Regulatory Compliance

非上場会社の株主・経営権紛争への対応

株主から総会の招集や帳簿の閲覧を求められたとき、会社・経営者は、請求の要件を確認し、事業運営への影響も踏まえて対応を判断する必要があります。本ページでは、会社側の対応を中心に、株主の権利行使の条件、経営権をめぐる訴訟・仮処分、役員責任の追及への対応を解説します。株主の立場から、会社の対応や権利行使の条件を確認する際にもご参照いただけます。D&O保険・会社補償については、会社法上の手続と個別契約の条件を分けて整理します。

本ページは株式会社を対象とします。「公開会社でない株式会社」という表現は会社法上の区分を示すものであり、「非上場会社」と同義には用いません。

最終更新日:

ご相談いただけること会社の構成と代表権限の確認/招集請求・役員の選解任への対応/会計帳簿等の閲覧請求への対応/決議・経営権を巡る訴訟・仮処分/役員責任の追及への対応/D&O保険・会社補償の確認

お問い合わせフォームへ
目次
  1. 第1章 初動・会社の構成と代表権限
  2. 第2章 招集請求・役員の選解任への対応
  3. 第3章 会計帳簿等の閲覧請求への対応
  4. 第4章 決議・経営権をめぐる訴訟・仮処分
  5. 第5章 役員責任の追及への対応とD&O保険・会社補償
  6. 第6章 対応後の社内手続と当事務所の支援
  7. よくあるご質問

第1章 初動・会社の構成と代表権限

請求書が届いたとき、最初に確認するのは、自社が会社法上どの類型の会社に当たるかと、その請求を誰が受けるべきかです。株主の権利行使の要件の多くは、この類型によって変わります。

発行する株式のうち、譲渡による取得について会社の承認を要する旨の定款の定めがない株式がある株式会社は、会社法上の公開会社です。これは上場の有無とは別の区分です。非上場であっても公開会社に該当することがあり、その場合、全部の株式が譲渡制限株式である会社と同じ扱いにはなりません。株主の権利行使に必要な保有期間の有無などが、この区分によって変わります。

監査役設置会社が、取締役の責任を追及する訴えの提起を株主から請求される場合には、監査役が会社を代表します。ここでいう監査役設置会社には、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある会社は含まれません。監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社については、会社を代表する者に関する別の規定を確認します。請求書の宛先が誤っている場合もありますので、誰が受領し、誰の名で回答するのかを最初に定めます。

第2章 招集請求・役員の選解任への対応

招集請求を受けた場合は、請求株主が要件を満たしているか、請求の対象事項がその株主の議決権の範囲内かを確認します。解任については、決議によって可能であることと、賠償責任が生じ得ることを分けて整理します。

公開会社でない株式会社では、総株主の議決権の3%以上(定款でこれを下回る割合を定めた場合はその割合)を有する株主は、保有期間にかかわらず、株主総会の目的である事項及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができます。請求できるのは、当該株主が議決権を行使することができる事項に限られます。また、割合の計算に当たっては、当該事項について議決権を行使することができない株主の議決権が分母から除かれます。公開会社には原則として6か月の保有期間の要件があり、定款でこれを下回る期間を定めることができます。請求後に招集の手続がされない場合等については、裁判所の許可の規定が置かれています。

取締役は、任期の途中であっても、株主総会の決議によって解任することができます。決議の要件は会社法の定めによります。累積投票によって選任された取締役や監査等委員である取締役等については特則があり、種類株主総会による選任・解任がされる場合も含め、一律に扱うことはできません。

解任された取締役は、その解任について正当な理由がある場合を除き、会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができます。解任の効力と賠償責任は別の問題です。正当な理由があるかどうか、賠償の対象と金額がどうなるかは個別に判断され、残任期間の報酬の全額が当然に認められるわけではありません。

取締役会の職務には、代表取締役の選定及び解職が含まれます。監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く取締役会設置会社についての規定です。代表取締役を解職することと、取締役として解任することは、手続も効果も異なります。

第3章 会計帳簿等の閲覧請求への対応

閲覧請求については、請求株主の持株要件と、請求書に記載された理由を確認したうえで、法定の拒絶事由に当たるかを検討します。拒絶事由は限定されており、対立していることだけを理由に拒むことはできません。

総株主の議決権の3%以上、又は発行済株式の3%以上(定款でこれを下回る割合を定めた場合はその割合)の株式を有する株主は、その理由を明らかにして、会社の営業時間内はいつでも、会計帳簿等の閲覧又は謄写を請求することができます。議決権による計算では全部の事項につき議決権を行使することができない株主を、株式数による計算では自己株式を、それぞれ分母から除きます。保有期間の要件はありません。単元未満株式についての権利制限は別途確認します。

会社は、この請求について、会社法所定の拒絶事由に該当すると認められる場合を除き、これを拒むことができません。掲げられているのは、権利の確保又は行使に関する調査以外の目的による請求、業務の遂行を妨げ又は株主の共同の利益を害する目的による請求、実質的競争関係にある場合、知り得た事実を利益を得て通報するための請求及び過去2年以内にそのような通報をしたことがある場合です。経営陣と対立しているというだけでは、拒絶の理由になりません。どの号に当たると考えるのか、その裏付けとなる事実があるのかを整理したうえで回答します。

第4章 決議・経営権をめぐる訴訟・仮処分

決議の効力や役員の地位が争われる場面では、提訴の期間、原告となり得る株主の要件、仮処分で求められる疎明の内容を確認します。仮処分が発令された後は、職務代行者の権限の範囲が問題になります。

株主総会の決議に法定の取消事由があるときは、原告適格を有する株主等は、決議の日から3か月以内に、決議の取消しの訴えを提起することができます。招集手続・決議方法の瑕疵と、決議の内容の定款違反等とは区別されます。招集手続又は決議の方法の法令・定款違反については、違反する事実が重大でなく、かつ決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、裁判所が請求を棄却することができます。

仮の地位を定める仮処分では、保全すべき権利関係と、著しい損害又は急迫の危険を避けるためにこれを必要とすることを疎明する必要があります。総会が開かれること、役員間に対立があることだけで認められるものではありません。審理の手続については、民事保全法に規律があります。

仮処分命令により選任された取締役又は代表取締役の職務代行者は、仮処分命令に別段の定めがある場合を除き、会社の常務に属しない行為をするには裁判所の許可を得なければなりません。これに違反した行為は無効ですが、会社は、その無効を善意の第三者に対抗することができません。対象は、民事保全法に規定する仮処分命令によって選任された職務代行者です。これは選任された後の権限を定める規定であり、選任の要件を定めるものではありません。個々の行為が「常務」に属するかどうかは、事案に即した検討が必要です。

役員の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、解任の議案が株主総会において否決され、又は解任の決議が種類株主総会の決議を欠くことによりその効力を生じないときは、法定の要件を満たす株主は、その株主総会の日から30日以内に、訴えをもって当該役員の解任を請求することができます。対象となる「役員」は取締役、会計参与及び監査役です。経営方針の対立や解任議案の否決だけでは、実体の要件を満たしません。一定の種類株式発行会社については、会社法が定める読替えを確認します。

この訴えを提起する株主には、原則として、法定の除外を反映した総株主の議決権の3%以上又は発行済株式数の3%以上を6か月前から引き続き有することが必要であり、定款で割合を引き下げ、又は保有期間を短縮することができます。議決権と株式数は選択的な要件です。議決権による計算と資格では、解任の議案について議決権を行使することができない株主と対象役員である株主が除かれ、株式数による計算と資格では、会社自身と対象役員である株主が除かれます。なお、公開会社でない株式会社では、継続保有期間の要件はありませんが、割合の要件は残ります。「非上場」と「公開会社でない」は同義ではありません。

第5章 役員責任の追及への対応とD&O保険・会社補償

提訴の請求を受けた会社は、期間内に対応を決める必要があります。対象となる役員の側では、防御の費用をどのように賄うかが同時に問題になります。この章では、請求への対応と、保険・補償の手続を順に確認します。

役員等の責任と提訴請求への対応

取締役等の役員等がその任務を怠ったときは、会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負います。対象は取締役、会計参与、監査役、執行役及び会計監査人です。これは会社に対する責任であり、業績が不振であることや経営方針への不満があることから、任務を怠ったと決まるわけではありません。会社に生じた損害と、株主個人に生じた損害も区別されます。

会社が法定の提訴請求の日から60日以内に責任追及等の訴えを提起しない場合には、請求をした株主は、会社のためにその訴えを提起することができます。これは、法定の提訴請求がされたことを前提とする規定です。

この60日以内に訴えを提起しない会社は、請求をした株主又は責任追及等の対象者から求められたときは、求めた者に対し、遅滞なく、訴えを提起しない理由を、書面その他の法務省令で定める方法により通知しなければなりません。訴えを提起しなかったすべての場合に自動的に通知の義務が生じるわけではなく、同項所定の者からの請求が必要です。もっとも、請求があれば期限内に理由を示す必要があるため、調査と判断の記録を残しておくことになります。

なお、60日の期間の経過によって会社に回復することができない損害が生ずるおそれがある場合には、法定の資格を満たす株主は、会社への事前の提訴請求を経ずに、直ちに会社のために責任追及等の訴えを提起することができます。ただし、不正な利益を図り、又は会社に損害を加えることを目的とする場合は除かれます。会社に常に60日の対応の猶予が保障されているわけではありません。

D&O保険と会社補償

会社が締結する会社法上の役員等賠償責任保険契約の内容を決定するには、株主総会(取締役会設置会社にあっては取締役会)の決議が必要です。対象は会社法の定義に当たる契約であり、会社法施行規則が定める契約は除外されます。これは契約内容の決定手続に関する規定であり、加入の義務や、個別の案件について保険金が支払われることを定めるものではありません。

D&O保険の利用を検討する際は、保険証券・約款・特約に基づき、対象者、対象となる請求、通知、弁護士の選任、費用の支出・和解に関する条件を確認します。填補の範囲や弁護士選任の条件は、会社法の規定から導くことはできません。保険契約ごとに内容が異なり、保険者の同意や費用の負担が保証されるものでもありません。請求を受けた時点で、通知の期限を確認することが最初の作業になります。

役員等の職務の執行に関する法令違反の疑いや責任追及への対処費用、第三者への賠償・和解による損失を会社が補償する契約(補償契約)の内容を決定するにも、株主総会(取締役会設置会社にあっては取締役会)の決議が必要です。会社による補償と、保険者による填補は別の制度です。まず、補償契約が存在するか、その内容がどうなっているかを確認します。

補償契約があっても、法令違反の疑いや責任追及への対処費用のうち、通常要する費用の額を超える部分を会社が補償することはできません。これは、対処費用についての制限です。

また、第三者への損害を会社が賠償するとすれば役員等が会社に対して任務懈怠の責任を負う場合には、その責任に係る部分の損失を、会社が補償契約に基づいて補償することはできません。これは第三者への賠償・和解による損失についての制限であり、対処費用全体に及ぶものではありません。

役員等がその職務を行うにつき悪意又は重大な過失があったことにより第三者への賠償責任を負う場合には、その損失の全部について、会社が補償契約に基づいて補償することはできません。これはD&O保険の免責事由と同一ではありません。保険については、約款等を別に確認します。

対処費用を補償した会社は、役員等が自己若しくは第三者の不正な利益を図り、又は会社に損害を加える目的で職務を執行したことを知ったときは、補償した金額に相当する金銭の返還を請求することができます。責任が認められたことだけで、当然に返還となるわけではありません。

第6章 対応後の社内手続と当事務所の支援

補償を行った場合には、取締役会への報告が必要になります。手続を経ていない補償は、後に問題となり得ます。

取締役会設置会社では、補償契約に基づく補償をした取締役及び補償を受けた取締役は、遅滞なく、その補償についての重要な事実を取締役会に報告しなければなりません。執行役についても準用されます。これは補償契約の内容の決定とは別の手続であり、保険金の支払一般について報告を求めるものではありません。

当事務所は、請求を受けた会社又は役員の立場から、株主からの請求への対応、訴訟・仮処分への対応、D&O保険及び会社補償の利用の検討を、ご依頼の範囲に応じて支援します。受任に当たっては、利益相反の有無を確認し、依頼者と業務の範囲を明確にします。会社と役員とでは、利益や対応の方針が一致しない場合があるためです。経営権の確保や紛争の解消を保証するものではありません。

よくあるご質問

株主から臨時株主総会の招集と役員の解任を求められました。会社として何を確認すべきでしょうか。

まず、自社が会社法上の公開会社に当たるかを確認します。公開会社でない株式会社では、総株主の議決権の3%以上(定款でこれを下回る割合を定めた場合はその割合)を有する株主が、保有期間にかかわらず招集を請求できます。次に、請求書に株主総会の目的である事項と招集の理由が示されているか、その事項について当該株主が議決権を行使することができるかを確認します。解任については、株主総会の決議によって行うことができますが、正当な理由がない場合には会社が損害賠償の責任を負い得ます。

株主から会計帳簿の閲覧を求められました。会社が拒めるのはどのような場合ですか。

会社法が掲げる拒絶事由に該当すると認められる場合に限られます。具体的には、権利の確保又は行使に関する調査以外の目的による請求、業務の遂行を妨げ又は株主の共同の利益を害する目的による請求、実質的競争関係にある場合、知り得た事実を利益を得て通報するための請求、過去2年以内にそのような通報をしたことがある場合です。経営陣と対立していることは、それ自体では拒絶の理由になりません。請求株主が持株要件を満たしているか、請求書に理由が明らかにされているかも確認します。

取締役を訴えるよう株主から請求が届きました。会社と対象の取締役は、それぞれどう対応すればよいでしょうか。

会社としては、まず誰が請求を受けるかを確認します。監査役設置会社では、監査役が会社を代表します。そのうえで、請求の日から60日以内に訴えを提起するかどうかを判断します。提起しない場合、請求をした株主又は対象者から求められたときは、遅滞なく理由を通知する必要があります。なお、期間の経過により会社に回復することができない損害が生ずるおそれがあるときは、事前の請求を経ない提訴が認められる場合があります。対象となる取締役の側では、補償契約の有無と内容、D&O保険の通知期限と弁護士選任の条件を確認します。会社と役員とで利益が一致しない場合がありますので、それぞれの代理人を分けるかどうかも、早い段階で検討します。

私自身が役員として損害賠償を請求されました。D&O保険を使って弁護士に依頼できますか。

保険契約の内容によります。会社法は、役員等賠償責任保険契約について、その内容を決定する手続を定めるものであり、填補の範囲や弁護士の選任の条件を定めるものではありません。保険証券・約款・特約に基づき、被保険者の範囲、対象となる請求、保険者への通知の期限、弁護士の選任について保険者の同意が必要かどうか、費用の支出や和解に関する条件を確認します。あわせて、会社との間に補償契約があるかどうかも確認します。補償契約による対処費用の補償には、通常要する費用の額を超える部分を補償できないという制限があります。

Contact

まずはご相談ください

早期のご相談が、対応の選択肢を確保するために重要です。

お問い合わせフォームへ

本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に関する法的助言ではありません。具体的な対応については、当事務所までご相談ください。記事の内容は最終更新日時点の法令等に基づいています。