Regulatory Compliance
広告審査の進め方と表示管理体制・外注管理
広告の審査では、個々の表現の評価に加えて、根拠となる情報が制作・審査・掲載の各段階に正しく引き継がれているかが問題になります。景品表示法は、事業者に対し、景品類の提供や表示を適正に管理するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じることを求めています(22条1項)。
措置の内容については指針が定められ、7つの項目が示されていますが、必要な措置の内容は事業者の規模や業態等によって異なるとされています。指針の別添に示された事例は参考例であり、同じ措置でなくても、不当表示等を未然に防止するための措置として適切なものであればよいとされています。
このページの前半(第1章・第2章)では法令と指針の内容を、後半(第3章・第4章)では当事務所が提案する審査と外注管理の運用の例を説明します。後半の運用例は、法令や指針が一律に求めている手順ではありません。
監修:吉川 景司(弁護士・弁理士/第一東京弁護士会)
まず確認すること
以下は、表示の管理体制を点検する際に、会社が確認しておきたい事項の例です。
- 管理の対象――広告、商品ページ、店頭の表示、営業資料、景品の企画など、管理の対象を把握します。
- 根拠となる情報の所在――商品の情報、試験の結果、価格の情報など、表示の根拠となる情報をどの部門が持ち、誰が確認するかを確認します。
- 方針と周知――法令遵守の方針と、役員・従業員・外注先への周知の内容を確認します。
- 担当者と権限――表示等管理担当者の権限、部門間の役割、判断に迷った場合の相談先を確認します。
- 審査の手順――審査の申請、承認、掲載された版との照合、掲載後の変更を扱う手順があるかを確認します。
- 外注先との連絡の経路――広告代理店、ASP、アフィリエイター、インフルエンサー等について、依頼・修正・停止の連絡の経路を確認します。
- 自動で作られる表示――検索連動型広告や生成AIで、誰がどの段階で表示の内容を作成・変更しているかを確認します。
- 記録と苦情の経路――根拠となる情報、承認の記録、掲載の履歴を取り出せるか、疑義や苦情が担当者に届くかを確認します。
現状を把握したうえで、会社の規模や扱う商品に応じて、必要な手順から整えることが考えられます。
ご相談いただけること現行体制の点検/審査手順・役割分担の設計/外注先との契約と連絡経路の整備/検索連動型広告・生成AIの管理/再発防止策の策定
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1 22条と指針に基づく、予防の体制
対象となる事業者と、規模・業態に応じた措置
22条1項の措置は、自己の供給する商品・サービスの取引について、景品類の提供や表示をする事業者に求められています。指針は、各事業者によって必要な措置の内容は異なるとし、小規模企業者やその他の中小企業者については、規模や業態等に応じて十分な措置を講じていれば、必ずしも大企業と同等の措置が求められるわけではないとしています。どの規制がどの広告・企画に関係するかの整理は、「景品表示法への対応」で解説しています。
指針が挙げる7つの項目
指針の第4は、講ずべき措置として、次の7項目を挙げています。
- 景品表示法の考え方の周知・啓発
- 法令遵守の方針等の明確化
- 表示等に関する情報の確認
- 表示等に関する情報の共有
- 表示等を管理するための担当者等を定めること
- 表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置をとること
- 不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応
表示等管理担当者と、その権限
指針は、表示等を管理する担当者又は担当部門(表示等管理担当者)をあらかじめ定めることとしています。その要件として、自社の表示等について監視・監督の権限を有すること、表示等の作成を他の事業者に委ねる場合にはその事業者が作成する表示等について指示・確認の権限を有すること、複数いる場合はそれぞれの権限又は所掌が明確であること、景品表示法に関する一定の知識の習得に努めていること、社内等に周知する方法が確立していることを挙げています。
指針は、表示等管理担当者は必ずしも専任の担当者又は担当部門である必要はなく、一般的な法令遵守等の担当者又は担当部門がその業務の一環として表示等の管理を行うことができる場合には、それらを表示等管理担当者に指定すれば足りるとしています。指針に関するQ&Aは、表示等管理担当者について、行政機関への届出や資格・免許等は必要ないとしています(Q26)。フランチャイズの店舗が独自に表示等を行っている実態があるときには、各店舗に表示等管理担当者を定める必要があるとされています(Q30)。
2 記録の保管、問題が判明した場合の対応と、法的な位置付け
根拠となる情報を、事後に確認できるようにする
指針は、確認した表示等に関する情報を、その商品・サービスが一般消費者に供給され得ると合理的に考えられる期間、事後的に確認するために、資料の保管等の必要な措置をとることとし、表示等の作成を他の事業者に委ねる場合も同様としています。指針に関するQ&Aは、保管する資料は表示等を行うにあたって根拠として確認したものに限られ、商品の流通期間等に応じた適切な期間を保存期間として設定すればよいとしています(Q31・Q32)。即時に消費されるサービスについては、指針の別添の事例で3か月という期間が例示されています(Q33)。これは例示であり、商品・サービスの流通や提供の実態に応じた期間を設定することになります(Q32)。
会社は、扱う商品・サービスごとに、流通や提供の期間を踏まえて、資料を保存する期間と方法を決めておきます。
不当な表示等が明らかになった場合
指針は、不当な表示等が明らかになった場合の対応として、事実関係を迅速かつ正確に確認すること、一般消費者の誤認を迅速かつ適正に排除すること、再発防止に向けた措置を講じることを挙げています。このページでは、疑義を把握したときの報告の経路と、表示を止める権限を平時から定めておくことを扱います。公表や返金、当局への対応は、違反指摘・自主是正・行政対応のページで扱っています。
指導・助言、勧告と公表
22条1項の措置に関して必要があると認めるときは、事業者に対し、必要な指導及び助言をすることができるとされています(23条)。正当な理由がなくて措置を講じていないと認めるときは勧告をすることができ、勧告に従わないときは、その旨を公表することができます(24条)。
課徴金の「相当の注意」との関係
課徴金は、課徴金対象行為をした期間を通じて、表示が不当表示に当たることを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠った者でないと認められる場合には、納付を命ずることができません(8条1項ただし書)。消費者庁の考え方は、この点を、表示の根拠となる情報を確認するなど、正常な商慣習に照らし必要とされる注意をしていたかにより個別事案ごとに判断するとし、その例として、必要かつ適切な範囲で指針に沿うような具体的な措置を講じていた場合を挙げています。同じ考え方は、課徴金対象行為をした期間中のいずれかの時点で相当の注意を怠ったと認められれば納付を命ずることになるとし、期間中に従業員の報告や第三者からの指摘を受けたのに必要かつ適切な調査・確認等を行わなかった場合を例に挙げています。
3 当事務所が提案する、広告審査の進め方
この章と次の章は、当事務所が提案する運用の例です。法令や指針が、全件について特定の審査の経路や手順を一律に求めているわけではありません。
審査の申請に必要な情報をそろえる
広告案に加えて、対象となる商品、掲載の媒体と期間、根拠となる資料、適用される条件、過去の審査の結果を、申請の段階で整理しておく方法を提案します。
確認の担当と、承認の条件を決める
商品の仕様や販売の条件といった事実の確認と、法的な評価とを担当ごとに分け、広告の内容や影響の大きさに応じて、審査の経路や承認の条件を設定する方法を提案します。指針は、各事業者が、その規模や業態、取り扱う商品・サービスの内容、取引の態様等に応じて必要な措置を講じることとなり、必要な措置の内容は事業者によって異なるとしています。
承認した内容と、実際の掲載を照合する
入稿や配信の段階で文言が変わったり、条件の注記が落ちたりすることがあるため、承認した版と実際に掲載された版とを照合し、その記録を残す方法を提案します。
変更時の再確認と、掲載の終了
商品の仕様、訴求の内容、価格・条件、媒体を変更する際に再確認が必要かを判断し、古い表示が残っていないかも点検する方法を提案します。
4 当事務所が提案する、外注先とデジタル広告の管理
広告代理店・アフィリエイター・インフルエンサー
指針は、表示等の作成を他の事業者に委ねる場合には、表示等管理担当者がその事業者の作成する表示等について指示・確認の権限を有することを求めています。当事務所は、依頼の条件、使用できる表現、根拠となる情報、修正・停止の権限、再委託先への伝達、実際の掲載内容の確認について、役割を定めておく方法を提案します。指針の別添は、アフィリエイターに作成を委ねる表示について事前に確認することを挙げ、人員の制約などで全ての表示内容を事前に確認することが難しい場合には、表示後可能な限り早い段階での全ての表示内容の確認、成果報酬の支払額又は支払頻度が高いアフィリエイターの表示内容の重点的な確認、ASP等の他の事業者への確認の委託を例として挙げています。これらは参考例であり、一律に求められる措置ではありません。当事務所は、自動で配信される広告について、配信の内容が変わる仕組み、確認できる情報、問題が見つかったときの停止の方法を踏まえて、確認の手順を定めることを提案します。
検索連動型広告と、自動的な文面の変更
登録した広告文と実際に表示される文面、キーワードの自動挿入や自動生成の設定、遷移先のページの条件との整合性を点検する方法を提案します。
生成AIを利用した広告の制作
生成AIで作成した文案であっても、表示の内容を決定して表示をするのは事業者であり、根拠となる情報との照合が必要になります。入力した情報、生成された主張とその根拠、人による資料との照合、修正・採用の記録を管理し、架空の根拠や体験談を広告に採用しないための手順を設けることを提案します。
点検の結果を、ルールの見直しと教育に反映する
誤表示や差戻し、苦情などの結果から手順を見直す運用を提案します。研修の実施の方法については、「社内研修・コンプライアンス研修」でご案内しています。
よくあるご質問
すべての広告を、法務部や弁護士が審査しなければなりませんか。
法令や指針が、全件について特定の審査の経路を一律に求めているわけではないと考えられます。表示の内容や変更の範囲に応じて、審査の経路を設計することが考えられます。
表示等管理担当者には、資格や届出が必要ですか。
指針に関するQ&Aは、行政機関への届出や資格・免許等は必要ないとしています(Q26)。また、指針は、必ずしも専任の担当者又は担当部門である必要はなく、法令遵守等の担当者・部門が業務の一環として表示等の管理を行うことができる場合には、それらを指定すれば足りるとしています。指針は、担当者又は担当部門を定めることとし、権限、知識の習得、周知の方法などを要件として挙げています。
指針の別添の事例は、すべて実施しなければなりませんか。
指針は、別添の事例と同じ措置でなくても、不当表示等を未然に防止するための措置として適切なものであればよいとしています。7つの項目に沿って、会社の規模や業態に応じた措置を検討します。
代理店との契約に「法令を遵守する」と書いておけば足りますか。
指針は、表示の作成を他の事業者に委ねる場合について、指示・確認の権限や、資料の保管等の措置を求めています。契約の文言だけでなく、実際の指示・確認の運用が伴っているかを確認することが考えられます。
管理体制を整えていれば、不当表示の問題は生じませんか。
22条の措置を講じていることと、個々の表示が不当表示に当たるかどうかとは、別の問題です。課徴金の「相当の注意」についても、表示の根拠となる情報の確認など、個別事案ごとに判断されるとされています。
生成AIや広告媒体の審査を利用すれば、社内の確認は省けますか。
それらを利用しても、表示の内容を決定して表示をするのは事業者であり、自社の商品の事実や適用される条件と照合する必要があります。
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ご相談にあたって
現在の審査の手順(規程・フロー・様式)、関与している外注先、課題となっている点を、分かる範囲でお知らせください。
お問い合わせフォームへ本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に関する法的助言ではありません。具体的な対応については、当事務所までご相談ください。記事の内容は、最終更新日の時点で施行されている法令等に基づいています。施行前の改正法を取り上げる場合は、本文にその旨を示しています。
