M&A & Business Succession

名義株・株式の持ち主を巡る紛争

事業承継やM&Aでは、株主名簿の記載と実際の権利関係の不一致が疑われたり、名義人や相続人から株主としての権利を主張されたりすることがあります。

設立・増資・譲渡の経緯や関係資料を確認し、株式の帰属と、会社に対する株主としての権利行使を分けて検討する必要があります。

当事務所は、名義株や株式帰属を巡る調査、交渉・訴訟対応を支援します。

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まず確認すること

以下は、ご相談の際に分かる範囲で共有いただきたい事項です。未定の事項がある段階や、資料がそろっていない段階でもご相談いただけます。

  1. 会社の基本的な設計――定款に株券を発行する旨の定めがあるか、譲渡に会社の承認を要するか、種類株式が発行されているかを確認します。
  2. 設立・増資・譲渡の経緯――出資の原資、払込みの記録、譲渡の合意や対価の支払を示す資料の有無を確認します。
  3. 名簿と各種書類の記載――株主名簿、法人税申告書の別表、過去の株主総会議事録の記載が一致しているかを確認します。
  4. 関係者の状況――名義人や先代経営者が亡くなっている場合は、相続人の範囲と遺産分割の進み具合も確認します。

資料と経緯から、株式が誰に帰属するかという問題と、会社に対して権利を行使できるかという問題を分けて整理します。

ご相談いただけること株式の帰属の調査/名簿・株券に関する手続の整理/相続・共有の取扱い/関係者との交渉/訴訟・仮処分への対応/承継日程との調整

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目次
  1. 1 株式の帰属が問題となったとき
  2. 2 誰に株式が帰属するか
  3. 3 株式帰属と名義書換・譲渡手続
  4. 4 名義人の死亡・相続と承継への影響
  5. 5 交渉・訴訟と承継の進め方
  6. よくあるご質問

1 株式の帰属が問題となったとき

株式が誰のものかという問題は、事業承継やM&Aを契機に明らかになることがあります。買主のデューデリジェンスで株主構成の裏付け資料を求められた段階で、名簿の記載と実態が食い違っていることが分かる、名義人や先代経営者が亡くなったことをきっかけに関係者の主張が食い違う、といった場面です。

まず確認するのは、会社の基本的な設計です。定款に株券を発行する旨の定めがあるか、株式の譲渡に会社の承認を要する定めがあるか、種類株式が発行されているかによって、その後の検討が変わります。古い会社では、定款の内容が現在の運用と一致していないこともあります。

次に、株主名簿とその作成経緯です。株主名簿が作成されているか、いつ、誰が、どの資料に基づいて記載したのかを確認します。名簿が長く更新されていない、あるいは税務申告書に添付する書類の記載と食い違っているという例もあります。

そのうえで、設立から現在までの経緯をたどります。設立時の発起人が誰で、出資金を実際に負担したのは誰か。増資が行われている場合、募集の決定に関する議事録、引受けの申込みに関する書類、払込みの記録はどうなっているか。譲渡があったとされる場合、契約書や代金の授受を示す資料は残っているか。配当が支払われていた場合、誰が受領していたか。株主総会が開催されていた場合、誰が議決権を行使してきたか。これらの資料は、後に述べる帰属の判断において、いずれも手掛かりになります。

古い会社では、資料が残っていないことが珍しくありません。その場合でも、税務申告書に添付された株主等の一覧、金融機関に提出した資料、相続の際に作成された資料など、間接的な資料から経緯を推測できることがあります。資料が乏しいこと自体は、検討を断念する理由にはなりません。

2 誰に株式が帰属するか

いわゆる名義株は、株式の引受けにあたって他人の名義が用いられ、名簿上の株主と、実質上の引受人とが異なる状態を指して用いられる言葉です。かつては、設立にあたって一定数の発起人を要したことから、親族や従業員の名義を借りて会社を設立する例がありました。増資の際に、資金を負担しない者の名義が用いられることもあります。

もっとも、出資金を負担した者と名簿上の株主が異なるというだけで、名義株の問題になるわけではありません。資金の拠出が、名義人に対する貸付けであった場合、贈与であった場合、あるいは報酬の一部として株式を与える趣旨であった場合には、名義人が株主であるという整理になり得ます。したがって、検討の出発点は、他人の名義を用いて引受けが行われた場合に、誰を実質上の引受人とみるべきかという点にあり、出資金を実際に負担したのは誰か、名義を用いることについて当事者の間にどのような了解があったか、その後、誰が株主としての権利を行使し、配当を受領してきたか、税務上どのように扱われてきたかといった事情は、その判断のための資料として位置付けられます。

引受けの段階では名義株であったとしても、その後に売買や贈与によって株式が移転したと主張される場合には、その移転の有無と効力を別に検討することになります。世代を超えて争われる事案では、この二つが混在していることが少なくありません。

検討にあたっては、名義人側の言い分も確認する必要があります。名義を貸したにすぎないと説明されてきた当事者が、実際には出資の一部を負担していた、あるいは報酬の一部として株式を与えられたと認識していた、という食い違いが生じることがあります。世代が替わると、当時の経緯を知る人が限られるため、この食い違いは解消しにくくなります。

なお、株式が誰に帰属するかという問題と、その株式について会社に対して権利を行使できるかという問題は、別の事柄です。次章で扱うとおり、実体上は株主であっても、会社に対する関係では手続を経なければ株主として扱われないことがあり、その逆の状況が生じることもあります。

3 株式帰属と名義書換・譲渡手続

本章では、振替制度の対象となっていない株式を前提に説明します。

株式の譲渡は、株主名簿に取得者の氏名等が記載されなければ対抗することができないとされています。ここで注意が必要なのは、株券を発行する旨の定款の定めがある会社とそうでない会社とで、対抗できない相手方の範囲が異なることです。株券発行会社でない会社では会社その他の第三者に対して対抗できないとされているのに対し、株券発行会社では、会社に対する関係での対抗要件とされています。ここでいう株券発行会社かどうかは、定款に株券を発行する旨の定めがあるかどうかによって決まり、実際に株券が発行されているかどうかとは別の問題です。

株券発行会社では、株券の交付が譲渡の効力の要件とされています。これは手続上の問題にとどまらず、譲渡の効力そのものにかかわる問題です。株券が見当たらない場合には、そもそも株券が発行されているのかどうかから確認します。発行されていない場合と、発行されたものの所在が分からない場合とでは、対応が異なります。

株券がまだ発行されていない場合には、株券の交付がなくても当事者の間では譲渡が有効となり得ますが、原則として、会社に対してその効力を主張することはできません。これに対し、発行済みの株券を紛失した場合には、株券を無効とするための手続を経たうえで進める方法を検討することになります。

名簿の記載を求める手続にも注意が必要です。発行会社以外の者から株式を取得した者が会社に対して名簿の書換えを請求する場合、原則として、名簿上の株主またはその一般承継人と共同して請求することが求められています。名簿上の株主が協力しない場合や、所在が分からない場合には、この点が実際上の障害になります。

もっとも、単独で請求できる事由は、法務省令に定められています。株券発行会社でない会社では、名簿上の株主またはその一般承継人に対して名義書換えの請求をするよう命じる確定判決を得て、その内容を証する書面その他の資料を提供して請求する方法が認められています。株券発行会社では、取得者が株券を提示して請求する方法が認められています。ここでいう確定判決は、単に株主であることを確認する判決ではありませんので、株主であることの確認判決を得ただけでは、この事由には当たりません。このほか、株券発行会社でない会社では、相続その他の一般承継によって株式を取得した者が、その一般承継を証する書面その他の資料を提供して単独で請求する方法も認められています。単独で請求できる事由は、株券発行会社かどうかによって別々に定められていますので、自社がどちらに当たるかを確認したうえで検討します。

譲渡に会社の承認を要する株式については、その前提を確認しておく必要があります。ここまで述べた名簿の書換えの請求は、取得した株式が譲渡制限株式である場合には、取得について会社の承認を受けているとき、会社が指定した買取人であるとき、一般承継によって取得したときなどに限って認められ、それ以外の場合には原則として行うことができないとされています。認められる場合には、共同での請求とその例外について前段で述べたところが、そのまま当てはまります。そのうえで、承認の手続を経ていない譲渡の扱いが問題になります。承認がないまま長年にわたって当事者間で株式が移転したものとして扱われてきた、という例もあり、その場合には、会社に対する関係と当事者間の関係を分けて整理することになります。

事業承継やM&Aの場面では、これらの点が、実体上の帰属の問題よりも先に表面化することがあります。買主から株主であることの証明を求められた段階で、名簿の記載や承認の経過に不備が見つかる、という順序です。この段階で整理しておかないと、取引の日程そのものに影響します。株主であることを前提に行われた過去の株主総会の決議についても、後から効力が問題とされる可能性を検討する必要が生じることがあります。決議の効力を争う手続には、決議の日から短い出訴期間が定められているものと、法定の出訴期間の定めがないものとがあります。

4 名義人の死亡・相続と承継への影響

相続の対象になるのは、亡くなった方に帰属していた株式です。したがって、名義人が亡くなったからといって、その名義の株式が当然に名義人の相続人に帰属することになるわけではありません。名義人が実質上の引受人であったのか、名義を貸したにすぎなかったのかという前章の問題が、ここで改めて争点になります。

亡くなった方に帰属していた株式について、遺言によって特定の相続人が取得するものとされている場合などを除き、遺産分割が済むまでの間は、複数の相続人が株式を共同で有する状態となります。この状態では、権利を行使する者一人を定めて会社に通知しなければ、その株式について権利を行使することができないとされています。会社が権利の行使に同意した場合の例外は定められていますが、会社が同意したとしても、共有者の間でどのように意思決定するかという問題まで解決するわけではありません。なお、この指定には共有者全員の同意までは必要でなく、持分の価格に従ってその過半数で決することができると解されています。もっとも、持分の割合自体に争いがある場合には、指定と通知が整わないために、株主総会の運営自体が滞ることがあります。

相続人が多数にわたる場合や、所在の分からない相続人がいる場合には、さらに時間を要します。名義株が問題となっている会社では、名義人の相続人が「自分たちが株主である」と主張し、会社側は「名義を借りていたにすぎない」と説明する、という対立が生じがちです。当時の経緯を直接知る当事者がすでにいないことも多く、資料による裏付けの重要性が増します。

遺言がある場合には、その内容と有効性、株式についての定めの有無を確認します。遺産分割協議が成立している場合には、協議書の記載が株式を特定できているか、名簿の書換えに必要な書類がそろっているかを確認します。相続による取得は一般承継ですので、譲渡の場合とは手続が異なる点にも注意が必要です。

なお、相続による株式の取得そのものについては、譲渡制限株式であっても会社の承認を要しないと解されています。これとは別の制度として、定款に、相続その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した者に対して会社が売渡しを請求できる旨の定めが置かれていることがあります。この定めを用いる場合、会社が一般承継のあったことを知った日から一年を経過したときは請求できないとされているほか、株主総会の決議が必要とされ、売買価格について協議が調わない場合には、請求の日から二十日以内に裁判所へ価格の決定を申し立てることとされています。期間内に申立てがない場合の効果も定められていますので、財源に関する規制と併せて、手続の全体を確認したうえで検討する必要があります。この株主総会では、売渡しを請求される相続人等は、原則として議決権を行使することができないものとされています。多数の株式を承継した相続人であっても議決権を行使できないという結果になり得ますので、定款にこの定めがあるかどうかは、早い段階で確認しておく必要があります。なお、この制度は、特別支配株主が少数株主に対して株式の売渡しを請求する制度とは別のものであり、要件も期間も異なります。

5 交渉・訴訟と承継の進め方

帰属に争いがある場合の解決は、必ずしも訴訟だけではありません。当事者の間で認識が大きく異ならないのであれば、株式が誰に帰属していたのかを確認する合意書を作成し、併せて名簿の書換えに必要な書類を取り交わすことで整理できることがあります。これとは別に、名義人側に一定の解決金を支払って株式を譲り受けるという方法もあります。前者は既存の帰属を確認するもの、後者は新たに譲渡を行うものであり、必要となる手続も、課税上の扱いも異なりますので、どちらの構成によるのかを明確にしておく必要があります。

いずれの方法によっても、合意に加わっていない相続人や関係者との関係まで当然に解決されるわけではありません。対象となる株式を特定し、当事者の範囲と、合意が及ぶ事項の範囲を明確にしたうえで、合意に加わっていない者がいる場合には、その者との関係をどう処理するかを別に検討します。

合意に至らない場合には、株主であることの確認を求める訴えや、名簿の書換えを求める訴えを検討します。事案によっては、株主総会の開催が予定されている状況で、議決権の行使に関する仮の措置を求めることもあります。これらの手続には相応の時間がかかりますので、承継やM&Aの日程との関係で、どこまでを先に確定させるかという判断が必要になります。

M&Aを進める場合には、帰属に争いがあることを前提に、契約上どのように手当てするかを検討します。株式の帰属や売主の処分権限に関する表明保証、争いが顕在化した場合の補償、クロージング前に整理を完了することを条件とする定めなどが考えられます。もっとも、これらは、売主と買主の間で経済的な負担をどう分けるかを定めるものであって、株式が誰に帰属するかという問題や、譲渡の効力そのものを解決するものではありません。第三者が権利を主張してきた場合に備えるという位置付けで検討することになります。関連する検討事項は、M&Aの表明保証違反と補償請求で扱っています。

株主としての地位を確定させたうえで、組織再編や株式の集約に伴う対価が問題となる場面については、少数株主の株式買取請求・価格決定への対応で扱っています。

事業承継の場面では、株式の帰属の整理と、経営者の個人保証の取扱いが同時に問題となることが多くあります。保証については、M&A・事業承継における経営者保証の解除と紛争対応をご覧ください。

よくあるご質問

Q1 株主名簿に記載されている人が、必ず株主ですか。

そうとは限りません。名簿の記載は、会社との関係で株主として扱われるための仕組みであり、実体上の権利の有無を最終的に決めるものではありません。名義を借りていたにすぎないという主張が成り立つかどうかは、出資の負担、当事者の了解、その後の権利行使の実績などを確認して検討します。

Q2 出資の払込みを示す資料が残っていない場合はどうしますか。

資料がないこと自体で結論が決まるわけではありません。税務申告書に添付された株主等の一覧、金融機関に提出した資料、過去の配当や議決権行使の記録など、間接的な資料から経緯をたどることができる場合があります。関係者の記憶が残っているうちに、聞き取りと資料の収集を進めることをお勧めします。

Q3 名義人が亡くなった場合、誰と協議すればよいですか。

まず、亡くなった方にその株式が帰属していたのかを確認します。名義を貸していたにすぎない場合、名義人が亡くなったからといって、その株式が名義人の相続人に帰属することにはなりません。もっとも、その場合でも、名義の訂正や名簿の書換えについて協力を得るために、名義人の相続人を特定して協議する必要が生じることがあります。株式が相続人に帰属しないことと、相続人と協議する必要がないこととは、別の事柄です。帰属していた場合には、遺言の有無を確認したうえで、相続人が協議の相手方になります。遺産分割が済んでいない株式については、権利を行使する者を定めて会社に通知する必要があります。相続人が多数にわたる場合や所在が分からない場合には、手続に時間を要します。

Q4 株券が見つからなくても株式を譲渡できますか。

まず、定款に株券を発行する旨の定めがあるか、実際に株券が発行されたかを確認します。株券を発行する会社では株券の交付が譲渡の効力の要件とされていますので、発行されていない場合と、発行されたものの所在が分からない場合とで対応が異なります。所在が分からない場合には、株券を無効とするための手続を経たうえで進める方法を検討しますが、株券が無効となるまでに一年程度の期間を要する仕組みになっています。株券を発行する旨の定款の定めを廃止する方法によれば、より短い日程で進められることもありますが、株主総会の決議その他の所定の手続が必要で、株式の帰属そのものを解決するものではありません。日程との関係で選択肢を比較します。

Q5 帰属に争いがあるまま、M&Aを進めることはできますか。

進められる場合もありますが、買主から、クロージング前に整理を終えることを求められるのが通例です。整理が間に合わない場合には、表明保証や補償、価格の一部留保といった手当てを検討することになります。ただし、これらの手当ては、売主と買主の間で負担をどう分けるかを定めるものであって、買主が株式を有効に取得できるかという問題を解決するものではありません。争いの内容によっては、取引そのものの可否に影響します。

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本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に関する法的助言ではありません。具体的な対応については、当事務所までご相談ください。記事の内容は最終更新日時点の法令等に基づいています。