Regulatory Compliance

取引打切り・契約更新拒絶への対応

取引打切りや契約更新拒絶では、終了の根拠となる契約条項や法律上の要件と、終了後に残る履行・精算の問題を分けて確認します。取引が長く続いていることや、契約書に予告期間が定められていることだけで、結論が決まるわけではありません。終了を申し入れる側と申し入れを受けた側の双方について、契約書、通知、取引経過を踏まえて対応を検討します。

本ページは、供給・販売・代理店・業務委託等の継続的な取引を対象とします。システム開発契約・建設請負契約に固有の問題は、それぞれの解説ページで扱います。

監修:吉川 景司(弁護士・弁理士/第一東京弁護士会)

最終更新日:

ご相談いただけること終了する契約の範囲の確認/契約書と取引経過の確認/終了の法的根拠の検討/独占禁止法上の制限の確認/通知前・通知受領後の初動/精算・損害賠償と交渉・訴訟への対応

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目次
  1. 第1章 何が終了するのか――基本契約・個別契約と解除・解約・更新拒絶
  2. 第2章 契約書と取引経過の確認――期間、更新条項、終了条項、変更合意
  3. 第3章 終了の法的根拠――債務不履行解除、類型別ルール、独占禁止法等による制限
  4. 第4章 通知前・通知受領後の初動――履行状況、証拠、交渉方針
  5. 第5章 終了時の精算と損害賠償――未払代金、在庫、投資、逸失利益
  6. 第6章 交渉・仮処分・訴訟への対応と当事務所の支援
  7. よくあるご質問

第1章 何が終了するのか――基本契約・個別契約と解除・解約・更新拒絶

最初に確認するのは、終了させようとしているもの、あるいは終了を告げられたものが何かという点です。基本契約なのか、個々の発注なのか、両方なのかによって、その後に残る義務が変わります。

契約期間の途中で終了させるのか、期間の満了によって終了するのか、自動更新を止めるのかも確認します。通知に「解除」「解約」などと書かれている場合でも、その名称だけで判断せず、根拠となる条項、終了させる範囲、終了日を特定します。

契約を締結するかどうかは、法令に特別の定めがある場合を除き、自由に決定できます。これは新たな契約を締結するかどうかについての規定です。既に締結された契約から生じる義務や、その契約を終了させることができる条件までが自由になるという趣旨ではありません。

基本契約の終了が、既に成立した個別契約に及ぼす影響は、各契約の条項と合意の内容を確認して判断します。基本契約が終われば個別契約も当然に終了するとも、必ず存続するとも言えません。発注済みの数量、納期、検収、支払について、どこまでが既に確定した義務なのかを整理することになります。

第2章 契約書と取引経過の確認――期間、更新条項、終了条項、変更合意

契約書の条項は出発点ですが、結論ではありません。条項の文言に加えて、これまでの更新の経過や、当事者が実際にどう扱ってきたかを確認します。

契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができます。期間、更新、終了の条件を定める基礎となる規定です。もっとも、個々の条項の有効性や解釈を、この条文だけで確定させることはできません。

期間満了や更新拒絶に関する条項がある場合も、その条項の効力と適用については、契約全体の内容や更新の経過等を踏まえて個別に検討します。更新の回数や取引の年数だけから更新の義務を導くことはできず、また、どの契約にも「正当事由」が必要となるわけでもありません。どのような経過で更新が繰り返されてきたのか、相手方がどのような前提で投資や体制整備を行ってきたのかを、資料に即して確認します。

契約の解釈上、終了の条件を満たしている場合でも、具体的な事情の下で、その終了が信義則に反し、又は権利の濫用に当たらないかが問題となることがあります。もっとも、取引が長く続いたことや、相手方に損失が生じることだけで、終了が認められなくなるわけではありません。

第3章 終了の法的根拠――債務不履行解除、類型別ルール、独占禁止法等による制限

終了の根拠は、相手方の債務不履行によるもの、契約の類型に応じた規定によるもの、約定によるものに分かれます。終了の根拠となる規定や契約条項を確認したうえで、信義則・権利濫用による制限と、独占禁止法その他の特別法による規制を検討します。

以下の民法の説明は、現在の規定を前提としています。2020年4月1日より前に締結された契約では、改正前の規定が適用される場合があります。基本契約と個別契約を分け、締結の時期、更新や変更の内容、経過措置を確認します。

債務不履行を理由とする解除

相手方が債務を履行せず、相当の期間を定めて履行を催告しても期間内に履行がない場合は、催告期間を経過した時における不履行が契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときを除き、契約を解除することができます。これは債務不履行を理由とする法定解除の規定です。債務不履行がない場合の任意の取引終了や、通常の更新拒絶の根拠にはなりません。

例えば、債務の全部の履行が不能であるとき、又は債務者が債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したときは、催告をすることなく契約を解除することができます。単なる履行の遅れを、当然に全部の履行の拒絶として扱うことはできません。このほかにも、一定の時期までに履行されなければ契約の目的を達成できない場合など、法定の要件を満たせば催告を要しない場合があります。契約の全部を解除できるのか、一部に限られるのかも確認します。

債務不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、民法の債務不履行を理由とする解除をすることができません。この制限が及ぶのは民法の規定による解除であり、約定の終了権の扱いは別途検討します。

契約の類型に応じた規定

委任及び準委任については、各当事者がいつでもその解除をすることができる旨の規定があります。適用されるのは、契約が委任又は準委任に当たる場合です。「業務委託」という名称であることから、当然にこの規定が適用されるわけではありません。特約の効力と適用、解除後の精算は、別に検討します。

委任を相手方に不利な時期に解除した場合や、委任者が受任者の利益をも目的とする委任を解除した場合には、やむを得ない事由があったときを除き、相手方に生じた損害を賠償しなければなりません。ここでいう「受任者の利益」には、専ら報酬を得ることによるものは含まれません。また、残期間の報酬の全額が当然に賠償されるわけでもありません。

業務委託が請負に当たる場合には、仕事の完成前に、注文者が損害を賠償して契約を解除することができる規定があります。受託者側にも同じ任意解除権があるわけではありません。契約が請負に当たるか、仕事の完成前か、特約が置かれているか、解除に伴う精算・賠償の範囲がどうなるかを確認します。

会社又は商人と代理商との契約については、会社法・商法に終了の規定があります。期間の定めがない場合は、各当事者が2か月前までに予告して解除することができるとされています。また、やむを得ない事由がある場合は、期間の定めの有無にかかわらず、いつでも解除することができるとされています。代理商とは、商人又は会社のためにその平常の事業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者で、その使用人でない者をいいます。販売店や再販売業者に、これらの規定を一律に適用することはできません。終了に関する特約の効力と適用は、別に確認します。

独占禁止法等による制限

自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施することは、独占禁止法で禁止されています。相対的な取引上の優越性、その利用、不当性等が必要であり、相手方が大企業であることや、打切りが一方的であったことだけで成立するものではありません。個別の打切りの評価は事案によります。

また、不当に、ある事業者に対し取引を拒絶し若しくは取引に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限し、又は他の事業者にこれらに該当する行為をさせることは、独占禁止法上禁止されています(不公正な取引方法に関する告示が定めるその他の取引拒絶)。「不当に」という要件が置かれており、単独の取引打切りを一律に禁止する規定ではありません。違法な取引条件に従わせるための打切りや、競争者を排除するための打切りなどでは、独占禁止法上の問題が生じ得ます。競争者と共同して行う取引拒絶等については、別の規定が問題となる場合があります。

取適法の対象となる委託取引では、取引終了に伴う発注済みの物品等の受領拒否、不当な発注取消し・内容変更、法違反を所定の行政機関に知らせたことを理由とする取引停止等の禁止も確認します。将来の新規発注を行わないことと、既に発注した取引を取り消し、又は履行しないこととは、分けて検討します。

第4章 通知前・通知受領後の初動――履行状況、証拠、交渉方針

終了の意思表示は、原則として、相手方に到達した時に効力を生じます。契約に通知の方法、通知先、通知期限や到達の扱いについて定めがある場合は、その内容と効力を確認します。相手方が正当な理由なく到達を妨げた場合には、通常到達すべきであった時に到達したものとみなされます。意思表示の効力が生じる時と、予告期間等を経て契約が終了する時とは、分けて確認します。

予告の要否や期間については、法定・約定の終了の規律を確認したうえで、取引の経過、相手方の投資、代替取引の可能性等を踏まえて個別に検討します。すべての継続的取引に共通する予告期間があるわけではなく、一定の期間を置けば適法になるという基準もありません。挙げた事情が、常に同じ重みを持つわけでもありません。

フリーランス法の対象となる業務委託では、発注者・受注者の要件と委託の期間を確認します。所定の発注者が行う、更新を含め6か月以上の継続的な業務委託を解除し、又は更新しない場合は、法令上の例外を除き、少なくとも30日前に、書面・電子メール等の法令で定める方法による予告が必要です。予告の後、契約が満了する日までの間に相手方から請求を受けた場合は、法令上の例外を除き、終了の理由を所定の方法で遅滞なく開示する必要があります。これらの手続上の義務と、民法や契約に照らして終了が有効かどうかは、別に検討します。予告を行ったことで終了が当然に有効となるものでも、予告がないことで当然に無効となるものでもありません。

契約書と変更合意、終了の通知と到達の記録、発注・受注・納品・支払の記録、更新交渉の経過、在庫の確保や設備投資を求められた際の資料を確認します。通知の後も残る履行義務と、履行を停止できる根拠の有無を分けて検討し、回答の文書では、通知を受領したことの確認と、終了への同意とを区別します。

第5章 終了時の精算と損害賠償――未払代金、在庫、投資、逸失利益

終了そのものが認められるかという問題と、終了に伴って金銭の支払義務が生じるかという問題は、別に検討します。

債務の本旨に従った履行がないとき又は履行が不能であるときは、これによって生じた損害の賠償を請求することができます。ただし、その不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りではありません。取引が終了したというだけで、債務不履行や賠償責任が認められるわけではありません。

債務不履行による損害賠償の範囲は、通常生ずべき損害です。特別の事情によって生じた損害も、当事者がその事情を予見すべきであったときは、請求することができます。

解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げません。これは、解除によって賠償請求が当然に失われるものではないという規定であり、解除が認められれば賠償も当然に認められるという趣旨ではありません。

契約に終了時の在庫の買取りや設備費用の精算が定められている場合は、まず、その対象、条件、金額の算定方法を確認します。これらの契約上の請求と、債務不履行による損害賠償の請求とは区別します。

債務不履行による損害賠償として在庫の損失、専用設備への投資、将来の利益について請求する場合は、義務違反との因果関係、損害の範囲、損害額の裏付けを個別に確認します。特別の事情による損害については、その事情を相手方が予見すべきであったかも検討します。在庫の全量買取り、投資額の全額回収、将来利益の一定期間分の賠償が、当然に認められるわけではありません。

資料は、請求の内容に応じて整理します。在庫については数量・取得費・転売の可能性、設備については取得費・使用の状況・転用の可能性、将来の利益については過去の取引実績・利益率・終了により不要となる費用などです。

第6章 交渉・仮処分・訴訟への対応と当事務所の支援

取引の継続を求める側からは、仮処分の申立てがされることがあります。求められる疎明の内容を確認します。

仮の地位を定める仮処分では、保全すべき権利関係と、著しい損害又は急迫の危険を避けるためにこれを必要とすることを疎明する必要があります。これは法定の保全の要件です。この種類の仮処分では、原則として、相手方が立ち会うことのできる審尋等を経る必要があり、担保の提供を求められる場合もあります。申立ての内容、必要な資料、手続に要する負担を確認します。取引を継続させる権利があるかどうかや、具体的な供給継続等の仮処分が認められるかどうかは、個別の評価となります。

基本契約が存続していることと、具体的な発注・供給を求められるかどうかとは、分けて検討します。最低購入量や供給数量の合意、個別契約の成立の状況、履行の期限などを確認し、どの義務の履行を求めるのかを特定します。事業への影響が大きいという必要性の問題と、実現を求める権利関係の問題とは、別に整理します。

独占禁止法上の問題がある場合は、行政機関への申告と、契約に基づく履行請求、差止め、損害賠償等の民事上の対応とを分けて検討します。どの根拠に基づき、どの救済を求めるのかによって、必要な要件と資料が異なります。

当事務所は、案件ごとに取引の終了を検討する企業又は終了を通知された企業の立場で、契約と取引経過の確認、終了の可否と方法の検討、終了に伴う精算や損害賠償をめぐる交渉を、ご依頼の範囲に応じて支援します。終了の有効性、取引の継続、損害の回収を保証するものではありません。

よくあるご質問

長年続けてきた取引ですが、相手の契約違反がなくても打ち切ることはできますか。

契約違反がない場合、民法の債務不履行を理由とする解除の根拠はありません。終了の可否は、期間・更新・終了に関する合意の内容と、契約の類型に応じた規律を出発点として検討します。そのうえで、契約の解釈や信義則・権利濫用による制限、独占禁止法その他の特別法による規制を確認します。取引が長く続いていることは、更新の経過や相手方の投資として、これらの検討の中で考慮される事情です。

契約書に書かれた予告期間を守れば、問題なく取引を終了できますか。

その予告条項に基づいて終了させる場合は、原則として、定められた期間と方法を守る必要があります。債務不履行による解除や合意による終了など、別の根拠で終了させる場合は、その要件を別に確認します。予告条項に従っていても、条項の解釈や信義則・権利濫用による制限、適用される特別法の規制を含めて検討する必要があります。取引の経過、相手方の投資、代替取引の可能性等も、具体的な事情として確認します。

取引先のために確保した在庫や専用設備の費用を、取引終了時に相手へ請求できますか。

契約に基づく在庫の買取りや費用の精算と、損害賠償の請求とを分けて検討します。買取りや費用負担の合意があれば、その条件が満たされているかを確認します。債務不履行による損害賠償を求める場合は、義務違反、損失との因果関係、損害額を確認し、特別の事情による損害については、その事情を相手方が予見すべきであったかも検討します。委任等の終了に伴う法定の精算・賠償については、その規定に沿って判断します。在庫の全量買取りや投資額の全額回収が、当然に認められるわけではありません。

取引先から一方的に取引を打ち切ると言われました。独占禁止法違反になることはありますか。

なり得ます。自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、相手方に不利益となるように取引を実施することは禁止されています。また、不当に取引を拒絶し、又は数量・内容を制限することも禁止されています。いずれも「不当に」という要件があり、一方的な打切りであることだけで成立するものではありません。取引上の地位の関係、打切りに至る経緯、代替取引の可能性を確認します。あわせて、行政機関への申告と、契約に基づく履行請求や損害賠償等の民事上の対応とは、根拠も手続も異なりますので、分けて検討します。

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本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に関する法的助言ではありません。具体的な対応については、当事務所までご相談ください。記事の内容は、最終更新日の時点で施行されている法令等に基づいています。施行前の改正法を取り上げる場合は、本文にその旨を示しています。