Regulatory Compliance

効果・性能表示の根拠資料と不実証広告規制

商品・サービスの効果や性能を訴求する表示について、消費者庁や都道府県は、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができます(7条2項)。会社が保有する試験の結果や文献、メーカーの資料が、その広告の表現を支えるものになっているかを、広告との関係で評価しておくことが大切です。

不実証広告規制に関する指針は、提出資料が客観的に実証された内容のものであることと、表示された効果・性能と資料によって実証された内容が適切に対応していることの二つを、合理的な根拠の判断基準としています。試験の結果が存在することだけで、その広告の表現を裏付けられるとは限りません。

当事務所は、広告と資料との対応関係の確認、資料の不足や評価上の問題の整理、資料の提出を求められた場合に備えた準備を支援します。

監修:吉川 景司(弁護士・弁理士/第一東京弁護士会)

最終更新日:

まず確認すること

以下は、効果・性能の表示を審査する際に、会社が確認しておきたい事項の例です。

  1. 表示の全体――掲載予定・掲載中の広告について、文章、画像、動画、体験談、注記を含めた表示の全体を把握します。
  2. 裏付けが必要な主張――効果・性能の主張を、対象者、使用の条件、効果の程度、効果が現れるまでの期間などに分けて整理します。
  3. 主張に対応する資料――各主張に対応する試験の報告書、文献、メーカーの資料があるか、いつ入手・作成したものかを確認します。
  4. 試験の内容――試験の方法、対象の数、比較の対照、測定の項目、集計の方法、結果のばらつきを確認します。
  5. 試験の対象と販売する商品――試験の対象と販売する商品とで、型番、仕様、成分、配合量、使用の方法などに違いがないかを確認します。
  6. 試験の条件と広告の場面――試験の条件と、広告から想定される使用の環境・対象者・使用の期間とが対応しているかを確認します。
  7. 資料の入手と照会先――資料の全文や付属の資料を取得できるか、メーカーや試験機関への照会先が分かるかを確認します。
  8. 既に受けている要求――資料の提出要求や開示の要請を受けている場合は、その発信者、根拠となる条文、対象の表示、期限を区別して把握します。

資料の提出を求められてから準備できる期間は限られているため、表示の前に確認しておくことが考えられます。

ご相談いただけること表示と資料の対応の確認/試験・調査の方法の評価/資料の不足の整理/資料提出要求への備え/メーカー・試験機関への確認

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目次
  1. 1 何を、どの資料で裏付けるか
  2. 2 資料が、客観的に実証された内容のものか
  3. 3 表示された効果・性能と、実証された内容が対応しているか
  4. 4 資料の提出を求められた場合への備え
  5. よくあるご質問

1 何を、どの資料で裏付けるか

広告が伝えている効果・性能を整理する

裏付けを検討する前提として、その広告が一般消費者に何を伝えているかを整理します。文言だけでなく、画像や体験談、注記を含めた表示の全体から、対象者、使用の条件、効果の程度、効果が現れるまでの期間などに分けて主張を書き出します。広告が何を伝えているかの判断については、「広告の表示内容の判断と強調表示・打消し表示」で解説しています。

不実証広告規制の対象と、資料の提出期限

不実証広告規制の対象となるのは、優良誤認表示(5条1号)に当たるかが問題となる、商品・サービスの内容に関する表示です。資料の提出の期間は、期間内に提出しないことについて正当な事由があると認められる場合を除き、提出を求める文書を交付した日から15日を経過する日までとされています(施行規則7条2項)。また、新たな又は追加的な試験・調査を実施する必要があることは、期限を延長する正当な事由とは認められないとされています。このため、会社は、表示を行う時点で、どの資料で裏付けるかを確認しておくことが考えられます。

主張と資料を対応させて整理する

当事務所では、主張ごとに、対象となる商品、裏付けとする資料、資料で実証されている範囲、確認できていない事項を一覧にして整理する方法をお勧めしています。

2 資料が、客観的に実証された内容のものか

試験・調査の方法

指針は、客観的に実証された内容のものとして、試験・調査によって得られた結果と、専門家・専門家団体・専門機関の見解又は学術文献を挙げています。試験・調査の方法は、表示された効果・性能に関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法、又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施する必要があるとされています。

対象の数、比較の条件、集計の方法

主張する効果に応じて、対象の数、比較の対照とする条件、測定と集計の方法が適切かを検討します。指針は、一般的に認められた方法等が存在しない場合には、試験・調査は社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施する必要があるとしています。会社は、人数だけでなく、対象者の選び方、対照の条件、評価の項目、解析の方法が、広告の主張に対応しているかを確認します。

専門家の見解・学術文献・体験談

消費者の体験談やモニターの意見を実証の資料とする場合には、無作為抽出法で相当数のサンプルを選定し、作為が生じないように考慮して行うなど、統計的に客観性が十分に確保されている必要があるとされています。好意的な体験談を集めただけでは、客観的に実証された資料とはいえないと考えられます。

社内の試験と、メーカーの資料

指針は、一般的に認められた方法等で実施されている限り、事業者自身(その関係機関を含みます)が行った試験・調査であっても、表示の裏付けとなる根拠として提出することが可能であるとしています。販売業者については、自ら実証試験を行うことが常に求められるものではなく、製造業者等の試験のデータ等が存在するか、その方法・結果の客観性等を販売業者が自ら確認したことを示す書面等を提出することも可能であるとされています。メーカーから「効果がある」と説明を受けたことだけで足りるとは限らないため、会社は、試験の報告書と方法・結果を確認し、その記録を残しておくことが考えられます。

3 表示された効果・性能と、実証された内容が対応しているか

試験の対象と、販売する商品との違い

指針は、表示された効果・性能が資料で実証された内容と適切に対応していなければ、その資料は合理的な根拠を示すものとは認められないとしています。原料や部品、試作品についての試験の結果を、完成品の効果として表示する場合には、配合量、構造、使用の方法などの違いが、実証された内容にどう影響するかを検討します。健康食品については、消費者庁の留意事項が、成分に関する一般的な記述にすぎない論文や、被験者の摂取量と商品の含有量が著しく乖離している論文を、商品の効果を実証するものではなかった例として挙げています。原料・部品の試験結果が、販売する完成品について表示した効果まで裏付けるかは、配合量・構造・使用の条件などを踏まえ、個別に検討する必要があると考えられます。

使用の環境・対象者・使用の期間

指針は、試験用のアクリルケースの中での一時的な回避行動を実証しただけでは、実用的な害虫駆除の効果を実証するものではない、といった例を挙げています。実験室の条件、対象者の属性、使用の量・回数・期間と、広告が想定する実際の利用の場面とが対応しているかを確認します。短期間の試験で、表示した長期間の使用での効果まで裏付けられるかは、試験の観察期間、効果の発現・持続及び使用の条件との関係から、個別に検討する必要があると考えられます。

測定した指標と、訴求する効果

ある測定値が変化したことが、広告で訴求する最終的な効果まで裏付けるものかは、分けて検討します。

数値や比較の結果を一般化できる範囲

特定の条件での結果、平均値、最大値、比較の対象を整理し、資料の範囲を超えて効果や対象を広げていないかを確認します。会社は、主張ごとに、どの資料が何を示し、どの部分が実証されないまま残るかを整理します。管理措置指針の別添は、表示等に影響を与え得る商品・役務の内容の変更を行う場合に、担当部門が速やかに表示等の担当部門へ情報を伝達することを、情報の共有の例として挙げています。仕様を変更した場合、会社は、変更した箇所を従前の試験の条件と照合し、既存の資料で説明できる部分と、追加の確認が必要な部分とを分けます。

4 資料の提出を求められた場合への備え

措置命令の「みなし」と、課徴金の「推定」

期間内に、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を提出しないときは、措置命令との関係では優良誤認表示とみなされ(7条2項)、課徴金納付命令との関係では優良誤認表示と推定されます(8条3項)。「みなし」と「推定」とでは効果が異なるため、会社は、どちらの手続に基づく提出要求かを確認します。

会社が整理しておく資料と、説明の内容

当事務所は、表示ごとの資料の一覧、試験の条件、実証された範囲とその限界、メーカーや試験機関への確認の記録を整理する支援を行います。

適格消費者団体からの開示要請

適格消費者団体から、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の開示を要請されることもあります(35条1項)。この要請は当局の資料提出要求とは別の制度ですが、対象となるのは同じく表示の裏付けとなる資料であり、資料の内容の評価が問題となります。要請への回答や当局の手続への対応は、「景品表示法の違反指摘・自主是正・行政対応」で解説しています。

不実証広告規制の運用の見直しについて

不実証広告規制の運用については、政府の規制改革実施計画(2026年7月21日閣議決定)で、消費者庁が、事業者や一般消費者等の意見を幅広く聴いたうえで、不実証広告規制に関する指針の改正などを含めて次の事項を検討し、2027年度に結論を得ることとされています。一つは、資料の提出を求める時点とそれに先立つ調査の時点で、表示から一般消費者が受ける印象・認識についての消費者庁の考え方を、可能な限り書面で事業者に説明することです。もう一つは、措置命令の際に、提出された資料が合理的な根拠を示す資料に当たらないと認定した理由を具体的に説明し、営業秘密に配慮しつつ公表することです。

このページは、2026年9月時点の指針と運用に基づいています。指針の改正などが公表された場合は、その内容を確認して更新します。

よくあるご質問

第三者機関の試験でなければ、根拠として使えませんか。

指針は、一般的に認められた方法等で実施されている限り、事業者自身や関係機関が行った試験・調査であっても、根拠として提出することが可能であるとしています。第三者機関の試験であっても、表示された効果・性能との対応は別に検討する必要があります。

メーカーから「効果がある」と説明を受けていれば足りますか。

販売業者が、メーカーの試験データの存在や、その方法・結果の客観性等を自ら確認したことを示す書面等を提出する方法が示されています。説明を受けたことだけで足りるとは限らないため、報告書等を確認し、その記録を残しておくことが考えられます。

成分に関する論文を、その商品の効果の根拠にできますか。

学術文献は客観的な実証の資料となり得ますが、論文が対象とする成分の量、使用の条件、評価の項目と、実際の商品・表示とが対応しているかが問題となります。成分についての知見が、そのまま完成品の効果を裏付けるとは限りません。

体験談やモニターの感想を集めれば、効果を裏付けられますか。

体験談やモニターの意見を実証の資料とする場合には、無作為抽出法で相当数のサンプルを選定するなど、統計的に客観性が十分に確保されている必要があるとされています。

資料の提出を求められてから試験をすることで、期限を延ばしてもらえますか。

新たな又は追加的な試験・調査を実施する必要があることは、期限を延長する正当な事由とは認められないとされています。

表示の根拠として、どの資料を残しておけばよいですか。

試験・調査の報告書(方法、対象、条件、結果が分かるもの)、文献の全文、メーカーの資料とその内容を確認した記録、主張と資料との対応を整理した一覧などを残しておくことが考えられます。管理措置指針も、表示等の根拠となる情報を事後的に確認するための措置として、資料の保管等を挙げています。

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ご相談にあたって

広告案と、裏付けとする資料(試験報告書、文献、メーカーの資料など)、資料の提出要求を受けている場合はその文書と期限を、分かる範囲でお知らせください。

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本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に関する法的助言ではありません。具体的な対応については、当事務所までご相談ください。記事の内容は、最終更新日の時点で施行されている法令等に基づいています。施行前の改正法を取り上げる場合は、本文にその旨を示しています。