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出資受入れ後の投資契約紛争――追加調達への異議・契約上の株式買取要求への対応

出資を受けた後に、投資家から追加調達への異議や株式の買取要求を受けると、調達の日程と経営判断の両方に影響が及びます。最初に切り分けが必要なのは、その要求が、誰に向けられ、何を根拠としているかです。会社に向けられた要求か、創業者個人に向けられた要求か。投資契約に基づく要求か、株主としての法律上の権利の行使か。この二つの軸で分けないまま協議に入ると、答えるべき相手にも、答えるべき内容にも、ずれが生じます。

本稿では、出資受入企業・創業者の立場から、契約違反の指摘、追加調達に必要な同意、契約上の買取要求への対応を整理します。会社法上の手続との違いと各当事者の責任・利害を踏まえ、回答・是正・交渉の方針を検討します。

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まず確認すること

  1. 投資家の指摘・要求と対応期限――追加調達への異議、契約違反の指摘、株式買取要求など、問題とされている事項、根拠として示された契約、回答期限を確認します。
  2. 関係する契約と定款――投資契約、株主間契約、個別の合意書、定款をそろえ、当事者、投資家ごとの権利、適用範囲、変更の経過、複数の合意の関係を確認します。
  3. 違反とされた事実と是正の経過――情報提供、資金使途、事前同意等の対応と記録を照合し、投資家との同意・是正・権利放棄に関する合意の有無と内容を確認します。
  4. 追加調達の条件と日程――調達条件、払込予定、社内決議の進行状況を整理し、契約上必要となる同意等と会社法上の手続を分け、それぞれに必要な対応と期限を確認します。
  5. 会社と創業者それぞれの責任・利害――各自の義務、請求の相手方、買取資金の負担を分けて確認し、利益相反の有無も踏まえて同じ方針で対応できるかを検討します。

ご相談いただけること受領した通知と契約の定めの確認/会社としての対応と創業者個人の対応の切り分け/会社法上の手続の確認/新たな調達との関係の整理/回答書の作成と交渉/仲裁・訴訟・保全手続への対応

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目次
  1. 1 投資家の指摘と契約関係を確認する
  2. 2 契約違反の指摘と投資家の権利を検討する
  3. 3 追加調達への異議と契約上の制約に対応する
  4. 4 契約上の株式買取要求・損害賠償請求を検討する
  5. 5 投資家との協議と紛争手続を進める
  6. 当事務所の支援内容
  7. よくあるご質問

1 投資家の指摘と契約関係を確認する

通知・請求の内容と対応期限を確認する

投資家から届いた通知を、追加調達への同意を留保するもの、契約違反の是正を求めるもの、株式の買取りや損害賠償を請求するものに分けます。要求の宛先が会社か創業者個人か、根拠として挙げられた契約と回答期限を確認します。

宛先の区別が重要なのは、答えるべき主体が違うからです。会社に対する請求であれば、取締役会や株主総会での意思決定が必要になる場合があります。創業者個人に対する請求では、個人としての回答・履行と、会社の意思決定とを分けて検討します。個人が株式を買い取る場合でも、譲渡制限株式であれば会社の承認が必要となることがあります。会社が資金面で関与する場合には、会社にとっての合理性、根拠となる手続、創業者が取締役であるときは利益相反取引に関する承認の要否を確認します。一通の通知の中に、会社への請求と個人への請求が混在していることもありますので、項目ごとに整理します。

株主総会の招集、役員の解任、会社法上の帳簿閲覧等も求められている場合は、「非上場会社の株主・経営権紛争への対応」で各手続を確認します。本稿が扱うのは、投資契約を根拠とする要求への対応です。

投資契約・株主間契約・定款を照合する

投資契約・株主間契約のほか、変更合意、個別の同意書、定款を集め、今回の要求に関係する条項を照合します。

集めるときに漏れやすいのが、ラウンドごとに作られた書面の関係です。シリーズが進むにつれて、投資契約が重ねて締結され、株主間契約が作り直され、既存の投資家が一部の権利を放棄する書面に署名している、という状態が通常です。どの書面が現在も効力を持ち、相互の関係がどう定められているかを確認します。優先関係についての定めが置かれていない場合、その点自体が争点になります。

定款も併せて確認します。種類株式が発行されている場合、その内容は定款に定められており、契約上の権利と定款上の権利が重なる部分と、そうでない部分があります。契約で合意したはずの内容が定款に反映されていない、という食い違いが見つかることもあります。

対象株式の持ち主自体に争いがある場合は、「名義株・株式の持ち主を巡る紛争」で株式の帰属を巡る確認事項を整理しています。

会社と創業者の義務・責任・利害の違いを確認する

投資契約では、会社が負う義務と、創業者が個人として負う義務とが、同じ条項の中に書かれていることがあります。表明保証の主体、情報提供の義務者、遵守事項の名宛人、買取義務の負担者を、条項ごとに確認します。

そのうえで、両者の利害が一致しているかを検討します。たとえば、創業者個人が買取義務を負う可能性がある場合、会社にとって有利な解決が、創業者にとって不利になることがあります。この場合、同じ方針で対応できるか、別々に検討する必要があるかが問題になります。会社と創業者の双方から相談を受ける場合、この点の確認が最初に必要です。

2 契約違反の指摘と投資家の権利を検討する

表明保証・資金使途・情報提供等の定めを確認する

指摘された違反について、根拠とされた条項の文言を確認します。投資契約で問題となりやすいのは、次のような定めです。

表明保証については、表明の対象、基準時、範囲の限定(重要性の限定、知る限りという限定)、違反の効果が定められています。違反があったとされる場合でも、その効果として何が生じるのか――補償請求か、買取請求か、その他の権利の発生か――は、条項の定め方によります。

資金使途の制限については、制限の対象となる支出の範囲と、例外の定めを確認します。情報提供義務については、提供すべき資料、頻度、期限を確認します。事前同意事項については、同意を要する行為の範囲と、同意の方法が定められています。

指摘の対象となりやすいものの一つに、情報提供義務があります。月次の試算表を所定の期限までに提出する、といった定めは、事業が順調なうちは形式的に運用されがちですが、投資家との関係が悪化すると、その履行状況が問われることになります。提出の事実と時期を示せる記録があるかを確認します。

また、同じ事実が複数の条項に触れるとされることがあります。資金使途の制限違反であると同時に、事前同意を得ていない行為であり、かつ報告を怠ったものである、という形です。この場合、それぞれの条項が定める効果が異なりますので、条項ごとに検討します。一つの事実に対して最も重い効果が自動的に適用されるわけではありません。

違反の有無と是正・同意・権利放棄の経過を確認する

条項を確認したら、実際の対応の記録と照合します。求められた資料を提出したか、いつ提出したか、投資家から異議が述べられたか。事前同意を要する行為について、同意を得ていたか、得ていない場合にその後に承認されたか。

ここで確認すべきなのは、投資家側の対応です。違反とされる状態が続いていたにもかかわらず、投資家がそれを認識しながら異議を述べず、その後の取引を継続していた場合、その事実は協議の材料になります。もっとも、それによって権利が当然に失われるわけではありません。契約に権利放棄に関する定め(一度の不行使が放棄とみなされない旨の定め)が置かれていることも多く、その有無も確認します。

過去の承諾が今回の調達にも及ぶかは、対象取引と条件、承諾した者の権限を確認します。担当者レベルでの了解と、契約上の同意権を有する者による同意とは、別のものです。

複数の投資家の権利と合意の優先関係を整理する

投資家が複数いる場合、誰がどの権利を持っているかを一覧にします。事前同意権を持つ投資家、優先引受権を持つ投資家、買取請求権を持つ投資家が、それぞれ異なることがあります。また、同じ権利でも、行使の条件や期間が投資家ごとに違うことがあります。

一部の投資家が同意していれば足りるのか、全員の同意が必要なのかも、条項の定め方によります。「過半数の同意」「一定割合以上を保有する投資家の同意」といった定めがある場合、その計算の基礎(株式数か、投資家の人数か、優先株式のみか)を確認します。

投資家間の関係にも目を向けます。既存の投資家の中に、今回の調達に賛成する者と反対する者がいる場合、その対立が会社の判断を左右することがあります。また、株主間契約に、投資家相互の権利関係――優先引受けの順序、譲渡の制限、共同売却の権利――が定められている場合、会社が一方の投資家との間で合意した内容が、他の投資家との関係で別の義務を発生させることがあります。

投資家の側の事情も、可能な範囲で把握します。ファンドの運用期間が終了に近づいている、投資先の整理を進めている、といった事情がある場合、要求の背景にあるのは契約違反そのものではなく、退出の必要性であることがあります。その場合には、違反の有無や是正の検討と併せて、持分の譲渡等も協議の選択肢になります。

3 追加調達への異議と契約上の制約に対応する

事前同意・優先引受け等の適用範囲を確認する

追加調達に関して投資家が持つ権利には、いくつかの型があります。新株の発行について事前の同意を要するもの、既存投資家に優先的に引き受ける機会を与えるもの、一定の条件を下回る発行価額での発行を制限するもの、希薄化に応じて転換比率等を調整するものです。

それぞれについて、適用範囲を確認します。すべての発行が対象か、一定の例外(ストックオプション、既存投資家に対する発行、一定金額以下の発行)があるか。対象となる「発行」に、転換社債型の資金調達や新株予約権の発行が含まれるか。これらの定め方によって、今回の調達が制約の対象になるかどうかが変わります。

希薄化への対応と契約上の調整方法を検討する

希薄化そのものは、追加の資金調達に伴って生じるものであり、それ自体が契約違反となるとは限りません。他方で、投資契約においては、希釈化防止条項(アンチ・ダイリューション条項)を定めることが一般的な実務慣行であり、具体的に問題となるのは、契約が定めた手続を経ていない場合と、契約が定めた調整を行わない場合です。

調整の方法が契約に定められている場合、その計算を行います。計算の方法が複数の解釈を許す書き方になっていることもあり、その場合は早い段階で投資家と認識をすり合わせます。調達の実行後に計算の相違が判明すると、既に払い込まれた資金の取扱いを含めた問題になります。

契約上の合意と会社法上の発行手続を区別する

ここは、最も混同が生じやすい部分です。

会社法は、株式会社が募集株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式の数、払込金額その他の事項を定めなければならない旨を定め、これらの事項の決定は、原則として株主総会の特別決議によらなければならない旨を定めています。法定の範囲で、取締役や取締役会に決定を委任できる場合もあります。他方で、公開会社については別の定めが置かれており、原則として取締役会が決定しますが、有利発行等では別の検討が必要です。ここでいう公開会社かどうかは、上場の有無ではなく、株式の譲渡制限に関する定款の定めによって判断します。自社がどの規律に従うかは、定款と会社の機関設計によります。種類株式を発行している場合は、種類株主総会の要否も確認します。

投資家の不同意と、株式発行の無効とは、同じ問題ではありません。契約上の同意条項に違反して発行した場合、それは契約違反として損害賠償や他の権利の発生を招き得ますが、会社法上の発行手続を履践していれば、発行そのものが当然に効力を失うわけではありません。

もっとも、これは「同意がなくても発行してよい」という意味ではありません。会社法は、募集株式の発行等が法令もしくは定款に違反する場合、または著しく不公正な方法により行われる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主が会社に対して発行をやめることを請求することができる旨を定めています。差止めの請求や仮処分の申立てがされたことだけで、発行の手続が法律上当然に停止するわけではありません。発行を差し止める仮処分命令等が出された場合には、その内容に従う必要があります。また、申立ての段階でも、新たな投資家との合意条件や紛争の影響から、調達日程の見直しが必要になることがあります。また、契約違反を理由とする損害賠償や、買取条項の発動もあり得ます。

したがって、判断は「会社法上の効力」「契約上の責任」「調達を実行するかどうかの経営判断」の三つを分けて行います。発行が無効にならないという点だけを根拠に実行を決めると、他の二つの問題が残ります。

追加調達の日程と投資家との協議を調整する

追加調達を予定している場合は、払込日から逆算し、契約上の同意取得、会社法上の発行手続、契約責任と差止めの要件を別々に検討します。発行の効力だけで実行の可否を判断せず、各投資家との合意状況と紛争が調達に及ぼす影響を整理します。

新規の投資家がいる場合、既存投資家との間に紛争があること自体が、調達の条件に影響します。開示の範囲と時期についても、投資契約上の守秘義務と、新規投資家に対する説明義務の双方から検討します。紛争の存在を伝えないまま調達を実行すると、後に表明保証違反として問題とされる可能性があります。

4 契約上の株式買取要求・損害賠償請求を検討する

請求先・発生条件・行使手続を確認する

買取要求を受けたら、まず、誰に対する請求かを確認します。会社に対する請求か、創業者個人に対する請求か、あるいは両方か。

次に、買取義務の発生条件を確認します。契約上の買取条項は、一定の事由が生じた場合に権利が発生する形で定められているのが通常です。上場が一定期日までに実現しない場合、表明保証違反があった場合、重大な契約違反があった場合、支配権の変動があった場合といった事由です。指摘されている事由が、条項が定める事由に当たるかを、文言に即して確認します。

行使の手続についても確認します。行使期間の定め、通知の方法、価格の決定方法、支払の時期。これらの手続が履践されているかは、請求の効力に関わります。

なお、組織再編等を理由とする会社法上の株式買取請求は、契約上の買取要求とは区別し、「少数株主の株式買取請求・価格決定への対応」で手続を確認します。本稿が扱うのは、投資契約に定められた買取条項に基づく要求です。

買取価格の算定と損害の根拠を検討する

買取価格の算定方法は、契約に定められていることが多く、投資額に一定の利率を乗じる方法、一定の倍数を用いる方法、時価によるとする方法などがあります。定めがある場合は、その計算の基礎となる数値と期間を確認します。定めがない場合、あるいは定めが明確でない場合、価格そのものが争点になります。

損害賠償が併せて請求されている場合、買取請求との関係を確認します。同一の事由について、買取りと損害賠償の双方を請求できるのか、いずれかを選択するのかが、契約に定められていることがあります。

会社による自己株式取得と創業者個人の買取りを区別する

会社が買い取る場合には、会社法上の制約がかかります。会社法は、自己株式の取得等により株主に対して交付する金銭等の帳簿価額の総額は、その効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない旨を定めており、自己株式の取得はこの規制の対象に含まれています。したがって、契約上の買取義務があるとされる場合でも、分配可能額が不足していれば、会社は買取りを実行できません。取得の手続についても、会社法上の定めに従う必要があります。

ここで問題になるのが、会社が買い取れない場合の取扱いです。会社が履行できないことをもって、創業者個人が代わりに買い取る義務を当然に負うわけではありません。創業者個人が義務を負うのは、契約上、創業者個人が買取義務者として定められている場合です。会社が義務者とされている条項について、履行不能を理由に義務者が入れ替わることはありません。

もっとも、契約によっては、会社が買い取れない場合に創業者が買い取る旨が明示的に定められていることがあります。このような定めがある場合も、その有効性と、買取義務の発生条件・行使の方法を確認します。文言の確認が出発点になります。

買取条項の有効性と権利行使の限界を検討する

場合によっては、投資家の請求の前提となる、買取条項そのものの効力を争うことも考えられます。買取条項が置かれていることだけで、当然に無効となるわけではありません。条項自体の有効性と、個別の請求が認められるかは、分けて検討します。条項が有効であっても、買取義務の発生条件を満たしていない場合や、権利の行使が信義則・権利の濫用の観点から制限される場合があります。契約締結の経緯、違反の内容と程度、請求の額、投資家の従前の対応等を確認します。

また、買取条項の有効性とは別に、投資契約において、そのような、投資家の取引上の地位を高める趣旨の規定を定め、実際に、株式の買取を示唆して何らかの要求(例えば、会社自らに帰属すべき知的財産権の無償譲渡等)を飲ませる行為自体が、独占禁止法上の問題を生じるという主張をすることも考えられます。独占禁止法は、優越的地位の濫用について、自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、一定の行為をすることと定めています。したがって、要求が過大であると感じられることだけをもって、この規定に該当するとは言えません。取引上の地位の優越(より具体的には、他の投資家からの資金調達に切り替えることが困難であること)、その利用、正常な商慣習に照らした不当性、対象となる行為の該当性という各要素について、事実に即した検討が必要です。

5 投資家との協議と紛争手続を進める

回答・是正・権利留保の方針を整理する

回答にあたっては、認める事実と争う事実を区別します。是正が可能な事項については、是正の内容と時期を示します。他方で、相手方の主張を前提とした表現を用いると、後に主張が制約されることがありますので、権利を留保する旨を明示します。

複数の投資家がいる場合、回答の内容をそろえます。個別に異なる説明をすると、投資家間で情報が共有された際に問題となります。

同意・契約変更・投資家の退出条件を検討する

協議による解決を目指す場合、選択肢としては、今回の調達についての個別の同意、契約条項の変更、投資家の持分の第三者への譲渡、段階的な買取りの合意などがあります。それぞれについて、必要な資金、会社法上の手続、他の投資家への影響を確認します。

とくに、一部の投資家にだけ有利な条件で合意すると、他の投資家との関係で問題が生じます。同順位の投資家がいる場合は、その扱いを併せて検討します。最恵待遇に関する定めが置かれている場合には、今回の合意がその対象となるか、他の投資家に適用される条件の範囲、自動的に適用されるのか請求や契約の変更等の手続を要するのかを、合意の前に確認します。

段階的な買取りや、将来の一定時点での処理を合意する場合、その履行を確保する方法も併せて定めます。合意はしたものの資金の裏付けがないという状態では、同じ協議を繰り返すことになります。会社の資金による場合は、その時点での分配可能額の見込みも確認します。

調達日程を踏まえて保全・訴訟・仲裁等を検討する

紛争手続を検討する場合、時間軸が重要になります。調達の払込日が決まっている場合には、手続ごとの進行の見通しを確認し、払込日の前に判断が得られない場合も想定して対応を検討します。投資家から差止めの仮処分を申し立てられる可能性がある場合、その準備も必要です。

投資契約には、紛争解決の方法が定められていることが多く、有効な仲裁合意の対象となる紛争は、原則として仲裁によることになります。訴訟を提起された場合には、仲裁合意の効力と対象の範囲を確認し、仲裁合意に基づく訴えの却下を求めるかを、本案について応答する前に検討します。また、仲裁合意があっても、裁判所への保全処分の申立ては妨げられません。管轄、準拠法、仲裁地、仲裁機関と規則の定めを確認します。海外の投資家が当事者となっている場合は、この確認をとくに早い段階で行います。

また、会社が申し立てる場合と、投資家から申し立てられる場合とでは、準備すべきものが異なります。申し立てられる側になる可能性がある場合、相手方がどの主張をしてくるかを想定し、それに対応する資料を先に確保しておきます。とくに、社内の意思決定の記録、投資家への報告の履歴、同意を得た経過に関する資料は、時間が経つと所在が分からなくなります。

いずれの手続を選ぶ場合も、事業への影響を併せて検討します。紛争が長期化すると、次の調達、取引先との関係、従業員の採用と定着に影響が及びます。また、紛争の存在自体が、その後の投資家との交渉における前提になります。手続の選択は、法的な見通しだけでなく、この点も含めた判断になります。

協議による解決を目指す場合でも、手続に移行した場合の見通しを持っておくことが、交渉の材料になります。逆に、手続の見通しを立てないまま譲歩を重ねると、どこで止めるかの基準が失われます。

当事務所の支援内容

投資契約と会社・創業者の責任を整理する

投資契約、株主間契約、変更合意、定款を照合し、投資家ごとの権利と、会社・創業者それぞれが負う義務を整理します。複数のラウンドを経ている場合の優先関係についても確認します。

追加調達と買取要求に関する交渉を支援する

回答書面の作成、同意取得の進め方、契約変更や退出条件の検討を支援します。会社法上の手続との関係についても、調達の日程を踏まえて確認します。

依頼者の立場と調達日程を踏まえて紛争手続を支援する

仲裁・訴訟・保全の選択、証拠の整理、事業への影響を踏まえた判断を支援します。会社と創業者の利害が一致しない場合の受任の在り方についても、初期の段階でご説明します。

よくあるご質問

投資家が反対したら、追加の資金調達はできなくなりますか。

反対があることと、発行できないこととは別の問題です。もっとも、契約上の同意条項に違反して発行すれば、契約違反としての責任が生じ得ます。また、株主は、発行が法令もしくは定款に違反する場合、または著しく不公正な方法により行われる場合において、不利益を受けるおそれがあるときは、発行をやめることを請求できるものとされています。「会社法上の効力」「契約上の責任」「調達を実行するかどうかの判断」を分けて検討することになります。

一部の投資家が同意していれば、他の投資家の反対があっても進められますか。

契約の定め方によります。全員の同意を要するのか、一定割合の同意で足りるのかが条項に定められているのが通常で、その計算の基礎(株式数か、投資家の人数か、特定の種類株式のみか)も確認が必要です。複数のラウンドを経ている場合、投資家ごとに権利の内容が異なることもありますので、一覧にして確認します。

投資家から求められた株式は、会社が必ず買い取らなければなりませんか。

契約上の買取義務があるとされる場合でも、会社が買い取るには会社法上の制約があります。自己株式の取得等により株主に交付する金銭等の総額は、分配可能額を超えてはならないものとされていますので、分配可能額が不足していれば実行できません。まず、買取義務の発生条件が満たされているかを確認し、そのうえで、会社法上の手続と財源の確認を行います。

創業者個人に株式の買取りを求める条項は、無効ではありませんか。

条項が置かれていること自体が当然に無効となるわけではありません。無効が問題となるのは、条項の内容や行使の態様に、著しく一方に不利益であるといった事情がある場合です。他方で、会社が買い取れないことをもって、創業者個人が代わりに買い取る義務を当然に負うわけでもありません。創業者が義務を負うのは、契約上、創業者が買取義務者として定められている場合です。まず、条項の文言を確認することになります。

会社と創業者は、同じ弁護士にまとめて依頼できますか。

利害が一致している場合には可能ですが、一致しない場面があります。とくに、創業者個人が買取義務を負う可能性がある場合、会社にとって有利な解決が創業者にとって不利になることがあります。ご相談の初めに、各自の義務と請求の相手方を整理し、同じ方針で対応できるかを確認します。

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本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に関する法的助言ではありません。具体的な対応については、当事務所までご相談ください。記事の内容は、最終更新日の時点で施行されている法令等に基づいています。施行前の改正法を取り上げる場合は、本文にその旨を示しています。