Intellectual Property

AI広告・AI音声の商用利用――許可と権利の確認点

生成AIで広告用の画像や音声を制作するときは、サービスの「商用利用可」という表示だけでなく、素材や生成物に及ぶ第三者の権利を確認する必要があります。既存の作品やブランド、実在する人物の肖像・声が関わる場合、利用の態様に応じた権利処理と契約上の合意が必要になります。

本稿では、広告主と制作会社に向けて、生成物に著作権が生じるか、第三者の権利との関係で許諾が必要かを整理します。音声については、①元の録音素材の利用、②音声モデルの作成、③合成音声の公開に分け、権利制限の適用と契約実務における確認の手順を解説します。

監修:吉川 景司(弁護士・弁理士/第一東京弁護士会)

最終更新日:

AI広告・AI音声を公開する前に確認すること

  • 広告の対象商品・サービス、掲載する媒体、利用する期間・地域と、二次利用の予定
  • 利用するAIサービスの利用規約と、権利の保証・補償条項の範囲
  • 入力する素材(画像・録音・台本等)の出所、権利者、取得している許諾
  • 特定の実在する人物を識別・想起させる肖像や声を使用するかどうか
  • 素材の利用、学習・モデルの作成、新しい発言の合成・公開の各段階についての権利者との合意
  • 生成の過程の記録、人による修正・加筆の内容、制作会社との責任の分担

ご相談いただけること利用予定の素材・生成物・媒体の整理/著作権・実演・肖像・声に関する法的検討/権利制限の適用と許諾の要否の確認/素材利用・音声モデル作成・合成音声公開の条件整理/出演者・制作会社等との契約の作成・見直し/権利侵害の指摘への対応

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目次
  1. 1 「商用利用可」の範囲と生成物の権利帰属
  2. 2 既存の著作物・キャラクター・ブランドとの関係
  3. 3 実在する人物の肖像・声と、元の録音に関する権利
  4. 4 素材利用・モデル作成・広告公開ごとの権利処理と合意
  5. 当事務所のサポート内容
  6. よくあるご質問

1 「商用利用可」の範囲と生成物の権利帰属

規約における「商用利用可」の範囲

サービスの規約にある「商用利用可」の表示は、AIの提供者との関係で利用が許されているという意味です。生成物に第三者の著作物の表現が含まれる場合や、実在する人物の肖像・声を想起させる場合に、規約の表示だけで第三者の権利処理まで済んでいると解釈することはできません。

確認すべき事項は、規約上の禁止用途、生成物の権利の帰属、権利侵害に対する保証・補償条項の有無と範囲です。補償条項がある場合も、対象となる利用の態様、適用の条件、免責事由を確認します。

生成物の著作権と「人の創作的寄与」

著作権法は、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定めています。文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」は、AIが自律的に生成したものは著作物に当たらず、人が思想又は感情を表現するための「道具」としてAIを使用したといえる場合に、その利用者が著作者となると整理しています。

道具としての使用といえるかは、利用者の創作意図と創作的寄与の有無によって判断されます。同資料では、創作的な表現を具体的に指定する指示は創作的寄与の評価を高める一方、長文であってもアイデアの提示にとどまる場合は評価に影響しないこと、試行錯誤の回数そのものは考慮されないこと、生成後に人が加筆・修正を行った場合はその部分に著作物性が認められ得ることが示されています。

広告の実務上は、生成物に著作権が生じない場合、第三者が同じ表現を無断で使用しても、著作権に基づいて差止めを求めることが難しくなります。他方、自社の生成物に著作権がないことと、他者の権利を侵害しないこととは別の問題であり、それぞれ個別に検討します。

広告主が取得する権利の確認

生成物に著作物性が認められる場合でも、その権利が当然に広告主に帰属するわけではありません。制作会社に発注して代金を支払ったことだけでは、著作権の移転が認められないことがあります。生成物と、人が加えた創作的な部分について、権利の帰属先と広告主が利用できる範囲を契約で定めます。あわせて、台本・楽曲・写真等の権利についても、出演者や実演家の承諾とは別に、権利処理の状況を確認します。

2 既存の著作物・キャラクター・ブランドとの関係

類似性と依拠性の判断

生成物が既存の著作物の著作権を侵害するかは、類似性(創作的な表現の共通性)と依拠性が認められ、かつ権利制限の対象とならない場合に問題になります。

依拠性について、文化庁の整理では、既存の著作物がAIの開発・学習の段階で用いられていた場合、利用者がその著作物を認識していなくても、原則として依拠性が認められ得るとされています。他方、学習に用いた表現が出力の段階で再現されない仕組みになっている場合には、依拠性が否定される余地も示されています。

なお、開発・学習の段階に権利制限が適用されることと、生成した広告を公開する行為が適法であることとは、分けて検討します。自社のサイトがAIの学習に利用される場面の対応は、自社サイトのAI学習拒否――クロール制御と法的対応の限界で扱っています。

参考画像の入力・参照

参考にする画像や音源をAIに入力・参照させる行為に伴う複製と、生成物を広告として公開する行為とは、分けて確認します。元の画像等の創作的な表現を再現させる目的で入力する場合には、情報解析の目的があるとしても、著作権法30条の4(享受を目的としない利用)が適用されない可能性があります。文化庁も、生成の際の指示として既存の著作物を入力する行為については、享受の目的が併存しないかを検討すべきものとしています。

作風と具体的な表現

特定の作家や作品の作風を指示することと、特定の作品の具体的な表現を再現することとは、区別されます。著作権法が保護するのは具体的な表現であり、アイデアや作風そのものは保護の対象ではありません。もっとも、作風を指示した結果として具体的な表現が再現されることもあるため、最終的な生成物そのものを確認します。

キャラクター・ロゴ・ブランド

既存のキャラクター、他社のロゴ、商品名等を広告に用いる場合は、著作権に加えて、商標権や不正競争防止法上の規律を確認します。周知な商品等表示との混同を生じさせる行為や、著名な表示を冒用する行為は、不正競争に当たり得ます。

生成の過程の記録と管理

どのような指示を与えたか、参照した素材は何か、生成物のどの部分に人が修正を加えたかを記録しておくと、後日、権利侵害の指摘を受けた際の説明がしやすくなります。制作会社に委託する場合は、こうした記録を誰が保管するかを契約で定めます。

3 実在する人物の肖像・声と、元の録音に関する権利

肖像とパブリシティ権

実在する人物の肖像等を無断で使用する行為について、最高裁は、専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に、パブリシティ権を侵害するものとして不法行為法上違法となるとしています。この判断は、写真の利用に関するものです。

これとは別に、肖像等をみだりに利用されない人格的な利益も問題になります。著名人でなければ問題にならない、というものではありません。

声に関する権利

法務省が2026年8月7日に公表した「肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会」の取りまとめ報告書は、声をパブリシティ権の保護対象に含める点について、検討会では異論がなかったと整理しています。

ただし、これは検討会による解釈の整理であり、新たな権利を設ける法律でも、AIによる合成音声の利用について判断した判決でもありません。実際の事案では、使用された肖像等が本人のものであると識別できるか、顧客吸引力をどのように利用しているかなど、個別の利用態様を検討することになります。

他方、法令や判例ではないことを理由に、契約上の確認が不要になるわけでもありません。後述する三つの段階について、関係者との間で許容する利用を明確にしておくことが実務上の備えになります。

実演家・レコード製作者の権利

既存の録音素材を使う場合は、そこに含まれる脚本・楽曲・歌詞などの著作物、実演、レコードについて、権利を分けて確認します。台詞の演技や歌唱、口演、朗詠は実演に当たります。他方、著作物を口頭で伝達する朗読は、実演に該当するものを除き、口述として別に扱われています。

実演家には、実演を録音・録画する権利と、実演を送信可能化する権利がありますが、いずれにも適用除外があります。許諾を得て映画の著作物に収録された実演については、録音・録画権は、音を独立して再生する録音物への録音を除き、適用されません。元の収録の形態と、今回行おうとしている利用行為、契約の範囲を分けて確認します。

レコード製作者は、そのレコードを複製する権利と送信可能化する権利を専有します。実演に当たらない音声であっても、その録音物についてレコード製作者の権利が問題になることがありますので、音を最初に固定した者や、権利の承継の有無も確認します。実演家の同意を得ていることだけで、レコード製作者の権利まで処理できるわけではありません。

実演家には、実演家名を表示し、又は表示しないこととする権利があり、また、自己の名誉又は声望を害するその実演の変更、切除その他の改変を受けないものとされています。後者は、あらゆる改変を禁ずる規定ではなく、実演の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変や、公正な慣行に反しないと認められる改変には適用されません。「本人が話していない内容だから当然に同一性保持権の侵害になる」という整理はできません。

声が似ていることと、元の実演の利用

声の特徴が似ていることだけから、元の実演の録音・利用があったとはいえません。元の具体的な実演が再製されていないのであれば、声が似ていることだけを理由に録音権の侵害を導くことはできません。

他方、新しい文章を話しているというだけで、元の実演を利用していないともいえません。元の音源の取り込み方、合成の仕組み、出力に具体的な実演がどの程度再現されているかを、個別に確認したうえで判断することになります。

また、本人が述べていない発言を、本人のものとして示す場合には、名誉やプライバシーといった人格的な利益が問題にならないかも確認します。もっとも、そこから、一般の方についても包括的な声の独占権が確立している、無断の利用はすべて違法である、といえるわけではありません。

なお、AIで生成した旨を表示しても、肖像や声の利用に関する権利や合意の確認が不要になるわけではありません。

4 素材利用・モデル作成・広告公開ごとの権利処理と合意

確認の手順

権利の確認は、①利用する素材と行為の特定、②及ぶ権利の範囲の確認、③権利制限の適用の有無の判断、④必要な許諾の範囲と契約条件の設定、という順序で行います。

実演・レコードに及ぶ権利制限

著作権法102条1項により、著作隣接権(実演・レコード)にも、30条の4などの権利制限が準用されます。学習を目的とする録音の利用については、一定の要件の下で権利者の許諾が不要となる場合があります。

もっとも、「学習」という名称であっても、享受の目的が併存しないか、権利者に不当な不利益を及ぼさないかを確認します。学習済みのモデルを作成することが適法であっても、そのモデルから出力した音声を広告として公開し、視聴させる行為は別の利用であり、当然に正当化されるものではありません。

さらに、著作権法上の権利制限が適用される場合でも、実演家人格権や、契約上の制約は別に及びます。

段階ごとの確認

段階主に問題となる権利確認する資料・許諾の範囲個別の検討が必要な部分契約で定めておくこと
①元の録音・出演素材の取得・利用実演家の録音・録画権、送信可能化権、氏名表示権/レコード製作者の複製権・送信可能化権/台本・楽曲の著作権元の音源と収録の形態、過去の出演・収録契約、許諾を与えた相手とその権限、台本・楽曲の権利処理の状況実演に当たるか、適用除外に当たるか。過去の契約がどの範囲まで及ぶか提供する素材の特定、利用の目的、再提供の可否、保管と返却・消去
②学習・音声モデルの作成同上(102条1項により30条の4等が準用される)学習に用いる素材の範囲、権利者からの同意の有無と範囲、モデルの保管・管理の取決め享受の目的が併存しないか。モデルの保管と再利用をどこまで認めるかモデル作成の可否、作成したモデルの帰属・保管・第三者提供の可否、利用期間と終了後の取扱い
③新しい発言の合成・公開実演家人格権/パブリシティ権・人格的利益/不正競争防止法上の商品等表示本人の承諾書とその範囲、合成した音声・完成した広告の確認記録、公開の承認者本人を識別できるか、顧客吸引力をどのように利用しているか、元の実演がどの程度再現されているか合成できる発言の範囲、媒体・期間・地域、改変の限度、公開前の本人確認、取消しの手続

契約で優先して定めること

媒体・期間・地域に加えて、追加の学習の可否、第三者へのモデルの提供、合成する発言の範囲、契約終了後の利用と消去を優先して定めます。出演者の承諾を一つ得ただけで、素材の利用から新しい発言の公開までがすべて処理できると考えるべきではありません。

あわせて、合成した発言と完成した広告を誰が確認して承認するか、権利者から異議が出た場合の連絡・配信停止・差替えの判断と費用の負担をどうするか、元の素材・モデル・合成音声・公開した広告のそれぞれを契約終了後にどう扱うかを定めておきます。

制作会社から「権利処理済み」と説明を受けた場合も、具体的な許諾の範囲と根拠となる資料を確認し、公開の可否を広告主として判断できる状態にしておきます。

当事務所のサポート内容

  • 利用を予定している素材・生成物・掲載媒体の整理と、確認すべき権利の特定
  • 著作権、著作隣接権(実演・レコード)、肖像・声に関する法的な検討
  • 権利制限の適用と、許諾の要否の切り分け
  • 素材の利用、音声モデルの作成、合成音声の公開についての契約条件の設定と、契約書の作成・確認
  • 出演者・制作会社・AI事業者との間の責任の分担の整理
  • 権利侵害の指摘を受けた場合の対応

よくあるご質問

有料プランで「商用利用可」とされていれば、生成物をそのまま広告に使えますか。

そうとは限りません。「商用利用可」は、AIの提供者との関係で利用が許されているという意味であり、生成物に含まれる第三者の著作物の表現や、肖像・声に関する権利まで処理されていることを示すものではありません。規約の禁止用途、権利の帰属、保証・補償条項の範囲を確認したうえで、生成物そのものを見て、第三者の権利との関係を検討することになります。

過去にCM出演・録音の許諾を得た声優の声から、別商品の広告用音声を作れますか。

過去の契約がどの範囲まで許諾しているかによります。出演・録音の許諾が、その収録物を特定の広告で使うことを対象としている場合、別商品の広告のために音声モデルを作成し、新しい発言を合成することまでは、通常、含まれていません。また、映像作品に収録された実演を音声だけ取り出して用いる場合には、適用除外の規定が問題になります。素材の利用、モデルの作成、合成音声の公開を分けて、あらためて合意することをお勧めします。

本人が話していない文章を合成する場合も、実演家の権利の問題になりますか。

場合によります。著作権法上、録音とは、音を物に固定することのほか、その固定物を増製することをいいます。したがって、本人が話していない文章であっても、学習や合成の過程で元の実演を収録した音源を複製する場合や、その録音を組み合わせて出力を作る場合には、実演家の権利が問題になり得ます。

もっとも、声の特徴が似ているというだけで、元の実演を利用したことにはなりません。制作の過程と、出力の作成・公開とを分けたうえで、元の実演を利用しているか、その方法はどのようなものか、許諾の範囲に収まるか、権利制限や適用除外が働くかを確認することになります。

なお、実演家の権利とは別に、レコード製作者の権利、パブリシティ権、人格的な利益、契約上の制約も確認します。

「AIで生成した肖像・音声です」と表示すれば、本人の許諾は不要ですか。

不要にはなりません。AIによる生成である旨を表示しても、特定の人物の肖像・声であると識別でき、顧客吸引力を利用していると評価される場合には、パブリシティ権の問題は残ります。表示によって視聴者の誤認が小さくなることと、権利侵害が成立するかどうかとは、別の問題です。

制作会社から「権利処理済み」と説明を受けていれば、広告主による確認は不要ですか。

不要とはいえません。何について、誰から、どの範囲の許諾を得たのかを確認する必要があります。特に、素材の利用と、音声モデルの作成、合成音声の公開とでは、許諾すべき内容が異なります。契約上、制作会社が補償の義務を負う旨を定めていても、それによって権利者から広告主に対する請求が当然に遮断されるわけではありません。公開の可否を広告主として判断できるよう、根拠となる資料を確認しておくことをお勧めします。

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本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に関する法的助言ではありません。具体的な対応については、当事務所までご相談ください。記事の内容は、最終更新日の時点で施行されている法令等に基づいています。施行前の改正法を取り上げる場合は、本文にその旨を示しています。