Regulatory Compliance
景品表示法への対応
新商品の広告で効果をどこまでうたえるか。セール価格の比較の仕方に問題はないか。インフルエンサーに依頼した投稿に、何を表示してもらうべきか。景品表示法に関するご相談は、広告や販売促進の企画の段階から寄せられます。景品表示法は、商品・サービスの取引に関連する不当な表示と、過大な景品類の提供を規制しています。
一つの企画に、表示の規制と景品の規制の両方が関係することもあります。公開前であれば広告案と裏付けとなる資料・実施の条件を、公開後に疑義が生じた場合には掲載の状況・指摘の内容・回答の期限を整理することが、検討の出発点になります。このページでは、問題の種類と段階に応じて、詳しく解説したページをご案内します。
当事務所は、企業の法務・マーケティング部門や経営層からのご相談について、関係する規制の整理、広告案・企画の検討、問題が判明した後の是正と行政対応を支援します。
監修:吉川 景司(弁護士・弁理士/第一東京弁護士会)
まず確認すること
以下は、会社が最初に確認しておきたい事項の例です。分かる範囲で整理いただければ、ご相談の際にも検討を進めやすくなります。
- 対象と取引の相手方――対象となる商品・サービス、販売の方法、取引の相手方が一般消費者か事業者かを確認します。
- 企画の段階と判断の期限――公開前・公開中・終了後のどの段階にあり、いつまでに判断が必要かを確認します。
- 対象となる表示の一式――ウェブサイト、SNSの投稿、動画、商品の容器・包装、チラシ、店頭の掲示など、実際に使用する表示をまとめて把握します。
- 広告で伝えようとしている内容――効果・性能、価格・割引、順位・満足度、原産国など、広告が訴求している点を書き出します。
- 裏付けとなる資料――試験の結果、販売の履歴、調査の結果、製造工程の記録など、訴求内容を支える資料の有無と所在を確認します。
- 表示した条件と実際の運用――割引・無料・定期購入・景品の提供について、表示した条件と実際の販売・提供の方法が一致しているかを確認します。
- 外部の関与――広告代理店、販売店、インフルエンサー等が関与している場合、依頼の内容と、表示の内容を誰が決めたかを確認します。
- 指摘の有無と期限――社内外から疑義や指摘が出ている場合、指摘をした者、対象となる表示、受領した文書、回答の期限を確認します。
いずれも会社が行う確認の例です。すべてがそろっていない段階でも、検討を始めることができます。
ご相談いただけること関係する規制の整理/広告案・企画の検討/裏付け資料の確認/表示管理体制の整備/問題が判明した後の是正/当局・消費者団体への対応
お問い合わせフォームへ目次
1 自社の広告・販売促進に関係する規制を整理する
景品表示法が規制する二つのもの
景品表示法は、事業者が自己の供給する商品・サービスの取引について、不当な表示をすることを禁止しています(5条)。また、景品類の価額の最高額・総額、種類、提供の方法などを制限し、又は景品類の提供を禁止することができるとされています(4条)。この規定に基づき、くじ等の方法による景品類の提供(懸賞)と、一般消費者に対して懸賞によらずに提供する景品類(いわゆる総付景品)について、それぞれ告示で上限が定められています。
ここでいう「表示」は、顧客を誘引するための手段として事業者が行う広告その他の表示で、内閣総理大臣が指定するものをいいます(2条4項)。指定の告示では、商品の容器・包装、チラシ・パンフレット、ポスター・看板、新聞・雑誌・放送による広告、インターネット等による広告その他の表示などが挙げられています。
表示の規制――内容・取引条件・指定された表示
表示の規制は、商品・サービスの品質、規格その他の内容について、実際のもの等よりも著しく優良であると示す表示(優良誤認表示)、価格その他の取引条件について、実際のもの等よりも著しく有利であると誤認される表示(有利誤認表示)、そして内閣総理大臣が指定する表示の三つに分かれています(5条1号〜3号)。指定された表示には、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示(いわゆるステルスマーケティング)や、商品の原産国に関する不当な表示などがあります。
取引の相手方と、規制が及ぶ範囲
表示の規制は、一般消費者に対する誤認を問題とするものです(5条)。景品の規制では、くじなどの方法による懸賞は、提供の相手方が事業者であっても規制の対象となるとされています(消費者庁「景品に関するQ&A」Q56)。これに対し、懸賞によらない提供は、一般消費者向けのものが総付景品として規制され、事業者向けのものには原則として適用されないとされています(同Q56)。
消費者庁は、一般消費者に供給される製品の部品等を、その製品の製造業者に供給する事業者についても、その表示が一般消費者の目にも触れ、直接的に一般消費者に誤認を生じさせ得るときなどには、一般消費者向けの表示を行っているものとして、22条の管理上の措置を講じることが求められるとしています(指針に関するQ&A Q3)。会社は、「事業者向け」という位置付けだけで判断せず、商品の用途、表示が届く相手、販売の方法を確認します。
原産国の表示を確認するとき
景品表示法は、商品の原産国を必ず表示するよう義務付けているわけではないとされています(消費者庁「表示に関するQ&A」Q32)。他方で、国内で生産された商品に外国の国名・国旗や外国の文字を用いるなど、その商品がどこで生産されたかを一般消費者が判別することが困難となる表示は、告示により不当表示とされています。
告示でいう「原産国」は、その商品の内容について実質的な変更をもたらす行為が行われた国をいい、衣料品などについては運用細則で具体的な工程が示されています。運用基準は、ラベルを付けること、容器に詰め又は包装すること、単に詰め合わせ又は組み合わせること、簡単な部品の組立てをすることは、実質的な変更をもたらす行為に含まれないとしています(第十項)。運用細則に工程が挙げられていない商品では、会社は、各国で行った工程と、加工の前後で商品がどう変わったかを整理します。また、食品については、食品表示基準で原料原産地名など原産地に関する表示事項が定められており、景品表示法とは別に確認が必要です。
2 広告で訴求する内容から、確認する事項を選ぶ
価格・割引・無料・期間限定を訴求する場合
「通常価格から半額」「初回無料」「今月限定」などの訴求では、比較の基準となる価格の根拠、適用される条件、実施の期間と、実際の取引との対応が問題となります。過去の販売価格を比較の基準とする場合の考え方などは、「価格・割引・無料・期間限定表示の審査」で解説しています。
強調した表現と、注記の関係を検討する場合
大きく強調した表現と、条件や例外を示す注記(打消し表示)とがある場合には、注記の文字の大きさや配置などから一般消費者がそれを認識できるか、また内容を理解できるかが問題になるとされています。強調表示と打消し表示の考え方は、「広告の表示内容の判断と強調表示・打消し表示」で解説しています。
効果・性能をうたう場合
効果・性能の表示について、消費者庁や都道府県は、期間を定めて、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、提出されないときは、措置命令との関係では優良誤認表示とみなされます(7条2項)。どのような資料が合理的な根拠といえるか、提出を求められた場合にどう備えるかは、「効果・性能表示の根拠資料と不実証広告規制」で解説しています。
No.1・比較・満足度を訴求する場合
「売上No.1」「安さ第1位」などの表示は、合理的な根拠に基づかず、事実と異なる場合には、不当表示として問題になるとされています(消費者庁「表示に関するQ&A」Q27)。調査の対象・方法や比較の範囲の確認については、「No.1・比較広告・満足度表示の審査」で解説しています。
3 販売促進の方法と、表示の管理体制を確認する
インフルエンサー・口コミを利用する場合
事業者の表示であるにもかかわらず、一般消費者がそのことを判別することが困難な表示は、2023年10月1日から、景品表示法上の不当表示として指定されています(令和5年内閣府告示第19号)。第三者の投稿のように見えても、事業者が表示内容の決定に関与したと認められる場合には、事業者の表示に当たるとされています(同告示の運用基準)。依頼の仕方や表示の方法については、「ステマ規制とインフルエンサー・口コミ広告への対応」で解説しています。
景品・懸賞・キャンペーンを実施する場合
取引に付随して提供する物品や金銭その他の経済上の利益は、景品類に当たる場合があります(2条3項)。くじなどの偶然性や優劣で提供の相手方や額を定める懸賞か、それ以外の総付景品かによって、上限の定め方が異なります。また、実際の当選者数が告知した当選者数に満たない場合などは、取引条件に関する不当表示となるおそれがあるとされており、上限額とは別に、景品の内容や応募の条件の表示も確認が必要です(消費者庁「景品に関するQ&A」Q87)。企画の分類と上限額の考え方は、「景品・懸賞・キャンペーンの審査」で解説しています。
社内の審査と、外注先の管理を整える場合
事業者は、景品類の提供や表示を適正に管理するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならないとされています(22条1項)。講ずべき措置については内閣総理大臣が指針を定めており、事業者の規模や業態等に応じて必要な措置の内容は異なるとされています。審査の進め方や、広告代理店・アフィリエイター等の外注先の管理は、「広告審査の進め方と表示管理体制・外注管理」で解説しています。
4 疑義・指摘への対応と、関連する法令を整理する
社内で問題が見つかった場合
表示と実際の商品・取引の内容とが食い違っていることが社内で判明した場合、会社は、対象となる表示と掲載の範囲、食い違いの内容、表示を続けるかどうかを確認し、是正の検討に着手することになります。
不当表示に当たるかどうかについては、表示の内容の決定に関与した事業者に故意又は過失があることは要しないとされています(消費者庁「表示に関するQ&A」Q2)。一方、課徴金については、表示が不当表示に当たることを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠った者でないと認められる場合には、納付を命ずることができないとされており、事業者の認識や注意の程度が問題となります(8条1項ただし書)。
消費者庁・都道府県や、消費者団体から連絡を受けた場合
消費者庁や都道府県からの報告の求め・資料の提出要求、適格消費者団体からの資料開示の要請や差止めの請求など、連絡の相手方と根拠によって、回答の期限や法的な効果が異なります。自主的な是正から、当局の調査、確約手続、課徴金、適格消費者団体への対応までは、「景品表示法の違反指摘・自主是正・行政対応」で解説しています。
他の法令も関係する場合
医薬品・化粧品等の広告や医療機関の広告については、景品表示法に加えて、薬機法・医療法の規制が及びます。これらは「薬機法・医療広告規制への対応」で解説しています。通信販売の広告や申込みの画面については特定商取引法に表示事項が定められており、景品表示法とは別に確認が必要です(同法11条・12条の6)。また、業界によっては、景品表示法に基づいて認定を受けた公正競争規約が設定されており、表示や景品の提供の基準として参照されます(36条)。
よくあるご質問
企業向けの商品・サービスであれば、景品表示法は関係しませんか。
表示の規制は一般消費者に対する誤認を問題とするため、事業者だけを相手方とする取引の表示には、通常は及ばないと考えられます。ただし、くじなどの方法による懸賞は、提供の相手方が事業者であっても規制の対象となるとされています。また、例えば、一般消費者向けの製品の部品を供給する事業者についても、その表示が一般消費者の目にも触れ、直接的に誤認を生じさせ得るときなどには、一般消費者向けの表示を行っているものとして、22条の管理上の措置が求められるとされています(指針に関するQ&A Q3)。
ウェブ広告以外の表示も対象になりますか。
対象になります。指定の告示では、商品の容器・包装、チラシ・パンフレット、口頭による広告、ポスター・看板、新聞・雑誌・放送による広告、インターネット等による広告その他の表示などが挙げられています。
広告の制作を代理店に任せています。規制の対象になるのは代理店ですか。
景品表示法の表示の規制は、商品・サービスを供給する事業者が行う表示を対象とし、不当な表示の内容の決定に関与した事業者が規制の対象となるとされています(消費者庁「表示に関するQ&A」Q2・Q3)。広告の制作を外注していることだけで、広告主が規制の対象から外れるわけではありません。
誤記であり、誤認させる意図はありませんでした。それでも問題になりますか。
不当表示に当たるかどうかについては、表示の内容の決定に関与した事業者に故意又は過失があることは要しないとされています。一方、課徴金は、不当表示に当たることを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠った者でないと認められる場合には納付を命ずることができないとされ、刑事罰は故意がある場合に問題となるなど、手続ごとに要件が異なります。
景品の上限額を守っていれば、キャンペーンに問題はありませんか。
上限額とは別に、景品の内容や当選者数、応募の条件などの表示が実際と異なれば、取引条件に関する不当表示となるおそれがあるとされています(消費者庁「景品に関するQ&A」Q87)。企画の段階で、景品の規制と表示の規制の両方から確認しておくことが考えられます。
原産国は、すべての商品に表示しなければなりませんか。
景品表示法は、商品の原産国を必ず表示するよう義務付けているわけではないとされています。ただし、原産国を判別しにくい表示は告示により不当表示とされ、また、食品表示基準など他の法令で原産地に関する表示が定められている場合があります。
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ご相談にあたって
広告・企画の資料と、現在の状況(公開前か、公開中か、指摘を受けているか)を、分かる範囲でお知らせください。
お問い合わせフォームへ本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に関する法的助言ではありません。具体的な対応については、当事務所までご相談ください。記事の内容は、最終更新日の時点で施行されている法令等に基づいています。施行前の改正法を取り上げる場合は、本文にその旨を示しています。
