Regulatory Compliance
広告の表示内容の判断と強調表示・打消し表示
広告を審査する際には、個々の文言だけでなく、画像や音声、注記を含めた表示の全体から、一般消費者がどのような内容を受け取るかを整理する必要があります。会社が意図した訴求と、広告から実際に伝わる訴求とが一致しているかが、検討の出発点になります。
条件や例外を注記(打消し表示)で示していても、その内容が一般消費者に認識・理解されなければ、誤認を解消できない場合があるとされています。強調した表現との整合に加えて、注記の配置や文字の大きさ、表示される時間などを、媒体ごとに確認します。
当事務所は、広告案や実際の掲載画面をもとに、表示内容の特定、注記の評価、修正案の検討を支援します。既に指摘を受けている場合には、問題とされている表示内容と会社の理解とを整理し、対応の方針につなげます。
監修:吉川 景司(弁護士・弁理士/第一東京弁護士会)
まず確認すること
以下は、広告の表示内容と注記を審査する際に、会社が確認しておきたい事項の例です。
- 広告の一式――広告の全文、画像、動画、音声、リンク先と、掲載する媒体・期間を把握します。
- 想定する閲覧者と場面――どのような消費者が、どのような場面でその広告を見て商品・サービスを検討するかを確認します。
- 全体から伝わる内容――見出しだけでなく、写真、図、比較表、体験談から、どのような効果や条件が伝わるかを書き出します。
- 条件と例外――強調している内容に、対象者、利用の方法、期間、追加の負担などの条件や例外があるかを確認します。
- 注記と強調の関係――注記が強調した内容を補足するものか、それとも強調した内容と矛盾していないかを確認します。
- 注記の見え方――文字の大きさ、配置、背景との区別、周囲の強調した表示とのバランスを確認します。
- 端末・動画での見え方――スマートフォンでの折り畳みや別画面への遷移、動画の通常の再生でも、条件を把握できるかを確認します。
- 履歴と指摘――公開時の表示、修正の履歴、寄せられた指摘と、それぞれの対応関係を確認します。
注記を加えるより、強調している表現そのものを見直すほうが適切な場合もあります。
ご相談いただけること広告が伝える内容の特定/注記(打消し表示)の評価/スマートフォン・動画での見え方の確認/修正案の検討/指摘への説明
お問い合わせフォームへ1 広告の全体から、表示している内容を特定する
文言・画像・音声を組み合わせて読む
見出し、本文、写真、図、音声などが組み合わさることで、どのような商品の内容や取引の条件が伝わるかを整理します。後で述べる裁判例でも、表示が一般消費者にどのような内容として認識されるか(表示の意味内容)が争点となりました。
明示した内容と、暗示する内容
数値や断定的な文言がなくても、使用前後の写真や体験談などによって、一定の効果や優位性が示されていると受け取られる場合があります。不実証広告規制に関する指針は、表示された効果・性能とは、文章、写真、試験結果等から引用された数値、イメージ図、消費者の体験談等を含めた表示全体から一般消費者が認識するものであるとしています。会社は、画像と文言を組み合わせたときに、明示していない効果や性能まで伝わっていないかを確認します。
広告と、リンク先のページ
バナー広告やSNSの投稿と、リンク先の商品ページとでは、消費者が接する順序や情報の量が異なります。スマートフォンでは、強調表示から離れた別の画面に条件が表示されている場合の認識のしにくさが、消費者庁の調査で指摘されています。消費者向け電子商取引の留意事項は、リンク先に重要な情報を表示する場合、リンクの文字列を「追加情報」のような抽象的な表現ではなく具体的な表現とし、見落とされないよう文字の大きさや配色に配慮して明瞭に表示し、関連情報の近くに配置する必要があるとしています。会社は、バナーや投稿から条件の説明に至るまでの、実際の画面の流れを確認します。
表示内容の特定と、根拠資料の評価
広告が何を示しているかを特定したうえで、その内容を資料が裏付けているかを検討します。根拠資料の評価については、「効果・性能表示の根拠資料と不実証広告規制」で解説しています。
2 強調した表現と、条件・注記の内容を合わせる
強調表示と打消し表示
消費者庁の留意点は、強調表示を、事業者が自己の販売する商品・サービスを一般消費者に訴求する方法として、断定的表現や目立つ表現などを使って、品質等の内容や価格等の取引条件を強調した表示としています。打消し表示は、強調表示からは一般消費者が通常は予期できない事項であって、一般消費者が商品・サービスを選択するにあたって重要な考慮要素となるものに関する表示とされています。
強調した表現と矛盾する注記
強調表示と打消し表示とが矛盾するような場合は、一般消費者に誤認され、景品表示法上問題となるおそれがあるとされています。強調した部分で伝えている内容を注記で否定しているような場合には、注記を加えるのではなく、強調した表現そのものを見直すことが考えられます。
条件・例外を、分かる言葉で示す
定期購入の広告で、初回の価格の安さなどを強調する一方、解約の条件を注記に記載し、注記を読んでもその内容を理解できない場合が、問題として取り上げられています。対象外となる場合や追加で必要な費用などは、消費者が理解できる言葉と具体性で示します。
体験談と「個人の感想です」
消費者庁の留意点は、「個人の感想です。効果には個人差があります」といった注記に気付いたとしても、体験談から受ける認識が変わることはほとんどないとしています。体験談を用いる場合は、体験談の内容と、実際に一般的に期待できる効果との関係を確認し、必要に応じて体験談の選び方や表現を見直します。
3 媒体ごとの見え方を確認する
文字の大きさ・配置・背景との区別
打消し表示を一般消費者が正しく認識できる方法で表示しているかは、打消し表示の文字の大きさ、強調表示の文字と打消し表示の文字の大きさのバランス、打消し表示の配置箇所、打消し表示と背景との区別などから総合的に判断されるとされています。
スマートフォンの画面
消費者庁の留意点は、アコーディオンパネルに打消し表示が記載され、初期状態では画面に表示されていない場合や、強調表示から離れた別の画面に打消し表示がある場合の問題を指摘しています。会社は、実際の端末で、スクロールや操作をしなかった場合に何が見えるかを確認します。
動画の広告
動画の広告については、打消し表示が含まれる画面の表示時間が、一般消費者が打消し表示を読まない大きな理由の一つであるとされ、強調表示が音声で強調される一方、打消し表示が音声で示されない場合も取り上げられています。留意点は、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できるような表示方法かを、文字の大きさ、強調表示とのバランス、配置、背景との区別などの要素から総合的に判断するとしており、一定の文字の大きさや秒数を満たせば足りるという基準は示していません。
画面の設計
申込みまでの画面の流れや、選択肢の初期設定なども、条件や注記が消費者に認識できるかという観点から確認します。
4 判決を踏まえ、修正と説明に備える
糖質カット炊飯器事件――表示の意味内容の認定
消費者庁は、2023年10月、糖質カット炊飯器の表示について、優良誤認表示に当たるとして複数の販売事業者に措置命令をしました。そのうち1社が取消しを求めた訴訟で、東京高等裁判所は、2026年6月10日、措置命令を取り消した第一審判決を維持し、国の控訴を棄却しました(令和7年(行コ)第263号)。判決は、本件の各表示が、当局の認定した「通常の炊飯機能で炊飯した米飯と同様の炊き上がり」となる旨を表示するものではないとし、当局の認定は「本件各表示の意味内容(一般消費者の認識の対象)自体を誤って認定したもの」であるとしています。そのうえで、7条2項の適用の前提を欠き、表示を優良誤認表示とみなすことはできないとして、措置命令を違法としています。判決は同月25日に確定し、消費者庁は、措置命令が取り消された旨を公表文に追記しています。
この判決は、当該広告が何を意味するかについての判断であり、商品の性能全般を裁判所が認めたものではありません。当事務所は、判決が対象とした表示と、ご相談の広告との共通点・相違点を整理し、判決の判断を参照できる範囲を検討します。
修正の前後を比べる
文言・画像・注記を修正した後に、広告の全体から伝わる内容がどう変わったかを、改めて確認します。
表示内容と、判断の経緯を記録する
掲載した画面や動画、表示の条件、修正の理由を保存しておくと、後から表示の内容を説明する際の資料になります。
指摘された内容と、会社の理解が異なる場合
当事務所は、指摘を受けた表示について、指摘の対象、実際の表示、理解の違いを整理することを支援します。是正や当局への対応は、「景品表示法の違反指摘・自主是正・行政対応」で解説しています。
よくあるご質問
注記を付ければ、強い表現を掲載できますか。
注記の有無だけで判断できるものではなく、強調表示と矛盾する場合や、注記が認識・理解されない場合には、問題となるおそれがあるとされています。
注記の文字の大きさに、これ以上なら問題ないという基準はありますか。
消費者庁の留意点は、文字の大きさ、強調表示とのバランス、配置、背景との区別などから総合的に判断するとしており、一律の数値の基準は示していません。
スマートフォンでは、詳しい条件を折り畳んだ部分に記載してもよいですか。
初期状態では表示されないアコーディオンパネルに打消し表示を記載する場合の問題が指摘されています。主要な条件は、強調した表示の近くで示すことが考えられます。
動画の最後に注記を表示すれば足りますか。
表示される時間や、音声による強調との関係も問題とされています。通常の再生で注記を読み取れるかを確認します。
「個人の感想です」と書けば、体験談を使えますか。
その注記に気付いても、体験談から受ける認識が変わることはほとんどないとされています。
炊飯器の判決から、抽象的な表現には根拠が不要といえますか。
そのように一般化することはできません。判決は、その広告が何を意味するかについての判断です。別の広告については、具体的な表示に即して検討します。
Contact
ご相談にあたって
広告案や掲載中の画面(スマートフォン・動画を含む)、指摘を受けている場合はその内容を、分かる範囲でお知らせください。
お問い合わせフォームへ本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に関する法的助言ではありません。具体的な対応については、当事務所までご相談ください。記事の内容は、最終更新日の時点で施行されている法令等に基づいています。施行前の改正法を取り上げる場合は、本文にその旨を示しています。
