Regulatory Compliance
No.1・比較広告・満足度表示の審査
「売上No.1」「顧客満足度No.1」「満足度90%」「他社製品より〇倍」といった表示は、順位や割合が計算されているというだけでは、掲載してよいかを判断できません。何について、何と比べ、誰を対象に、どのように調査した結果なのかを、表示の内容と対応させる必要があります。
消費者庁は、No.1表示は合理的な根拠に基づかず事実と異なる場合には不当表示として問題となるとし、2024年9月の実態調査報告書で、合理的な根拠といえるための要素を示しています。比較広告については、客観的な実証、正確かつ適正な引用、公正な比較の方法という三つの要件が示されています。
当事務所は、調査の設計や質問票、集計の資料、報告書と広告案とを照合し、表示できる範囲や修正の要否の検討を支援します。調査会社に委託した場合でも、不当なNo.1表示についての責任は広告主にあるとされています。
監修:吉川 景司(弁護士・弁理士/第一東京弁護士会)
まず確認すること
以下は、No.1表示や比較広告を審査する際に、会社が確認しておきたい事項の例です。
- 訴求する指標――訴求するのが、売上・販売数、満足度、推奨の意向、認知度などのどの指標かを確認します。
- 比較の対象と範囲――比較の対象とした商品・サービス、地域、販売経路、期間が、表示する範囲と対応しているかを確認します。
- 調査の対象者――調査の対象者の抽出の方法、利用の経験、年齢その他の属性を確認します。
- 質問と提示の方法――実際の質問文、選択肢、提示した画像やサイト、提示の順序を確認します。
- 集計の方法――調査の時期、回答数、有効な回答の基準、分母、集計・除外・端数処理の方法を確認します。
- 取得できる資料――調査報告書だけでなく、質問票や集計の内訳など、判断に必要な資料を取得できるかを確認します。
- 表示できる範囲――表示する順位・割合・比較の条件が、調査の結果からいえる範囲を超えていないかを確認します。
- 掲載後の見直し――掲載を始めた後の商品の変更、競争の状況の変化、調査結果への疑義について、見直しの予定を確認します。
調査を行う前であれば、質問票や対象者の設定の段階から確認することができます。
ご相談いただけること調査設計・質問票の確認/調査結果と表示案の照合/比較広告の審査/調査会社への確認事項の整理/掲載後の見直し
お問い合わせフォームへ1 何を表示するのかを整理する
売上・販売数などの客観的な指標
売上金額、販売数量、利用者数などの順位を示す場合は、集計の対象となる商品の範囲、地域、販売経路、期間を明確にし、表示する順位と対応させます。
満足度・推奨の意向などの主観的な評価
実際に利用した人の満足度、今後利用したいという意向、ウェブサイトの印象などは、それぞれ異なる評価です。報告書は、満足度No.1と表示しながら、実際の利用者ではなく印象を尋ねる調査(いわゆるイメージ調査)のみを実施している場合を、問題となるおそれがある例として挙げています。
表示する範囲
限られた商品や利用の条件での結果を、ブランドやサービス全体の評価として示していないかを確認します。
2 No.1表示の根拠を、四つの要素で確認する
報告書は、No.1表示の合理的な根拠について、比較する商品等が適切に選定されていること、調査対象者が適切に選定されていること、調査が公平な方法で実施されていること、表示内容と調査結果が適切に対応していることを挙げています。
比較する商品等の選定
報告書は、市場における主要な商品等の一部又は全部を比較の対象に含めずに調査を行う場合を、合理的な根拠に基づいているとはいえず、問題となるおそれがある例として挙げています。報告書は、合理的な根拠といえるためには、少なくとも比較対象となるべき同種又は類似の商品等を適切に選定したうえで、それらと比較した順位を調査する必要があるとしています。会社は、表示するカテゴリーの名称と主要な競合商品との対応を整理し、比較対象から除いた商品とその理由を確認します。
調査の対象者の選定
報告書は、自社の商品等を継続的に購入している顧客だけを調査の対象者とする場合や、自社の社員・関係者を調査の対象者とする場合も、合理的な根拠に基づいているとはいえず、問題となるおそれがある例として挙げています。
調査の方法の公平さ
質問の文言や提示する資料、選択肢、提示の順序によって回答が誘導されていないか、希望する結果が出るまで調査を繰り返していないかを確認します。比較広告の考え方は、実証の方法・程度について、比較する商品等の特性、広告の影響の範囲及び程度等を勘案して判断するとし、自社製品と他社製品に対する消費者のし好の程度を相当広い地域で比較広告する場合には相当数のサンプルを選んで行った調査が必要である一方、中小企業者が低額の商品について一部の地域に限定して比較広告を行う場合には比較的少ない数のサンプルで足りる例を挙げています。会社は、標本の数、抽出の方法、誤差、順位の差の評価を、調査会社に確認します。
表示の内容と、調査の結果との対応
質問した事項、調査の対象の範囲、集計の結果と、広告に表示する順位や評価の意味とが対応しているかを確認します。報告書は、表示内容と調査結果が適切に対応していることを合理的な根拠の要素とし、顧客満足度No.1の表示について、注記があっても表示内容と調査結果が適切に対応していなければ問題となるおそれがある例を示しています。同率の結果を単独の首位であるかのように伝えていないか、僅差の結果を大きな優位があるかのように伝えていないかは、言い回し・注記・比較の範囲を含む表示の全体から判断されると考えられます。
3 比較広告と、割合の表示を審査する
比較広告の三つの要件
比較広告に関する考え方は、比較広告が不当表示とならないためには、比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること、実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること、比較の方法が公正であることの三つを満たす必要があるとしています。
客観的な実証と、正確かつ適正な引用
実証は、確立された方法がある場合にはその方法によって、それがない場合には社会通念上及び経験則上妥当と考えられる方法によって、主張しようとする事実が存在すると認識できる程度まで行われている必要があるとされています。調査の結果の一部を引用する場合は調査結果の趣旨に沿って引用すること、調査機関、調査時点、調査場所等の調査方法に関するデータを広告中に表示することが適当であることも示されています。
比較の方法の公正さ
全体の機能等にあまり影響がない特定の事項について比較して全体が優良であるかのように強調する場合や、同等のものと認識されていないものと比較して同等のものとの比較であるかのように示す場合は、不当表示となるおそれがあるとされています。主張する長所と不離一体の関係にある短所を、殊更に表示しなかったり、明りょうに表示しなかったりする場合も、同様とされています。
満足度などの割合の表示
報告書は、「満足度90%」のような高評価の割合を示す表示について、必ずしも他の商品との比較を前提としない点で主観的評価によるNo.1表示とは異なるものの、合理的な根拠についての考え方は基本的に共通するとしています。医師などの専門家が推奨しているとの表示については、専門家が商品の品質・内容に関する客観的なデータを踏まえ、専門的な知見に基づく判断として推奨していることを示す表示と考えられるとしています。このため、会社は、質問文、選択肢、合算した回答の範囲、分母と、「満足」と表示する意味とが対応しているか、推奨をした専門家に提供した情報や専門分野との関係を確認します。
4 調査会社への確認と、掲載後の見直し
広告主が確認する資料
報告書は、調査会社等の第三者が表示の裏付けとなる調査を行っていたとしても、不当なNo.1表示についての責任は広告主にあるとしています。また、調査会社からの勧誘を受けて、調査の内容を十分に確認することもなく表示を決定している実態が報告されています。会社は、報告書だけでなく、質問票、対象者の抽出の方法、集計の内訳などを取得して確認します。
調査の条件の示し方
報告書は、表示の根拠となる調査の内容を一般消費者が確認できるようにすることが望ましいとし、その方法の一つとして、表示物に調査方法の概要を表示することを挙げています。注記の配置や見え方については、「広告の表示内容の判断と強調表示・打消し表示」で解説しています。
調査の結果を使い続ける場合
商品の変更、競合する商品の変化、新しい調査の結果を踏まえて、過去の調査結果を使い続けてよいかを確認します。比較広告の考え方は、相当以前に行った調査を、最近行った調査であるかのように示す場合を、不当表示となるおそれがある例として挙げています。会社は、調査の年月を示した過去の実績の表示か、現在も首位であることを伝える表示かを確認し、調査後の商品や競合の変化と照らし合わせます。
根拠に疑義が生じた場合
会社は、表示している箇所と、使用した調査とを特定したうえで、表示の修正や停止を検討します。是正や当局への対応は、「景品表示法の違反指摘・自主是正・行政対応」で解説しています。
よくあるご質問
調査会社から「問題のないNo.1調査です」と説明されれば、掲載できますか。
第三者が調査を行っていても、不当なNo.1表示についての責任は広告主にあるとされています。広告主が、調査の内容と表示の内容との対応を自ら確認する必要があります。
ウェブサイトの印象を尋ねた調査の結果で、「顧客満足度No.1」と表示できますか。
報告書は、満足度No.1と表示しながらイメージ調査のみを実施している場合を、問題となるおそれがある例として挙げています。
回答者が100人いれば、調査の人数として十分ですか。
報告書や比較広告の考え方には、一定の人数で一律に十分とする基準は示されていません。調査の対象、表示する範囲、抽出の方法などに応じて検討します。
同率で1位の場合も、「No.1」と表示できますか。
報告書は、表示内容と調査結果が適切に対応していることを求め、顧客満足度No.1の表示について、注記があっても適切に対応していなければ問題となるおそれがある例を示しています。会社は、同率であることの明示や比較の範囲の説明なども検討し、表示の全体が単独の首位と受け取られないかを確認します。
他社の商品名を出した比較広告は、禁止されていますか。
比較広告そのものが禁止されているわけではなく、比較広告の考え方は、比較広告が不当表示とならないための要件を示しています。三つの要件(客観的な実証、正確かつ適正な引用、公正な比較の方法)を満たしているかを検討します。
肯定的な回答を合計して、「満足度90%」と表示できますか。
質問文、選択肢、合算する回答の範囲、分母と、「満足」と表示する意味とが対応しているかを確認する必要があります。
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ご相談にあたって
広告案、調査報告書、質問票、集計の資料、調査会社とのやり取りを、分かる範囲でお知らせください。
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