一方当事者のために助言を行う契約と、双方の間に立って成約を支援する契約とでは、期待される役割が異なりますし、同じ名称の契約でも、業務の範囲として何が定められているかによって違いが生じます。したがって、すべての支援機関に一律の義務があるという前提で検討することはできません。

実務上、説明が不十分であったと主張されやすいのは、報酬の体系と算定基礎、専任とする定めの効果、契約終了後の報酬に関する定め、他の候補先の存在や条件、取引の方法を変更した場合の影響といった点です。これらについて、いつ、どのような資料を用いて説明がされたのかが争点になります。

双方を支援する形態には、利益が相反する構造があります。一方の当事者にとって有利な条件は、他方にとっては不利になり得るためです。この形態自体が直ちに違法となるものではありませんが、双方から報酬を受けることや、交渉の過程で得た情報の取扱いについて、契約でどのように定められ、どのように説明されていたかは確認する必要があります。

契約には、責任の範囲を限定する定めや、受領した報酬の額を上限とする定めが置かれていることがあります。確認するのは、その条項がどの範囲の請求を対象としているか、故意または重大な過失がある場合を除く定めが置かれているか、請求について通知の期限が定められているかといった点です。条項があるからといって、あらゆる請求について当然に上限が適用されるとは限りません。

なお、説明が不十分であったという評価が得られたとしても、それによって報酬の全額が当然に返還や賠償の対象になるわけではありません。義務の違反があったといえるか、それによってどのような損害が生じたか、その間に因果関係があるかという問題と、報酬債権そのものが発生しているかという問題は、別に検討する必要があります。

なお、支援機関の責任と、取引の相手方である売主・買主の責任とは、別のものです。表明保証違反の責任を売主に問う場面と、支援機関の説明を問題とする場面は、要件も相手方も異なります。売主の責任については、M&Aの表明保証違反と補償請求をご覧ください。

5 報酬請求・返還請求・損害賠償への対応

請求を受けた側の対応としては、まず、請求の根拠となる条項と、請求額の算定過程の開示を求めることが出発点になります。算定基礎とされた金額の内訳、適用された料率、消費税の扱いを確認し、契約の定めと照合します。支払を留保する場合には、その理由を明確にしたうえで、遅延損害金の負担も踏まえて判断します。

すでに支払った報酬の返還を求める場合には、どのような構成によるかを検討します。契約上の根拠を欠く支払であったと主張するのか、説明が不十分であったことを理由に損害の賠償を求めるのかによって、主張すべき事実が異なります。

請求する側の立場でも、検討する事項は共通しています。契約の文言、業務の経過を示す記録、報告の実績、成約に至るまでの関与の内容を、資料に基づいて示せるかどうかが重要になります。候補先の紹介については、書面による通知や受領の確認が残っているかが結論を分けることがあります。

証拠としては、契約書とその変更に関する書面、提案資料、候補先の一覧、メールのやり取り、面談の記録、支払に関する記録が中心になります。契約の解除や終了の通知については、方法と時期が定められていることが多く、その履践の有無も確認します。

支援機関との紛争は、売主・買主の間の紛争と並行して生じることがあります。それぞれの手続で主張する内容に食い違いが生じないよう、全体を見たうえで方針を決める必要があります。

よくあるご質問

Q1 M&Aが成立しなくても報酬は発生しますか。

契約の定めによります。着手金や一定期間ごとに支払う報酬は、成約の有無にかかわらず発生するものとして定められていることが一般的です。成功報酬については、何をもって成約とするかの定めを確認します。基本合意の時点を基準とする定めであれば、その後に取引が頓挫しても報酬が発生すると解される場合があります。他方、費やされた作業量に比例して報酬が当然に発生するという関係にはありません。

Q2 仲介契約を途中で終了させることはできますか。

契約の定めをまず確認します。期間満了のほか、予告期間を置いた解約や、債務不履行を理由とする解除の定めが置かれていることがあります。契約が委任または準委任に当たると評価される場合には、法律上いつでも解除できるとされている規律との関係も検討します。終了までの業務についての報酬や実費のほか、解除した側が相手方の損害を賠償することになる場合もありますので、終了の時期と方法も併せて検討します。

Q3 仲介契約が終了した後の成約にも報酬が発生しますか。

契約終了後の一定期間内の成約について報酬が発生する旨の定めが置かれていることがあります。もっとも、期間内に成約したというだけで常に報酬が発生するわけではなく、対象となる相手方や取引の範囲が条項でどのように定められているか、その相手方を実際に紹介したのが支援機関かどうかを確認する必要があります。

Q4 報酬の算定基礎が説明と違う場合はどうすればよいですか。

まず、契約の条項がどのように定めているかを確認します。契約の文言と説明の内容が食い違っている場合には、いつ、どのような資料で説明がされたのかを示す資料を整理します。算定基礎に関する争いで企業価値や事業価値の評価が必要になる場合には、評価の専門家と連携して対応します。

Q5 双方から報酬を受けること自体が違法ですか。

双方を支援する形態が直ちに違法となるものではありません。もっとも、利益が相反する構造があることは事実ですので、双方からの受領について契約でどのように定められ、どのように説明されていたか、交渉の過程で得た情報がどのように扱われていたかは確認する必要があります。

Q6 説明が不十分だった場合、報酬の返還を求められますか。

説明が不十分であったという評価が直ちに報酬の全額の返還に結び付くわけではありません。義務の違反、損害、因果関係という問題と、報酬債権そのものが発生しているかという問題は別です。契約上の根拠を欠く支払であったと主張するのか、損害の賠償を求めるのかによって、主張すべき事実が異なります。責任の範囲を限定する条項が置かれている場合には、その対象範囲や例外の定めも確認します。

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本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に関する法的助言ではありません。具体的な対応については、当事務所までご相談ください。記事の内容は最終更新日時点の法令等に基づいています。