Regulatory Compliance
景品・懸賞・キャンペーンの審査
抽選で当たるプレゼント、購入者全員への特典、SNSでのフォローや投稿を条件とする企画など、キャンペーンの特典が景品規制の対象となるかは、名称ではなく、特典の提供が取引とどう結び付いているかによって判断されます。景品類は、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益で、内閣総理大臣が指定するものとされています(2条3項)。
景品類に当たる場合は、抽選などによる懸賞か、懸賞によらない提供(総付景品)かによって、上限額の定め方が異なります。購入を応募の条件としない企画でも、景品を受け取るために来店が必要かなど、告知から受取りまでの条件によって扱いが変わることがあります。
当事務所は、企画書、応募規約、告知案、金額の算定資料をもとに、企画の分類、上限額の確認、提供の条件の検討を支援します。総付景品の上限額は、現在施行されている告示に基づいて説明しています。
監修:吉川 景司(弁護士・弁理士/第一東京弁護士会)
まず確認すること
以下は、キャンペーンを企画する際に、会社が確認しておきたい事項の例です。
- 提供の当事者と内容――誰が、誰に、どのような物品・金銭・ポイント・サービス等を提供するかを確認します。
- 取引との関係――特典を提供する目的と、対象となる商品・サービスの取引との関係を確認します。
- 各段階の条件――応募、会員登録、購入、投稿、来店、景品の受取りの各段階で、どのような条件があるかを確認します。
- 決め方――提供の相手方や額を、抽選・優劣・先着・もれなくのどの方法で決めるかを確認します。
- 値引き等との区別――値引き等として景品類に含まれないものか、景品類に当たるが上限の適用が除かれるものかを確認します。
- 価額の算定――取引の価額と景品類の価額を、それぞれどの資料・計算方法で算定するかを確認します。
- 上限と当選者数――景品類の最高額・総額、対象となる取引の売上予定総額、当選者数を確認します。
- 業種別の規制――業種別の告示や公正競争規約が適用されるかを確認します。
新聞業、雑誌業、不動産業、医療用医薬品業・医療機器業・衛生検査所業については、業種別の告示が定められています。
ご相談いただけること特典の景品類該当性の検討/懸賞・総付の区分と上限額の確認/取引価額・景品価額の算定/SNSキャンペーンの設計/応募規約・告知の確認/企画変更・当選者への対応
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1 特典が景品類に当たるかを判断する
顧客誘引・取引付随・経済上の利益
運用基準は、顧客を誘引するための手段に当たるかは、提供者の主観的意図や企画の名目を問わず、客観的に顧客誘引の手段になっているかで判断するとしています。取引を条件として他の経済上の利益を提供する場合や、小売業者・サービス業者が自己の店舗への入店者に提供する場合などは、取引に付随する提供に当たるとされています。
値引き・アフターサービス・付属物との区別
正常な商慣習に照らして値引きと認められる経済上の利益は景品類に含まれず、運用基準は、取引通念上妥当と認められる基準に従って支払うべき対価を減額することや、同じ対価で同一の商品等を付加して提供することを挙げています。アフターサービスや、商品に付属すると認められる経済上の利益についても、商品の特徴、サービスの内容、必要性、取引の約定の内容等を勘案して判断するとされています。値引きとして景品規制の対象外となる場合でも、割引の表示の仕方は表示の規制の問題となります。価格や割引の表示については、「価格・割引・無料・期間限定表示の審査」で解説しています。
購入を条件としない企画(オープン懸賞)とSNSキャンペーン
広く告知し、商品の購入や来店を条件とせずに応募できる企画(いわゆるオープン懸賞)には、景品規制が適用されず、上限額の定めもないとされています。Q&Aは、無料の会員登録を求めるだけでは、通常、取引に付随する経済上の利益の提供には当たらないとしています(Q15)。SNSのアカウントのフォローや「いいね」も、通常、商品・サービスの購入に直ちにつながるものではないとされています(Q18)。
一方、商品の画像や使用感を併せて投稿すると当選確率が上がると告知する企画では、応募にあたって商品を購入する蓋然性が高いとされています(Q19)。また、SNSでの友達登録で応募でき、当選者が景品を受け取るために店舗へ来店する必要がある企画は、総付景品の規制の対象となるとされています(Q20)。運用基準は、取引を条件としない場合であっても、経済上の利益の提供が取引の相手方を主たる対象として行われるときは、取引に附随する提供に当たるとしています(4(2))。会社は、応募の時点だけでなく、告知から景品の受取りまでに、購入や来店が必要になる場面がないかを確認します。
事業者を相手方とする企画
くじなどの方法による懸賞は、提供の相手方が事業者であっても景品規制の対象となるとされています(Q56)。懸賞によらない提供は、一般消費者向けのものが総付景品として規制され、事業者向けのものには原則として適用されないとされています。ただし、医療用医薬品業、医療機器業及び衛生検査所業では、医療機関等の事業者向けにもれなく提供する物品・サービスも規制の対象となるとされています(Q56)。
2 提供の方法を分類し、現行の告示の上限を確認する
懸賞の最高額と総額
懸賞とは、くじその他偶然性を利用して定める方法や、特定の行為の優劣・正誤によって定める方法により、景品類の提供の相手方や額を定めることをいいます(懸賞告示1項)。懸賞により提供する景品類の最高額は、懸賞に係る取引の価額の20倍の金額(10万円を超える場合は10万円)を超えてはならず、総額は、懸賞に係る取引の予定総額の2%を超えてはならないとされています(同告示2項・3項)。来店や申込みの先着順によって定めることは、懸賞には当たらないとされています。
共同懸賞
一定の地域の小売業者・サービス業者の相当多数が共同して行う場合、一の商店街に属する小売業者等の相当多数が共同して行う場合(中元・年末等の時期に年3回を限度とし、年間通算70日以内)、一定の地域で一定の種類の事業を行う事業者の相当多数が共同して行う場合には、最高額30万円、総額は懸賞に係る取引の予定総額の3%までとすることができます(懸賞告示4項)。ただし、他の事業者の参加を不当に制限する場合は、この限りでないとされています。協賛する会社が複数あることだけで、共同懸賞に当たるわけではありません。
総付景品と、適用が除かれるもの
一般消費者に対して懸賞によらずに提供する景品類の価額は、取引の価額の10分の2の金額(その金額が200円未満の場合は200円)の範囲内であって、正常な商慣習に照らして適当と認められる限度を超えてはならないとされています(総付告示1項)。商品の販売・使用やサービスの提供のために必要な物品等、見本その他の宣伝用の物品等、自社の取引で用いる割引券その他割引を約する証票、開店披露・創業記念等の行事に際して提供する物品等で、それぞれ正常な商慣習に照らして適当と認められるものには、この制限は適用されません(同告示2項)。これらは景品類には当たるものの総付景品の制限が適用されないもので、そもそも景品類に含まれない値引き等(第1章)とは区別されます。
カード合わせの禁止
2以上の種類の文字、絵、符号等を表示した符票のうち、異なる種類の符票の特定の組合せを提示させる方法を用いた懸賞による景品類の提供は、禁止されています(懸賞告示5項)。
上限額の一覧
| 区分 | 取引の価額 | 景品類の最高額 | 景品類の総額 |
|---|---|---|---|
| 一般懸賞 | 5,000円未満 | 取引の価額の20倍 | 懸賞に係る取引の予定総額の2% |
| 一般懸賞 | 5,000円以上 | 10万円 | 同上 |
| 共同懸賞 | 取引の価額にかかわらず | 30万円 | 懸賞に係る取引の予定総額の3% |
| 総付景品 | 1,000円未満 | 200円 | 総額の定めなし |
| 総付景品 | 1,000円以上 | 取引の価額の10分の2 | 総額の定めなし |
3 取引との結び付きと、価額を具体化する
取引の価額
購入者を対象とし、購入額に応じて景品類を提供する場合は、その購入額が取引の価額とされます。購入額の多少を問わないで提供する場合や、購入を条件とせずに店舗への入店者に提供する場合は、原則として100円とされ、店舗で通常行われる取引の最低額が100円を下回る又は超える場合の扱いも定められています。懸賞に係る取引の価額にも、同じ考え方が準用されます。Q&Aは、取引の価額は、通常、景品類の提供を受けるために必要な取引のうち最低の金額となるとしています(Q59)。
景品類の価額
景品類の価額は、同じものが市販されている場合は、提供を受ける者がそれを通常購入するときの価格によるとされています。市販されていない場合は、入手した価格や類似品の市価等を勘案して、提供を受ける者が通常購入するとしたときの価格を算定するとされています。このため、仕入価格が安いことだけで、景品類の価額を低く算定できるわけではありません。類似品も市販されていない場合は、仕入価格や製造コスト、販売するとした場合に想定される利益率などから、提供を受ける者が通常購入するとしたときの価格を算定するとされています(Q76)。会社は、比較に用いた商品とその選定の理由、原価や想定した利益率の根拠を記録しておきます。
ポイント・クーポンの扱い
Q&Aは、貯まったポイントを使って購入することが条件となっている場合は、支払うべき価格から使用するポイント分を値引いた額を取引の価額とするとしています(Q62)。自社の取引で用いる割引券等で、正常な商慣習に照らして適当と認められるものには、総付景品の制限が適用されません(総付告示2項3号)。運用基準は、値引と認められる経済上の利益に当たるかは、取引の内容、その経済上の利益の内容及び提供の方法等を勘案し、公正な競争秩序の観点から判断するとしています(6(1))。会社は、ポイントの利用先、交換の対象、他の特典との選択の関係を整理し、公表された類型と照らし合わせます。
売上予定総額と、複数の企画の合算
懸賞の総額の上限の基礎となる売上予定総額は、懸賞販売の実施期間中における対象商品の売上予定総額とされています。同一の取引に付随して2以上の景品類の提供が行われる場合は、別々の企画によるときであっても、合算した額の景品類を提供したことになるとされています。運用基準は、同一の取引に付随して2以上の懸賞を行う場合について、他の事業者と共同して行うときは、別々の企画であっても、それぞれ共同した事業者が合算した額の景品類を提供したことになり、他の事業者と共同せず、その懸賞の当選者に対して更に懸賞によって景品類を追加したときは、追加した事業者が合算した額の景品類を提供したことになるとしています。一方、別々の商品の購入をそれぞれ条件とする懸賞は、別の取引を条件とするものとして、それぞれ上限を算定するとされています(Q93)。会社は、応募の対象となる取引、実施する事業者、重複して当選する可能性、対象となる売上の期間を整理します。
4 告知と実施の内容を一致させ、制度の変更に備える
応募の条件・当選者数・抽選の方法の表示
Q&Aは、実際の当選者数が告知した当選者数に満たないときなどは、取引条件に関する不当表示として5条2号違反となるおそれがあるとしています(Q87)。会社は、告知した条件と、応募の状況、抽選と景品の提供の実績とを照合します。
企画の変更と、応募者への対応
企画の内容を変更する場合は、変更前の告知の内容と実施の状況を把握し、変更の可否、再告知の方法、既に応募した人への対応を検討します。
算定の資料と、抽選・提供の記録
取引の価額と景品類の価額の算定の根拠、抽選の方法と結果、景品の提供の記録を残しておく方法を提案します。審査の体制や外注先の管理については、「広告審査の進め方と表示管理体制・外注管理」で解説しています。
総付景品の上限額の見直しについて
総付景品の上限額については、政府の規制改革実施計画(2026年7月21日閣議決定)で、消費者庁が、事業者の販売促進活動の実施状況や一般消費者の購買行動の変化などを調査したうえで、取引価額が1,000円未満の場合の200円と、1,000円以上の場合の取引価額の10分の2のいずれについても引上げを検討し、2027年に結論を得ることとされています。景品類の提供の制限を変更するときは、公聴会を開いて関係事業者及び一般の意見を求めるとともに、消費者委員会の意見を聴いたうえで、告示によって行うこととされています(6条)。
このページの上限額は、2026年9月時点で施行されている告示に基づいています。改正が公表された場合は、改正の内容、施行日、経過措置を確認して更新します。
よくあるご質問
購入を条件としないキャンペーンなら、景品規制の対象外ですか。
購入を応募の条件としないことだけでは決まりません。例えば、当選者が景品を受け取るために店舗へ来店する必要がある企画は、総付景品の規制の対象となるとされています(Q20)。
クーポンやポイントを配る場合も、上限を考える必要がありますか。
正常な商慣習に照らして値引きと認められるものは景品類に含まれず、自社の取引で用いる割引券等で適当と認められるものには、総付景品の制限が適用されないとされています。利用の条件や使い道によって扱いが異なるため、個別に確認します。
複数の会社で協賛すれば、共同懸賞として上限が上がりますか。
共同懸賞として上限が上がるのは、一定の地域の小売業者等の相当多数が共同して行う場合など、告示が定める場合に限られます(懸賞告示4項)。
景品を安く仕入れた場合、仕入価格で上限を計算できますか。
市販されているものは、提供を受ける者が通常購入するときの価格によるとされています(景品類の価額の算定基準)。市販されていないものも、入手した価格や類似品の市価、類似品がなければ製造コストや想定される利益率などから、提供を受ける者が通常購入するとしたときの価格を算定するとされており、仕入価格がそのまま価額になるわけではありません(同基準1(2)、Q76)。
法人の顧客だけを対象とする抽選も、規制の対象になりますか。
くじなどによる懸賞は、相手方が事業者であっても規制の対象となるとされています(Q56)。懸賞によらずに提供する場合は、事業者向けのものには原則として適用されないとされています。医療用医薬品業など一部の業種には例外があります(Q56)。
「100名に当たる」と告知した後に、当選者数を減らしてもよいですか。
実際の当選者数が告知した当選者数に満たないときなどは、取引条件に関する不当表示となるおそれがあるとされています(Q87)。
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ご相談にあたって
企画書、応募規約・告知の案、景品と対象商品の価格の資料、実施の予定を、分かる範囲でお知らせください。
お問い合わせフォームへ本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に関する法的助言ではありません。具体的な対応については、当事務所までご相談ください。記事の内容は、最終更新日の時点で施行されている法令等に基づいています。施行前の改正法を取り上げる場合は、本文にその旨を示しています。
